魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

剣術大会

 運動会は最後の競技、剣術大会で大盛りあがり。
 なんと校庭の真ん中には、巨大な円形闘技場が設営されていた。剣術大会のために用意された特設の舞台である。

「ぬおおおっ!」

「その程度か、遅すぎる!」

 舞台上で戦っているのはシャルルとハインリヒである。準決勝進出をかけ、二人は激しく木刀を打ちつけあう。

「炸裂する筋力、圧倒的な破壊の剣! 容易く受けられると思うなよ!」

「確かに受けるのは難しいだろう、しかし避けてしまえば問題ない!」

「なんだと!?」

 大振りなシャルルの一撃を、ハインリヒは無駄のない動きで回避する。さらに躱し際の反撃で、シャルルに一本を浴びせたのだ。咄嗟の事態にシャルルは反応出来ず、ハインリヒの一撃をまともに受けてしまう。

「くっ、しまった!」

「そこまで! 勝者、ハインリヒ!」

 審判を務めるエリザベスにより、ハインリヒの勝利が宣言される。腕力と速度の対決は、速度に秀でたハインリヒの勝利だ。
 そして剣術大会は、準決勝へと突入する。


            


 大盛りあがりの剣術大会、続いては準決勝第一試合だ。
 強者同士の戦いを目前に、会場の熱気は増す一方である。

「うむ、このまま一気に優勝なのじゃ!」

 準決勝を戦う一人目はウルリカ様、圧倒的実力を有する優勝候補筆頭である。

「やあぁ……どうしてウルリカ相手なの……」

 準決勝を戦うもう一人はリィアンだ。魔人であるリィアンも、準決勝まで勝ち残るのは当然。しかし今はウルリカ様を相手に、完全に委縮し縮こまっている。

「それでは準決勝、第一試合……開始!」

 エリザベスの合図で試合開始、と思いきや両者まったく動こうとしない。

「どうしたのじゃ? 遠慮なくかかってくるのじゃ!」

「くっ……こうなったらやるしかない、ウルリカ覚悟!」

 リィアンは意を決して飛び出す、その速度は疾風のよう。風の魔人の本領発揮である、だが──

「ほれっ」

「あうっ!?」

 ウルリカ様は閃光の速度で、あっさりとリィアンから一本を取ってしまう。あまりの早さにリィアンだけでなく、審判のエリザベスもポカンである。

「……はっ、そこまで! 勝者、ウルリカ!」

「「「「「わあぁーっ!」」」」」

 我に返ったエリザベスの宣言で試合は終了。実に呆気ないものではあったが、超高速の戦闘に観客は大興奮。

「やっぱりウルリカには敵わないよ……」

「落ち込むことはないのじゃ、素晴らしい動きだったのじゃ!」

 決勝進出一人目はウルリカ様で決定、次は準決勝第二試合だ。


            


 続いては準決勝第二試合。シャルルを倒したハインリヒと、剣術合戦を制したナターシャの対決である。

「剣術合戦では後れを取った、だが今度は負けん!」

「そうはいきません、決勝に進むのは私です!」

「それでは準決勝、第二試合……開始!」

「やあああっ!」

 開始の合図と同時に、ナターシャは鋭い連続攻撃を繰り出す。対するハインリヒも負けていない、洗練された動きでナターシャの連続攻撃を見事に捌く。

「やはり手強い、しかし負けるわけにはいかない!」

「くうぅ……!?」

 今度はハインリヒの反撃だ、休む間もない猛攻でナターシャを闘技場の端まで追い詰めていく。逃げ場を失い絶体絶命のナターシャ、と思われたが──。

「この程度の窮地、何度も乗り越えてきました!」

「なっ、何ぃ!?」

 風に舞う木の葉のように身を捻り、攻撃の隙間を潜り抜け、逆にハインリヒの背後を取ったのだ。動揺のあまりハインリヒは一瞬だが動きを止めてしまう、その一瞬が命取りとなる。

「そこですっ!」

「ぐうぅ!?」

 一瞬の隙を見逃さず、ついにナターシャはハインリヒから一本を奪取。

「そこまで! 勝者、ナターシャ!」

「「「「「わあぁーっ!」」」」」

「ふぅ……やりました!」

 これまでナターシャは何度も窮地を乗り越えてきた、一方ハインリヒにそういった経験はほぼない。その経験値の差が、結果となり現れたのだろう。
 こうしてハインリヒを倒したナターシャ、決勝はウルリカ様とナターシャの一騎打ちである。

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