魔王様は学校にいきたい!
うってつけ
一方こちらはロームルス城、ゼノン国王の執務室。
フカフカのソファに並んで腰かけるゼノン王とヴィクトリア女王。エリッサ達の乗った馬車を見送り、しばしの休息といったところか。そんな二人に加えて、執務室にはウルリカ様とシャルロット姿もある。
「今日は朝から大変でしたわ、ウルリカが退屈のあまり駄々をこねて大暴れでしたの」
「あらあら、それは災難だったわね」
「暇なのじゃー……」
「はぁ、おかげでエリッサを見送れませんでしたわ」
「暇すぎてモヤモヤするのじゃー……」
「暇だからといって俺の執務室に居座るなと、何度も言ってあるだろうに」
ずっと授業を受けられていないウルリカ様は、授業を受けたくて仕方のない様子。ベッタリとソファに寝そべり、あっちへゴロゴロこっちへゴロゴロ。
「憂さ晴らしに大暴れしたいのじゃー……」
「おい、絶対に止めろよ!」
額の冷汗を拭いながら、ゼノン王は静かに窓の外を眺める。
「それはそうとクリスティーナは、無事に役目を果たせているだろうか」
「きっと大丈夫よ、あれで実は責任感の強い子なんだから」
「まあそうだな、心配する必要はないか──」
「父上、一大事です!」
「──んぐっ!?」
ホッと一息ついた瞬間を狙い澄ましたかのように、アルフレッドが執務室へと飛び込んでくる。完全に油断していたゼノン王は、思わずむせ返ってしまう。
「ごほごほっ、どうしたアルフレッド……?」
「エリッサ王女達の乗っていた馬車、およびロムルス王国の騎兵隊が何者かの襲撃を受けたとのことです」
「なっ、襲撃だと!?」
「場所は国境手前の平野部、襲撃者の正体は不明。偶然付近を通りかかった商人から、先ほど報告を受けたところです」
「エリッサ王女や元老院の方々、クリスティーナは無事なのかしら?」
「残念ながら安否は分かりません、襲撃者と共に行方をくらましたらしく……」
張り詰める空気の中、アルフレッドの報告は続く。
「大まかな位置情報を除き、詳細は何一つ分かっていません。とはいえ悠長に情報を集めている時間はない、どうされますか父上?」
「急ぎ救援を向かわせるべきだろう、直ちに聖騎士を招集しろ」
「ダメよ、エリザベス達はアルテミア正教国だわ」
「くっ、そうだったか……ならば城の警備兵でも構わん、動ける者を集めるのだ」
ゼノン王の言葉を聞き、シャルロットは勢いよく立ちあがる。勢いよすぎて脛をぶつけしまうも、そのことに気づいてすらいない様子。家族や友達の身を案じるあまり、気が動転しているのだろう。
「でしたらワタクシに任せてくださいですの!」
「任せる? どういうことだいシャルロット?」
「ワタクシが救援に向かいますわ! ベッポからアグニスを借りられれば、現地までひとっ飛びですの!」
「それはダメだよ、あまりにも危険すぎる。襲撃者の正体も分からないんだ、ガレウス邪教団の可能性だってある」
「でも!」
「とにかく落ちついて、こういう時ほど冷静に頭を働かせるんだよ」
アルフレッドに諭されて、シャルロットは渋々ソファに座りなおす。悔しそうに俯いて数秒、再び勢いよく立ちあがる。
「でしたらウルリカにお願いしますわ!」
「うむ?」
「襲撃者が何者であろうと、ウルリカであれば安心して任せられますわ」
「なるほどな、確かにうってつけかもしれん。暇を持て余す最強の魔王、今この瞬間においては適任だな」
「お願いウルリカ、どうか力を貸してくださいですの」
「うーむ……襲撃を受けたのは、教室塔の前で出会った子供じゃな?」
「その通りですわ、南ディナール王国の王女エリッサですの」
「うーむ……うむむ……」
悩むそぶりを見せるウルリカ様、どうやらあまり乗り気ではなさそうだ。
「あの者はロティに手をあげたのじゃ、ロティを傷つけたのじゃ」
「それは……」
「仮に助けたとして、再びロティを傷つけるかもしれんのじゃ。それでもロティはあの者を助けたいのじゃな?」
「もちろんですわ、だってエリッサは大切なお友達ですもの!」
「その思いに偽りはないのじゃな?」
「偽りなんてありませんわ! お願いウルリカ、友達を助けるために力を貸してくださいですの!」
「うむ、分かったのじゃ!」
シャルロットの思いを聞き、ウルリカ様はピョンと飛びあがる。先ほどまでとは打って変わり、やる気満々といった様子だ。
「ロティがそう言うならば、妾は惜しまず力を貸すのじゃ! なぜならロティは妾の大切な友達じゃからな!」
「ウルリカ、ありがとう……っ」
「それに暇すぎてモヤモヤしておったからの、憂さ晴らしに大暴れしてやるのじゃ!」
「おい待てウルリカ、やりすぎは禁物だぞ」
「とにかく妾に任せておくのじゃ!」
「そうか……心配だな……」
ゼノン王の心配を余所に、ブンブンと両腕を振り回すウルリカ様。
そして、窮地に陥る王女達の元へ、やる気いっぱいの魔王様が駆けつける。
フカフカのソファに並んで腰かけるゼノン王とヴィクトリア女王。エリッサ達の乗った馬車を見送り、しばしの休息といったところか。そんな二人に加えて、執務室にはウルリカ様とシャルロット姿もある。
「今日は朝から大変でしたわ、ウルリカが退屈のあまり駄々をこねて大暴れでしたの」
「あらあら、それは災難だったわね」
「暇なのじゃー……」
「はぁ、おかげでエリッサを見送れませんでしたわ」
「暇すぎてモヤモヤするのじゃー……」
「暇だからといって俺の執務室に居座るなと、何度も言ってあるだろうに」
ずっと授業を受けられていないウルリカ様は、授業を受けたくて仕方のない様子。ベッタリとソファに寝そべり、あっちへゴロゴロこっちへゴロゴロ。
「憂さ晴らしに大暴れしたいのじゃー……」
「おい、絶対に止めろよ!」
額の冷汗を拭いながら、ゼノン王は静かに窓の外を眺める。
「それはそうとクリスティーナは、無事に役目を果たせているだろうか」
「きっと大丈夫よ、あれで実は責任感の強い子なんだから」
「まあそうだな、心配する必要はないか──」
「父上、一大事です!」
「──んぐっ!?」
ホッと一息ついた瞬間を狙い澄ましたかのように、アルフレッドが執務室へと飛び込んでくる。完全に油断していたゼノン王は、思わずむせ返ってしまう。
「ごほごほっ、どうしたアルフレッド……?」
「エリッサ王女達の乗っていた馬車、およびロムルス王国の騎兵隊が何者かの襲撃を受けたとのことです」
「なっ、襲撃だと!?」
「場所は国境手前の平野部、襲撃者の正体は不明。偶然付近を通りかかった商人から、先ほど報告を受けたところです」
「エリッサ王女や元老院の方々、クリスティーナは無事なのかしら?」
「残念ながら安否は分かりません、襲撃者と共に行方をくらましたらしく……」
張り詰める空気の中、アルフレッドの報告は続く。
「大まかな位置情報を除き、詳細は何一つ分かっていません。とはいえ悠長に情報を集めている時間はない、どうされますか父上?」
「急ぎ救援を向かわせるべきだろう、直ちに聖騎士を招集しろ」
「ダメよ、エリザベス達はアルテミア正教国だわ」
「くっ、そうだったか……ならば城の警備兵でも構わん、動ける者を集めるのだ」
ゼノン王の言葉を聞き、シャルロットは勢いよく立ちあがる。勢いよすぎて脛をぶつけしまうも、そのことに気づいてすらいない様子。家族や友達の身を案じるあまり、気が動転しているのだろう。
「でしたらワタクシに任せてくださいですの!」
「任せる? どういうことだいシャルロット?」
「ワタクシが救援に向かいますわ! ベッポからアグニスを借りられれば、現地までひとっ飛びですの!」
「それはダメだよ、あまりにも危険すぎる。襲撃者の正体も分からないんだ、ガレウス邪教団の可能性だってある」
「でも!」
「とにかく落ちついて、こういう時ほど冷静に頭を働かせるんだよ」
アルフレッドに諭されて、シャルロットは渋々ソファに座りなおす。悔しそうに俯いて数秒、再び勢いよく立ちあがる。
「でしたらウルリカにお願いしますわ!」
「うむ?」
「襲撃者が何者であろうと、ウルリカであれば安心して任せられますわ」
「なるほどな、確かにうってつけかもしれん。暇を持て余す最強の魔王、今この瞬間においては適任だな」
「お願いウルリカ、どうか力を貸してくださいですの」
「うーむ……襲撃を受けたのは、教室塔の前で出会った子供じゃな?」
「その通りですわ、南ディナール王国の王女エリッサですの」
「うーむ……うむむ……」
悩むそぶりを見せるウルリカ様、どうやらあまり乗り気ではなさそうだ。
「あの者はロティに手をあげたのじゃ、ロティを傷つけたのじゃ」
「それは……」
「仮に助けたとして、再びロティを傷つけるかもしれんのじゃ。それでもロティはあの者を助けたいのじゃな?」
「もちろんですわ、だってエリッサは大切なお友達ですもの!」
「その思いに偽りはないのじゃな?」
「偽りなんてありませんわ! お願いウルリカ、友達を助けるために力を貸してくださいですの!」
「うむ、分かったのじゃ!」
シャルロットの思いを聞き、ウルリカ様はピョンと飛びあがる。先ほどまでとは打って変わり、やる気満々といった様子だ。
「ロティがそう言うならば、妾は惜しまず力を貸すのじゃ! なぜならロティは妾の大切な友達じゃからな!」
「ウルリカ、ありがとう……っ」
「それに暇すぎてモヤモヤしておったからの、憂さ晴らしに大暴れしてやるのじゃ!」
「おい待てウルリカ、やりすぎは禁物だぞ」
「とにかく妾に任せておくのじゃ!」
「そうか……心配だな……」
ゼノン王の心配を余所に、ブンブンと両腕を振り回すウルリカ様。
そして、窮地に陥る王女達の元へ、やる気いっぱいの魔王様が駆けつける。
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