魔王様は学校にいきたい!
ウルウル
同盟の持ち越しから早二日。
この日ゼノン国王の執務室に、ロムルス王国の王族一家がほぼ勢揃いしていた。ゼノン王、ヴィクトリア女王、アルフレッド、クリスティーナ、シャルロット。そしてなぜかウルリカ様も一緒だ。
ちなみにエリザベスはアルテミア正教国へと出向いているため不在である。
「暇なのじゃー……」
「暇だからといって俺の執務室に居座るのは止めてくれ」
「誰か授業をしておくれなのじゃー……」
どうやらウルリカ様は授業をしてくれる先生を探し求め、ゼノン国王の執務室へと辿りついたらしい。ずっと授業を受けられずにいるのだろう、この上なく退屈そうである。
「今は南ディナール王国への対応でバタバタしているの、もうしばらく授業は出来そうにないわ。ごめんなさいねウルリカちゃん」
「むぅー……暇死にしそうなのじゃー……」
「退屈な思いをさせているお詫びに、南ディナール王国のお菓子を食べるかい?」
「異国のお菓子なのじゃ! もちろん食べるのじゃ!」
アルフレッドからお菓子を受け取り、少し機嫌を直したウルリカ様。ゴロゴロとソファに寝そべり、素足をパタパタお菓子をサクサク。
「おいしいのじゃ、サクサク……」
「やはりウルウルの愛らしさは天井知らずだ」
「「「「ウルウル!?」」」」
突然飛び出したウルリカ様の呼称“ウルウル”に執務室は騒然とする。
「おいアルフレッドよ、ウルウルとは一体?」
「愛しき少女を呼び表すのに“ウルリカ”や“ウルリカ様”ではダメなのです! 愛しき少女を呼び表すには最上級に可愛らしい呼び名、つまり“ウルウル”こそ相応しいのです!」
「そ、そうなのか……」
「そうなのです! ウルウルこそ至高の呼び名、愛らしさの到達点なのです!」
「あー……コホンッ!」
謎の熱意に押されつつも、ゼノン王は咳払いで強引に話題を変える。
「ところで本題なのだが、我々は未だ南ディナール王国との同盟を結べていない。しかしガレウス邪教団への対抗策として、南ディナール王国との同盟は必須だ」
「サクサク……」
「南ディナール王国は高い軍事技術を有している、技術提供を受けられればロムルス王国の国力は跳ねあがるだろう。逆にロムルス王国の持つ豊富な資源や農作物を提供することで、南ディナール王国の国力増強に繋がるはずだ」
「同盟による両国の国力増強は、対ガレウス邪教団の大きな力となるわけですね」
「そういうことだ、しかしな……」
ゼノン王はシャルロットへと重たい視線を向ける。
「エリッサ王女の様子はどうだ?」
「同盟締結を承認するよう何度も説得を試みましたわ、でも相変わらず怒ってばかりですの」
「そうか……」
「数年前のエリッサとは別人のようですわ。当時は凄く落ちついた、ステキな王女様という印象でしたのよ」
「私もシャルロットと同じような印象を持ったわ。幼いながらも品のある、素晴らしい王女だと思ったものよ」
「この数年で……なにかあったのかしらね……」
「サク……サク……」
「ふむ、やはり同盟締結は難しいか……」
目を伏せ考えに没頭するゼノン王、その表情は非常に険しいものだ。
「……致し方ない、今回は諦めるか」
「父上? 諦めるとはどういう意味です?」
「元老院は南ディナール王国の統治機関だ、何日間もロムルス王国に留めておくわけにいくまい。今回は帰国してもらい、後日あらためて我々から南ディナール王国を訪問しよう」
「確かに父上のおっしゃる通りですね。では私からその旨を、元老院の皆様にお伝えしておきます」
「国境まではロムルス王国から護衛隊を同行させよう、ロムルス王家の代表としてクリスティーナも同行を頼む」
「分かった……」
「ヴィクトリアとシャルロットはギリギリまでエリッサ王女の説得を続けてくれ」
「分かりましたわ」
「頑張りましょうねシャルロット」
「よし、では頼んだぞ」
話し合いは終わり、各々やるべきことに向け立ちあがる。しかしウルリカ様だけはソファに寝そべったまま動かない。
「すやぁ……すやぁ……」
「あら、眠ってしまったのですわね」
「まったく呑気なものだな」
「やはりウルウルは愛らしい」
真剣な空気をほっこり和ませる、ウルウルことウルリカ様なのであった。
この日ゼノン国王の執務室に、ロムルス王国の王族一家がほぼ勢揃いしていた。ゼノン王、ヴィクトリア女王、アルフレッド、クリスティーナ、シャルロット。そしてなぜかウルリカ様も一緒だ。
ちなみにエリザベスはアルテミア正教国へと出向いているため不在である。
「暇なのじゃー……」
「暇だからといって俺の執務室に居座るのは止めてくれ」
「誰か授業をしておくれなのじゃー……」
どうやらウルリカ様は授業をしてくれる先生を探し求め、ゼノン国王の執務室へと辿りついたらしい。ずっと授業を受けられずにいるのだろう、この上なく退屈そうである。
「今は南ディナール王国への対応でバタバタしているの、もうしばらく授業は出来そうにないわ。ごめんなさいねウルリカちゃん」
「むぅー……暇死にしそうなのじゃー……」
「退屈な思いをさせているお詫びに、南ディナール王国のお菓子を食べるかい?」
「異国のお菓子なのじゃ! もちろん食べるのじゃ!」
アルフレッドからお菓子を受け取り、少し機嫌を直したウルリカ様。ゴロゴロとソファに寝そべり、素足をパタパタお菓子をサクサク。
「おいしいのじゃ、サクサク……」
「やはりウルウルの愛らしさは天井知らずだ」
「「「「ウルウル!?」」」」
突然飛び出したウルリカ様の呼称“ウルウル”に執務室は騒然とする。
「おいアルフレッドよ、ウルウルとは一体?」
「愛しき少女を呼び表すのに“ウルリカ”や“ウルリカ様”ではダメなのです! 愛しき少女を呼び表すには最上級に可愛らしい呼び名、つまり“ウルウル”こそ相応しいのです!」
「そ、そうなのか……」
「そうなのです! ウルウルこそ至高の呼び名、愛らしさの到達点なのです!」
「あー……コホンッ!」
謎の熱意に押されつつも、ゼノン王は咳払いで強引に話題を変える。
「ところで本題なのだが、我々は未だ南ディナール王国との同盟を結べていない。しかしガレウス邪教団への対抗策として、南ディナール王国との同盟は必須だ」
「サクサク……」
「南ディナール王国は高い軍事技術を有している、技術提供を受けられればロムルス王国の国力は跳ねあがるだろう。逆にロムルス王国の持つ豊富な資源や農作物を提供することで、南ディナール王国の国力増強に繋がるはずだ」
「同盟による両国の国力増強は、対ガレウス邪教団の大きな力となるわけですね」
「そういうことだ、しかしな……」
ゼノン王はシャルロットへと重たい視線を向ける。
「エリッサ王女の様子はどうだ?」
「同盟締結を承認するよう何度も説得を試みましたわ、でも相変わらず怒ってばかりですの」
「そうか……」
「数年前のエリッサとは別人のようですわ。当時は凄く落ちついた、ステキな王女様という印象でしたのよ」
「私もシャルロットと同じような印象を持ったわ。幼いながらも品のある、素晴らしい王女だと思ったものよ」
「この数年で……なにかあったのかしらね……」
「サク……サク……」
「ふむ、やはり同盟締結は難しいか……」
目を伏せ考えに没頭するゼノン王、その表情は非常に険しいものだ。
「……致し方ない、今回は諦めるか」
「父上? 諦めるとはどういう意味です?」
「元老院は南ディナール王国の統治機関だ、何日間もロムルス王国に留めておくわけにいくまい。今回は帰国してもらい、後日あらためて我々から南ディナール王国を訪問しよう」
「確かに父上のおっしゃる通りですね。では私からその旨を、元老院の皆様にお伝えしておきます」
「国境まではロムルス王国から護衛隊を同行させよう、ロムルス王家の代表としてクリスティーナも同行を頼む」
「分かった……」
「ヴィクトリアとシャルロットはギリギリまでエリッサ王女の説得を続けてくれ」
「分かりましたわ」
「頑張りましょうねシャルロット」
「よし、では頼んだぞ」
話し合いは終わり、各々やるべきことに向け立ちあがる。しかしウルリカ様だけはソファに寝そべったまま動かない。
「すやぁ……すやぁ……」
「あら、眠ってしまったのですわね」
「まったく呑気なものだな」
「やはりウルウルは愛らしい」
真剣な空気をほっこり和ませる、ウルウルことウルリカ様なのであった。
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