魔王様は学校にいきたい!
問い
「そこまでにするのじゃ」
影を引き裂き現れる、友達思いの頼れる魔王様。大剣を前にしても物怖じせず、リィアンとガーランドの間に割って入る。
突然の出来事にリィアンは唖然、ガーランドも困惑を隠せない。
「なんだ、一体どこから現れた?」
「これお主……」
「……っ!?」
「リィアンは妾の友達じゃ、分かったら剣を下げるのじゃ」
ウルリカ様の放つ殺気は、百戦錬磨のガーランドですらゾッと寒気を覚えるほど。有無を言わせぬ迫力に気圧され、ガーランドは渋々と大剣を下げる。しかし決して退くことはない、ウルリカ様を相手に大したものである。
「今そいつを友達と呼んだか?」
「うむ、リィアンは妾の友達なのじゃ」
「そいつはガレウス邪教団の魔人だ、それを知っても友達と呼ぶつもりか?」
「もちろんなのじゃ!」
ウルリカ様は迷うことなく、大きな声で友達であることを宣言。予想外にハッキリと宣言され、ガーランドは思わず閉口する。
シンと流れる沈黙の間、シャルロットはリィアンとの出会いを思い出していた。
「そういえば、リィアンを連れてきたのはウルリカでしたわよね……」
「もしかしてウルリカ様、最初からリィアン様を魔人だと知っていたのですか?」
「知っておったのじゃ」
「ではどうして、魔人であるリィアンさんを連れてきたのですか?」
「最初に説明したはずじゃ、たくさんお菓子をくれて気に入ったからじゃ!」
ウルリカ様らしい自由さに、オリヴィアは思わず頭を抱えてしまう。シャルロットとナターシャは、やれやれと天を仰いで溜息。
一方でガーランドは、危機感のないウルリカ様に激しい怒りを覚えていた。
「ふざけるな、言語道断だ!」
「なぜじゃ?」
「そいつはガレウス邪教団の魔人だ、どう考えても危険だろう!」
ウルリカ様は「ふーむ」と考え、自らを指差しガーランドに問う。
「妾は魔界の王であり、吸血鬼の真祖なのじゃ。さて、妾とリィアンどちらが危険かの?」
「えっ、ウルリカって吸血鬼だったの!? しかも魔界の王って……本当に?」
「おっと、リィアンには伝え忘れておったの」
実のところリィアンは、ウルリカ様の正体をハッキリと認識していなかった。ただ漠然と畏怖の念を抱いていただけ。それにしてもウルリカ様、色々と説明をしてなさすぎである。
「いやしかし、やはりその魔人は危険だ! なぜなら以前、魔物を操り王都ロームルスを襲撃したのだ。その魔人の凶行を俺は見た、その魔人は人類の敵だ!」
「先ほどリィアンは身を挺して人間を守ったのじゃ、お主も見ておったはずじゃ。さてリィアンは人類の敵かの? それとも味方かの?」
「く……っ」
ガーランドが言葉を詰まらせた隙を見計らい、シャルロットは話に割り込む。
「ねえリィアン、どうしてワタクシ達を守ってくれましたの?」
「……」
「お願いリィアン、答えてくださいですの!」
「……そんなのリィにも分かんない、ただリィは学園と皆のことが好きで……。後夜祭を楽しんでる皆の顔を思い浮かべたら、勝手に体が動いてた……」
「やはりリィアンは悪い子ではありませんわ、人類の敵でもありませんのよ!」
理由はなんとも単純明快、リィアンは好きなものを守ろうとしただけ。リィアンの素直な思いを聞けてシャルロットは嬉しそう、だが──。
「だからといってシャルロット、その子を許すわけにはいかないわよ」
「そんなっ、お母様!」
「その子は人間を傷つけたこともある、であれば看過は出来ないわ」
「お母様の……言う通り……、私達は……国民の安全を……守らなければならない……。それに……罪は償わなければならない……そういう決まり……」
国と国民を背負う立場上、リィアンを見逃すわけにはいかない。ヴィクトリア女王とクリスティーナに諭され、シャルロットは口を噤んでしまう。
「その子は人間を傷つけた、裁かれる決まりなの。ウルリカちゃんも理解してね?」
ウルリカ様は「ふーむ」と考え、自らを指差しヴィクトリア女王に問う。
「ならばヴィクトリアよ、妾のことも裁くかの?」
「ウルリカちゃんを?」
「かつて妾は人間と邪神の軍隊を滅ぼしたのじゃ、たくさんの人間を傷つけたのじゃ。さてヴィクトリアよ、妾のことも裁くかの?」
「それは……」
ウルリカ様は一貫して問う、そして相手を揺るがせる。一方でウルリカ様自身は微塵も揺るがない、つまりは誰もウルリカ様を退けることは出来ない。
「まあゆっくり考えるといいのじゃ」
ウルリカ様はシャルロットに、そしてオリヴィアとナターシャに問いかける。
「さて、お主達はどう思うのじゃ? どうするのじゃ?」
重く長い沈黙の後、シャルロットは立ちあがり──。
影を引き裂き現れる、友達思いの頼れる魔王様。大剣を前にしても物怖じせず、リィアンとガーランドの間に割って入る。
突然の出来事にリィアンは唖然、ガーランドも困惑を隠せない。
「なんだ、一体どこから現れた?」
「これお主……」
「……っ!?」
「リィアンは妾の友達じゃ、分かったら剣を下げるのじゃ」
ウルリカ様の放つ殺気は、百戦錬磨のガーランドですらゾッと寒気を覚えるほど。有無を言わせぬ迫力に気圧され、ガーランドは渋々と大剣を下げる。しかし決して退くことはない、ウルリカ様を相手に大したものである。
「今そいつを友達と呼んだか?」
「うむ、リィアンは妾の友達なのじゃ」
「そいつはガレウス邪教団の魔人だ、それを知っても友達と呼ぶつもりか?」
「もちろんなのじゃ!」
ウルリカ様は迷うことなく、大きな声で友達であることを宣言。予想外にハッキリと宣言され、ガーランドは思わず閉口する。
シンと流れる沈黙の間、シャルロットはリィアンとの出会いを思い出していた。
「そういえば、リィアンを連れてきたのはウルリカでしたわよね……」
「もしかしてウルリカ様、最初からリィアン様を魔人だと知っていたのですか?」
「知っておったのじゃ」
「ではどうして、魔人であるリィアンさんを連れてきたのですか?」
「最初に説明したはずじゃ、たくさんお菓子をくれて気に入ったからじゃ!」
ウルリカ様らしい自由さに、オリヴィアは思わず頭を抱えてしまう。シャルロットとナターシャは、やれやれと天を仰いで溜息。
一方でガーランドは、危機感のないウルリカ様に激しい怒りを覚えていた。
「ふざけるな、言語道断だ!」
「なぜじゃ?」
「そいつはガレウス邪教団の魔人だ、どう考えても危険だろう!」
ウルリカ様は「ふーむ」と考え、自らを指差しガーランドに問う。
「妾は魔界の王であり、吸血鬼の真祖なのじゃ。さて、妾とリィアンどちらが危険かの?」
「えっ、ウルリカって吸血鬼だったの!? しかも魔界の王って……本当に?」
「おっと、リィアンには伝え忘れておったの」
実のところリィアンは、ウルリカ様の正体をハッキリと認識していなかった。ただ漠然と畏怖の念を抱いていただけ。それにしてもウルリカ様、色々と説明をしてなさすぎである。
「いやしかし、やはりその魔人は危険だ! なぜなら以前、魔物を操り王都ロームルスを襲撃したのだ。その魔人の凶行を俺は見た、その魔人は人類の敵だ!」
「先ほどリィアンは身を挺して人間を守ったのじゃ、お主も見ておったはずじゃ。さてリィアンは人類の敵かの? それとも味方かの?」
「く……っ」
ガーランドが言葉を詰まらせた隙を見計らい、シャルロットは話に割り込む。
「ねえリィアン、どうしてワタクシ達を守ってくれましたの?」
「……」
「お願いリィアン、答えてくださいですの!」
「……そんなのリィにも分かんない、ただリィは学園と皆のことが好きで……。後夜祭を楽しんでる皆の顔を思い浮かべたら、勝手に体が動いてた……」
「やはりリィアンは悪い子ではありませんわ、人類の敵でもありませんのよ!」
理由はなんとも単純明快、リィアンは好きなものを守ろうとしただけ。リィアンの素直な思いを聞けてシャルロットは嬉しそう、だが──。
「だからといってシャルロット、その子を許すわけにはいかないわよ」
「そんなっ、お母様!」
「その子は人間を傷つけたこともある、であれば看過は出来ないわ」
「お母様の……言う通り……、私達は……国民の安全を……守らなければならない……。それに……罪は償わなければならない……そういう決まり……」
国と国民を背負う立場上、リィアンを見逃すわけにはいかない。ヴィクトリア女王とクリスティーナに諭され、シャルロットは口を噤んでしまう。
「その子は人間を傷つけた、裁かれる決まりなの。ウルリカちゃんも理解してね?」
ウルリカ様は「ふーむ」と考え、自らを指差しヴィクトリア女王に問う。
「ならばヴィクトリアよ、妾のことも裁くかの?」
「ウルリカちゃんを?」
「かつて妾は人間と邪神の軍隊を滅ぼしたのじゃ、たくさんの人間を傷つけたのじゃ。さてヴィクトリアよ、妾のことも裁くかの?」
「それは……」
ウルリカ様は一貫して問う、そして相手を揺るがせる。一方でウルリカ様自身は微塵も揺るがない、つまりは誰もウルリカ様を退けることは出来ない。
「まあゆっくり考えるといいのじゃ」
ウルリカ様はシャルロットに、そしてオリヴィアとナターシャに問いかける。
「さて、お主達はどう思うのじゃ? どうするのじゃ?」
重く長い沈黙の後、シャルロットは立ちあがり──。
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