魔王様は学校にいきたい!
飛来
大公爵ヴァーミリアの召喚、魔人リィアンの王都侵入。それらと時を同じくして、会議を終えた聖騎士達もまた城下町へと繰り出していた。
路地から路地へと念入りに巡回する、エリザベス、スカーレット、カイウスの三人。
「ガーランドってホントにムカつく! 古参だからって調子に乗って!」
「落ちつきなさいスカーレット、今は巡回に集中しましょう」
「落ちついてられないの! どうしてカイウスは冷静でいられるわけ!?」
「冷静ではありません、こう見えて腸煮えくり返っています」
喧々囂々な会議を終えたばかりで、スカーレットは気が立っている様子だ。カイウスも落ちついているように見えて、かなり頭にきているらしい。
「パルチヴァールとトーレスも! 腰巾着のくせに態度だけは大きいんだから!」
「彼らは古参の聖騎士であり、多くの経験を積んだ実力者です。だからこそ若いエリザベス様を聖騎士筆頭と認めたくないのでしょう」
「だからってあの態度はないでしょ!」
「そうですね、あの態度は許せません」
スカーレットとカイウスは次々と不満を口にする、一方のエリザベスは意外にも冷静だ。
「それくらいにしておけ、ガーランドのことは放っておけばいい」
「エリザベス様はムカつかないんですか?」
「あの場ではついカッとなってしまった、だが大人げなかったと反省している。そもそも私達は聖騎士だ、口喧嘩などするものではない」
エリザベスは足を止めると、振り返って爽やかな笑顔を浮かべる。
「意見が食い違うのならば、実力で認めさせればいいのだ!」
スッキリと快活なエリザベスの態度に、スカーレットとカイウスの怒りも徐々に収まっていく。
「さあ、私達は王都の巡回を続けよう……ん?」
歩き出そうとしたエリザベスは、再びピタリと足を止める。
遠くから聞こえてくる破壊音、そして裂くような悲鳴。スカーレットとカイウスも異変に気づいたようだ。
「どうやら緊急事態だ、急ぐぞ!」
「「はい!」」
鎧を着込んでいるとは思えない速度で、風のように疾走する三人。路地を抜け大通りへと出たところで、エリザベスは騒ぎの原因と遭遇する。
「な、なんだこれは……」
人の背丈ほどもある怪鳥の群れが、人々へと襲いかかっていたのである。
「あれはイビルバードです、集団で獲物を襲う凶暴な魔物です!」
「どうして町中に魔物の群れがいるのよ!?」
「それはなんとも……もしかするとガレウス邪教団の仕業かもしれません」
「考えている場合ではない! とにかく逃げ遅れた人々を助けるぞ!」
「「はい!」」
エリザベスの指示に従い、三人は逃げ遅れた人々を助けて回る。
足の速いスカーレットはイビルバードの注意を一手に引きつけ、その間にエリザベスとカイウスで人々を安全な場所まで運ぶ。
三人の見事な連携によって、あらかたの逃げ遅れた人々を助け出すことに成功する。とその時、大通りの反対側から鎧の集団が姿を現す。
「これは一体なんの騒ぎだ?」
「ガーランドか!」
現れたのはガーランド、パルチヴァール、トーレスの三人だ。エリザベス達と同じように、騒ぎを聞いて駆けつけたようである。
「イビルバードの群れだ! 力を貸せガーランド!」
「もちろん力を貸そう、しかし俺達への指図は遠慮してもらいたい」
「なっ……!?」
驚くエリザベスを、ガーランドは鋭く睨みつける。
「この程度の窮地ならば俺は何度も経験している、そして十分に対処法も心得ている。故にここからは俺の指示に従い行動してもらいたい」
「ちょっとガーランド! 今は指示がどうとか言ってる場合じゃないでしょ!」
「うるさいですよスカーレット、大人しくガーランド様の指示に従いなさい」
「パルチヴァールは黙ってなさいよ!」
「いいえスカーレット、黙るのはそちらの方──」
「クアァァーッ!!」
口論へと発展しかけたその時、上空から巨大な影が飛来する。
それは家一軒ほどもある巨大な怪鳥だった。二対四枚の翼で風を巻きあげ、全身から白い稲妻を放っている。
「あれはサンダーバード!?」
「サンダーバードって、町一つを壊滅させると言われるほどの魔物じゃない!」
「ほう……サンダーバードか、俺達の相手に相応しいな」
強力な魔物の出現を受けて、ガーランド、パルチヴァール、トーレスは交戦的な笑みを浮かべる。それぞれ腰から剣を引き抜くと、サンダーバードに向かって高々と剣を構える。
「サンダーバードは俺達で討伐するぞ、周りのザコ共はエリザベス様達に任せる」
「待ちなさいよガーランド、ここは全員の力をあわせて戦うべきだわ!」
「足手まといだ、下がっていろ!」
「足でまといですって!?」
「クオッ! クオォーッ!!」
意見の食い違いよる行動の遅れ、その遅れは致命的な隙を生み出してしまう。
サンダーバードの放った稲妻により、倒壊した建物の瓦礫が逃げ遅れた少女へと降りかかったのだ。
「きゃあーっ!?」
「マズいわ!」
「しまった!」
スカーレットとパルチヴァールは慌てて少女の元へと駆け出す。だが瓦礫は少女の真上まで迫っている、もはや間にあう距離ではない。
「おおぉっ!」
ところが出遅れた他の聖騎士とは違い、エリザベスだけは一早く動いていたのである。瓦礫の下へと滑り込み、身を挺して瓦礫から少女を守ったのだ。
間一髪のところで少女の命は救われた、しかし──。
「ふぅ、ケガはないか?」
「あ……、王女様……腕が……」
助けられた少女は震える手でエリザベスの片腕を指差す。
少女の指差す先、瓦礫を受け止めたエリザベスの右腕はあらぬ方向へとへし折れていた。
路地から路地へと念入りに巡回する、エリザベス、スカーレット、カイウスの三人。
「ガーランドってホントにムカつく! 古参だからって調子に乗って!」
「落ちつきなさいスカーレット、今は巡回に集中しましょう」
「落ちついてられないの! どうしてカイウスは冷静でいられるわけ!?」
「冷静ではありません、こう見えて腸煮えくり返っています」
喧々囂々な会議を終えたばかりで、スカーレットは気が立っている様子だ。カイウスも落ちついているように見えて、かなり頭にきているらしい。
「パルチヴァールとトーレスも! 腰巾着のくせに態度だけは大きいんだから!」
「彼らは古参の聖騎士であり、多くの経験を積んだ実力者です。だからこそ若いエリザベス様を聖騎士筆頭と認めたくないのでしょう」
「だからってあの態度はないでしょ!」
「そうですね、あの態度は許せません」
スカーレットとカイウスは次々と不満を口にする、一方のエリザベスは意外にも冷静だ。
「それくらいにしておけ、ガーランドのことは放っておけばいい」
「エリザベス様はムカつかないんですか?」
「あの場ではついカッとなってしまった、だが大人げなかったと反省している。そもそも私達は聖騎士だ、口喧嘩などするものではない」
エリザベスは足を止めると、振り返って爽やかな笑顔を浮かべる。
「意見が食い違うのならば、実力で認めさせればいいのだ!」
スッキリと快活なエリザベスの態度に、スカーレットとカイウスの怒りも徐々に収まっていく。
「さあ、私達は王都の巡回を続けよう……ん?」
歩き出そうとしたエリザベスは、再びピタリと足を止める。
遠くから聞こえてくる破壊音、そして裂くような悲鳴。スカーレットとカイウスも異変に気づいたようだ。
「どうやら緊急事態だ、急ぐぞ!」
「「はい!」」
鎧を着込んでいるとは思えない速度で、風のように疾走する三人。路地を抜け大通りへと出たところで、エリザベスは騒ぎの原因と遭遇する。
「な、なんだこれは……」
人の背丈ほどもある怪鳥の群れが、人々へと襲いかかっていたのである。
「あれはイビルバードです、集団で獲物を襲う凶暴な魔物です!」
「どうして町中に魔物の群れがいるのよ!?」
「それはなんとも……もしかするとガレウス邪教団の仕業かもしれません」
「考えている場合ではない! とにかく逃げ遅れた人々を助けるぞ!」
「「はい!」」
エリザベスの指示に従い、三人は逃げ遅れた人々を助けて回る。
足の速いスカーレットはイビルバードの注意を一手に引きつけ、その間にエリザベスとカイウスで人々を安全な場所まで運ぶ。
三人の見事な連携によって、あらかたの逃げ遅れた人々を助け出すことに成功する。とその時、大通りの反対側から鎧の集団が姿を現す。
「これは一体なんの騒ぎだ?」
「ガーランドか!」
現れたのはガーランド、パルチヴァール、トーレスの三人だ。エリザベス達と同じように、騒ぎを聞いて駆けつけたようである。
「イビルバードの群れだ! 力を貸せガーランド!」
「もちろん力を貸そう、しかし俺達への指図は遠慮してもらいたい」
「なっ……!?」
驚くエリザベスを、ガーランドは鋭く睨みつける。
「この程度の窮地ならば俺は何度も経験している、そして十分に対処法も心得ている。故にここからは俺の指示に従い行動してもらいたい」
「ちょっとガーランド! 今は指示がどうとか言ってる場合じゃないでしょ!」
「うるさいですよスカーレット、大人しくガーランド様の指示に従いなさい」
「パルチヴァールは黙ってなさいよ!」
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「クアァァーッ!!」
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「ほう……サンダーバードか、俺達の相手に相応しいな」
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「サンダーバードは俺達で討伐するぞ、周りのザコ共はエリザベス様達に任せる」
「待ちなさいよガーランド、ここは全員の力をあわせて戦うべきだわ!」
「足手まといだ、下がっていろ!」
「足でまといですって!?」
「クオッ! クオォーッ!!」
意見の食い違いよる行動の遅れ、その遅れは致命的な隙を生み出してしまう。
サンダーバードの放った稲妻により、倒壊した建物の瓦礫が逃げ遅れた少女へと降りかかったのだ。
「きゃあーっ!?」
「マズいわ!」
「しまった!」
スカーレットとパルチヴァールは慌てて少女の元へと駆け出す。だが瓦礫は少女の真上まで迫っている、もはや間にあう距離ではない。
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