魔王様は学校にいきたい!
南の国の王女
教室塔を飛び出したウルリカ様は、見知らぬ少女とバッタリ遭遇。
「ポリポリ……うむ?」
「……なによアンタ?」
年の頃はシャルロットと同じか少し上、特徴的な浅黒い肌は南方の出身者であることを表している。
少女の斜め後ろには壮年の男が控えている。隙のない佇まい、鋭く光る眼光、そして腰に携えた剣、醸し出す雰囲気は只者ではない。
「お下がりくださいエリッサ様」
「はあ? なに言ってんのハミルカル?」
エリッサと呼ばれた見知らぬ少女、ハミルカルと呼ばれた壮年の男。会話から察するに二人は主従の関係なのだろう。
「子供を相手に下がれって?」
「子供とて危険やもしれません」
「こんな平和ボケした国に、危険なんてあるものですか!」
ムッと顔をしかめるエリッサ、警戒を怠らないハミルカル、そして呑気にクッキーを食べ続けるウルリカ様。なんとも奇妙な三竦みの完成である、とそこへ──
「見つけましたわよエリッサ、遠くへいかれると困りますの……って、ウルリカですの?」
「うむ? ロティなのじゃ!」
「なんと、ウルリカ様ではございませぬか!」
「ノイマンも一緒なのじゃ!」
現れたのはシャルロットとノイマン学長だ。ウルリカ様を発見するや否や、ピョンと飛び跳ねるノイマン学長。
「ウルリカ様! お久しう御座いますぅ!」
空中でグルグルと回転し、平伏す姿勢でウルリカ様の足元へと着地する。ウルリカ様を前にした時の動きは、相変わらず老人のものとは思えない。
「待ってくださいウルリカさん──えっ、シャルロット様?」
「あら、ナターシャですわ」
一方教室塔からは、クラスメイト達が外へと出てくる。
「どうして外へ出ていますの? 今日は自習と聞いていましたわよ?」
「ウルリカさんを追いかけてきたのです」
「自習に不満だったらしく、外へ飛び出してしまったのですよ」
「退屈だと大騒ぎしてたよな、でもクッキーは絶対に手放さなかった」
「まあ、それはウルリカらしいですわ」
「ところでシャルロット様、今日はお休みのはずでは?」
「ええ、今日は学校を休んでエリッサの案内を──」
「ちょっと!」
楽し気な会話の最中、エリッサは強引にシャルロットの前へと割って入る。
「私を差し置いて楽しそうにお喋りしないで!」
「あら、ごめんなさいエリッサ」
「ふーん……この連中がシャルロットのクラスメイトなのかしら?」
「ええ、ワタクシの大切なクラスメイトですわ」
「ふんっ、冴えないクラスメイトね!」
エリッサの放った謗言のせいで楽し気だった空気は一変。険悪な空気の流れる中、しかしウルリカ様は構わずクッキーをポリポリ。
そんなウルリカ様の態度は、エリッサを余計に苛立たせる。
「そこのあなた、クッキーを食べるのをやめなさい!」
「なぜじゃ?」
「なぜですって? 南ディナールの王女である私の前で、クッキーなんて食べていいと思っているのかしら?」
南ディナール王国の王女であるという身分を明かし、勝ち誇ったように笑うエリッサ。
だが当然ウルリカ様は、人間の身分など気にしない。
「ポリポリ……ポリポリ……」
「聞えなかったの? クッキーを食べるのをやめなさい!」
「いやなのじゃ」
「はあ? 王女である私の命令を聞けないの?」
「お主のことなど知らぬのじゃ、ポリポリ……」
「知らな……っ!?」
次の瞬間ハミルカルは、目にも止まらぬ速度で剣を引き抜く。
「エリッサ様への不遜な態度、断じて許されぬ!」
「おおっ、妾に勝負を挑む気かの?」
まさに一触即発の状況。
喉元に剣を突きつけられ、それでも余裕綽々なウルリカ様はニッコリと不敵に笑うのだった。
「ポリポリ……うむ?」
「……なによアンタ?」
年の頃はシャルロットと同じか少し上、特徴的な浅黒い肌は南方の出身者であることを表している。
少女の斜め後ろには壮年の男が控えている。隙のない佇まい、鋭く光る眼光、そして腰に携えた剣、醸し出す雰囲気は只者ではない。
「お下がりくださいエリッサ様」
「はあ? なに言ってんのハミルカル?」
エリッサと呼ばれた見知らぬ少女、ハミルカルと呼ばれた壮年の男。会話から察するに二人は主従の関係なのだろう。
「子供を相手に下がれって?」
「子供とて危険やもしれません」
「こんな平和ボケした国に、危険なんてあるものですか!」
ムッと顔をしかめるエリッサ、警戒を怠らないハミルカル、そして呑気にクッキーを食べ続けるウルリカ様。なんとも奇妙な三竦みの完成である、とそこへ──
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「うむ? ロティなのじゃ!」
「なんと、ウルリカ様ではございませぬか!」
「ノイマンも一緒なのじゃ!」
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空中でグルグルと回転し、平伏す姿勢でウルリカ様の足元へと着地する。ウルリカ様を前にした時の動きは、相変わらず老人のものとは思えない。
「待ってくださいウルリカさん──えっ、シャルロット様?」
「あら、ナターシャですわ」
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「ウルリカさんを追いかけてきたのです」
「自習に不満だったらしく、外へ飛び出してしまったのですよ」
「退屈だと大騒ぎしてたよな、でもクッキーは絶対に手放さなかった」
「まあ、それはウルリカらしいですわ」
「ところでシャルロット様、今日はお休みのはずでは?」
「ええ、今日は学校を休んでエリッサの案内を──」
「ちょっと!」
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「ええ、ワタクシの大切なクラスメイトですわ」
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エリッサの放った謗言のせいで楽し気だった空気は一変。険悪な空気の流れる中、しかしウルリカ様は構わずクッキーをポリポリ。
そんなウルリカ様の態度は、エリッサを余計に苛立たせる。
「そこのあなた、クッキーを食べるのをやめなさい!」
「なぜじゃ?」
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だが当然ウルリカ様は、人間の身分など気にしない。
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「いやなのじゃ」
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喉元に剣を突きつけられ、それでも余裕綽々なウルリカ様はニッコリと不敵に笑うのだった。
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