魔王様は学校にいきたい!
思い出
楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので、今日は帰省の最終日。
魔王城は大勢の魔物で溢れ返っていた、ウルリカ様を見送るべく魔界全土から集まってきたのである。大好きなウルリカ様とのお別れを目前に、どの魔物もションボリと寂しそう。
「ううぅ……ウルリカ様……っ」
ゼーファードは寂しさのあまり、ワナワナと全身を震わせビチャビチャと泣き喚いている。涙と鼻水の流しすぎで今にも干からびてしまいそうだ。
「これこれゼファよ、笑顔で見送ってほしいのじゃ」
「ぐすん……分かりましたぁ……」
「まったく笑えておらんのじゃ」
「くうぅ……寂しすぎて笑えません……」
「仕方のないゼファなのじゃ、ほれ」
「ふはぁ……はああぁーっ!?」
泣いてばかりいるゼーファードを、ウルリカ様は優しく抱き締めてあげる。しかしこれは逆効果、ゼーファードは感動のあまり二倍増しで大号泣だ。
一方オリヴィア、シャルロット、ナターシャも、それぞれお別れの挨拶を済ませていた。
「お別れですねドラルグ様、色々とお世話になりました」
「オリヴィアヨ、我ガ弟子アグニスニ伝言ヲ頼ム。イツカ稽古ヲツケテヤルカラ、ソレマデ腕ヲ磨イテオケトナ」
「承りました、必ずお伝えしますね。ところでお礼のクッキーを作りました、よければ召しあがってください」
「感謝スルゾ、人間界デモ元気ニ過ゴセ」
ドラルグはオリヴィアお手製クッキーを貰って嬉しそう、と見せかけて尻尾は力なくペタペタ垂れている。気丈に振舞っているものの内心は寂しいのだろう。
「ねえシャルロット、今度はアタイも女子会に誘ってよね!」
「あらぁ、だったら私は温泉に誘って欲しいわぁ」
「でしたら今度は二人で人間界へ遊びにきてくださいですの。人間界の温泉に入って、それからワタクシのお部屋で女子会ですわ!」
すっかり仲よしになったシャルロット、ミーア、そしてヴァーミリア。女子会と温泉の約束を交わし満面の笑顔でお別れである。
「ジュウベエさん、今度は剣術の稽古をつけてください! それから人間界の珍味を食べにきてください!」
「分かった分かった、少し落ちつけ──」
「嬉しいです、大好きですジュウベエさん!」
「む……」
ジュウベエはほんのり笑顔でナターシャの頭をナデナデ、まるで娘の旅立ちを見送るお父さんだ。どこからともなく「やはり隠し子」と聞こえてきたのは気のせいだろうか。
「おいゼーファード、いつまで泣いているつもりだ」
「ゼノン……ううぅ、これは失敬……」
「まったく……それはそうと世話になったな、この上なく有意義な時間だった。魔界との友好を深められ心より嬉しく思う、もはやロムルス王国と魔界は盟友だな」
「こちらこそ、人間界との友好を深められ非常に嬉しく思いますよ。窮地の際は我々をお頼りください、必ずや馳せ参じましょうとも」
ゼノン王とゼーファードの握手、それは人間界と魔界の友好関係を示した意味深い握手である。
「お別れは済んだかの、では人間界へ──」
「待ってください!」
「うむ?」
お別れも済んだところで人間界へ出発、とそこへ現れたのはエミリオである。よほど急いで駆けつけたのだろう、全身汗だくでフラフラだ。
「はぁ……はぁ……、間にあいました……」
「そういえば久しぶりにエミリオを見た気がするのじゃ、どこへいっておったのじゃ?」
「よくぞ聞いてくれました、この“思い出具現化装置”を作っていたのです!」
エミリオは虚空に腕を突っ込み、片手に収まる小さな箱を取り出す。金属片の組みあわさった複雑な作りの箱である。
「これぞボク史上最高傑作です! この思い出具現化装置を使えば、思い出の場面を物体に写し出せるのですよ!」
「うーむ?」
「つまり、今日の思い出を形として永久に残せるということです!」
「なんと、それは素晴らしいのじゃ!」
思い返してみると、帰省して二日目以降エミリオを見かけることはなかった。どうやらエミリオは姿を消している間、この思い出具現化装置を開発していたらしい。
「さあ、皆で思い出を残しましょう!」
「思い出なのじゃ!」
ウルリカ様を中心に、ゼノン王、オリヴィア、シャルロット、ナターシャは左側。ゼーファード、エミリオ、ミーア、ドラルグ、ジュウベエ、ヴァーミリアは右側。そして集まった魔物達は周囲をグルリと取り囲む。
「では……思い出具現化装置、起動です!」
パシャリと小さな音を響かせ、思い出具現化装置は大集合の光景を写し出す。
「もうしばらく魔界は皆に任せるのじゃ、今日の思い出を糧に頑張っておくれなのじゃ。妾は学校を頑張ってくるのじゃ!」
魔界の民達へ言葉を送り、最高にステキな思い出を残し、ウルリカ様は再び人間界へと転移するのだった。
魔王城は大勢の魔物で溢れ返っていた、ウルリカ様を見送るべく魔界全土から集まってきたのである。大好きなウルリカ様とのお別れを目前に、どの魔物もションボリと寂しそう。
「ううぅ……ウルリカ様……っ」
ゼーファードは寂しさのあまり、ワナワナと全身を震わせビチャビチャと泣き喚いている。涙と鼻水の流しすぎで今にも干からびてしまいそうだ。
「これこれゼファよ、笑顔で見送ってほしいのじゃ」
「ぐすん……分かりましたぁ……」
「まったく笑えておらんのじゃ」
「くうぅ……寂しすぎて笑えません……」
「仕方のないゼファなのじゃ、ほれ」
「ふはぁ……はああぁーっ!?」
泣いてばかりいるゼーファードを、ウルリカ様は優しく抱き締めてあげる。しかしこれは逆効果、ゼーファードは感動のあまり二倍増しで大号泣だ。
一方オリヴィア、シャルロット、ナターシャも、それぞれお別れの挨拶を済ませていた。
「お別れですねドラルグ様、色々とお世話になりました」
「オリヴィアヨ、我ガ弟子アグニスニ伝言ヲ頼ム。イツカ稽古ヲツケテヤルカラ、ソレマデ腕ヲ磨イテオケトナ」
「承りました、必ずお伝えしますね。ところでお礼のクッキーを作りました、よければ召しあがってください」
「感謝スルゾ、人間界デモ元気ニ過ゴセ」
ドラルグはオリヴィアお手製クッキーを貰って嬉しそう、と見せかけて尻尾は力なくペタペタ垂れている。気丈に振舞っているものの内心は寂しいのだろう。
「ねえシャルロット、今度はアタイも女子会に誘ってよね!」
「あらぁ、だったら私は温泉に誘って欲しいわぁ」
「でしたら今度は二人で人間界へ遊びにきてくださいですの。人間界の温泉に入って、それからワタクシのお部屋で女子会ですわ!」
すっかり仲よしになったシャルロット、ミーア、そしてヴァーミリア。女子会と温泉の約束を交わし満面の笑顔でお別れである。
「ジュウベエさん、今度は剣術の稽古をつけてください! それから人間界の珍味を食べにきてください!」
「分かった分かった、少し落ちつけ──」
「嬉しいです、大好きですジュウベエさん!」
「む……」
ジュウベエはほんのり笑顔でナターシャの頭をナデナデ、まるで娘の旅立ちを見送るお父さんだ。どこからともなく「やはり隠し子」と聞こえてきたのは気のせいだろうか。
「おいゼーファード、いつまで泣いているつもりだ」
「ゼノン……ううぅ、これは失敬……」
「まったく……それはそうと世話になったな、この上なく有意義な時間だった。魔界との友好を深められ心より嬉しく思う、もはやロムルス王国と魔界は盟友だな」
「こちらこそ、人間界との友好を深められ非常に嬉しく思いますよ。窮地の際は我々をお頼りください、必ずや馳せ参じましょうとも」
ゼノン王とゼーファードの握手、それは人間界と魔界の友好関係を示した意味深い握手である。
「お別れは済んだかの、では人間界へ──」
「待ってください!」
「うむ?」
お別れも済んだところで人間界へ出発、とそこへ現れたのはエミリオである。よほど急いで駆けつけたのだろう、全身汗だくでフラフラだ。
「はぁ……はぁ……、間にあいました……」
「そういえば久しぶりにエミリオを見た気がするのじゃ、どこへいっておったのじゃ?」
「よくぞ聞いてくれました、この“思い出具現化装置”を作っていたのです!」
エミリオは虚空に腕を突っ込み、片手に収まる小さな箱を取り出す。金属片の組みあわさった複雑な作りの箱である。
「これぞボク史上最高傑作です! この思い出具現化装置を使えば、思い出の場面を物体に写し出せるのですよ!」
「うーむ?」
「つまり、今日の思い出を形として永久に残せるということです!」
「なんと、それは素晴らしいのじゃ!」
思い返してみると、帰省して二日目以降エミリオを見かけることはなかった。どうやらエミリオは姿を消している間、この思い出具現化装置を開発していたらしい。
「さあ、皆で思い出を残しましょう!」
「思い出なのじゃ!」
ウルリカ様を中心に、ゼノン王、オリヴィア、シャルロット、ナターシャは左側。ゼーファード、エミリオ、ミーア、ドラルグ、ジュウベエ、ヴァーミリアは右側。そして集まった魔物達は周囲をグルリと取り囲む。
「では……思い出具現化装置、起動です!」
パシャリと小さな音を響かせ、思い出具現化装置は大集合の光景を写し出す。
「もうしばらく魔界は皆に任せるのじゃ、今日の思い出を糧に頑張っておくれなのじゃ。妾は学校を頑張ってくるのじゃ!」
魔界の民達へ言葉を送り、最高にステキな思い出を残し、ウルリカ様は再び人間界へと転移するのだった。
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