魔王様は学校にいきたい!
暴走
「あら、ここはぁ……?」
光の靄を払い除け、姿を現す声の主。
ウネウネと波打つ長い髪、鱗のような漆黒のドレス。蠱惑的であり、どこか野性的な雰囲気を漂わせる絶世の美女だ。
「しまったのじゃ、時空間魔法を暴走させてしまったのじゃ」
「その声はぁ……もしかしてウルリカ様!」
「げげっ、まさかヴァーミリア!?」
どういう訳か慌てて逃げ出そうとするウルリカ様、しかし──。
「逃がさないわよウルリカ様、抱っこよぉ!」
「ぐむぅー!?」
──次の瞬間には豊満な胸にボフッと埋もれてしまう。現れた美女は逃げようとしたウルリカ様をあっさりと捕まえてしまったのだ。
「ウルリカ様だわぁ、生ウルリカ様だわぁ」
「ぐええ……苦しいのじゃ……」
彼女こそ魔界において大公爵と呼ばれる魔物の一角、“百獣”ヴァーミリア・アニマクロスである。
突然のヴァーミリア出現に周囲の人々はすっかり混乱状態だ。
「驚きましたわ、一体なにが起きましたの?」
「ウルリカさんの魔法が失敗したのでしょうか?」
「大変です、ウルリカ様が捕まってますっ」
「あらぁ?」
ヴァーミリアはウルリカ様を抱っこしたまま、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの三人へと血走った視線を送る。
「なんて可愛らしい子達! ウルリカ様と一緒に抱っこしちゃうわぁ!」
「「「ひっ!?」」」
なにやら興奮した様子のヴァーミリアは、グングンと腕を伸ばして三人をグルグル巻きにしてしまう。それはもはや腕というより海洋生物の触腕だ。
「「「きゃあぁー!?」」」
ヴァーミリアは豊満な肉体で四人をギュッと包み込む、四人は柔らかな肉に包まれて窒息寸前だ。しかし興奮したヴァーミリアは四人の状況にまったく気づいていない。
「うふふぅ、可愛いわぁ……可愛いわぁ……」
「むうぅ……ぷはぁ!」
ここでようやくウルリカ様はヴァーミリアの胸から顔を引きはがすことに成功する。
「こらヴァーミリア、妾の友達を窒息させる気か!」
「あらぁ?」
慌てて力を緩めるヴァーミリア。しかし気づいた時にはすでに手遅れ、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの三人は酸欠で目を回していたのである。
それから数刻、意識を取り戻したオリヴィア、シャルロット、ナターシャ、そしてウルリカ様とヴァーミリアは近くの喫茶店を訪れていた。
「さっきはごめんなさいねぇ、可愛らしい生き物を見るとギュッとしたくなっちゃうのよぉ」
「気にしないでくださいですわ、少しビックリしただけですの」
「ふふっ、シャルロットちゃんは優しいのねぇ」
五人は紅茶とお茶菓子を囲んでお喋りをしている、この短期間ですっかり仲よくなったようだ。
ちなみにウルリカ様だけはまったく楽しそうではない、ヴァーミリアの膝の上で居心地悪そうにチョコンと座っている。
「ところでヴァーミリアさん、先ほど腕が伸びていたように見えました。あれは私の気のせいでしょうか?」
「気のせいじゃないわよ、ほらぁ」
ヴァーミリアはグネグネと腕を伸ばして見せる、あらためて見ても凄まじい光景だ。
「ひぇ……どうしてヴァーミリア様は腕を伸ばせるのですか?」
「私はキマイラという種族なのよ、だから腕を伸ばせるのよぉ」
「「「キマイラ……?」」」
人間界では馴染みにのない“キマイラ”という単語に、三人はキョトンと首を傾げてしまう。
「ところでヴァーミリアよ、そろそろ魔界に帰ってはどうかのう?」
「それは酷いわウルリカ様、もっと一緒にいたいわぁ」
ヴァーミリアはプクッと頬を膨らませながら、ウルリカ様をギュッと抱きしめる。
「ぐぇ……しかしお主は時空間魔法の暴走に巻き込まれただけなのじゃ、特に用事はないのじゃ」
「あんまりだわぁ、少しくらい遊んでほしいわぁ」
そんな二人のやり取りを見て、シャルロットはつい口をはさんでしまう。
「そうですわね、ワタクシも少し可哀そうに思いますわよ」
「こんなにウルリカさんのことを好きなのに、あっさり帰してしまうのはちょっと……」
「今日はお休みなのですから、ご一緒に過ごされてはどうですか?」
「まあまあ、みんな優しいのねぇ!」
思わぬ援護射撃を受けて、ヴァーミリアはとても嬉しそうだ。
「そうですわ、今日は五人で城下町を回るというのはどうですの?」
「いいですねシャルロット様、きっと楽しいですよ!」
「ふふぅ、凄く嬉しいわぁ」
「うーむ……ならば少しだけじゃぞ?」
「やったわぁ!」
こうして魔界の大公ヴァーミリアを加え、ウルリカ様達は五人で休日を過ごすことになったのである。
一方そのころ──。
光の靄を払い除け、姿を現す声の主。
ウネウネと波打つ長い髪、鱗のような漆黒のドレス。蠱惑的であり、どこか野性的な雰囲気を漂わせる絶世の美女だ。
「しまったのじゃ、時空間魔法を暴走させてしまったのじゃ」
「その声はぁ……もしかしてウルリカ様!」
「げげっ、まさかヴァーミリア!?」
どういう訳か慌てて逃げ出そうとするウルリカ様、しかし──。
「逃がさないわよウルリカ様、抱っこよぉ!」
「ぐむぅー!?」
──次の瞬間には豊満な胸にボフッと埋もれてしまう。現れた美女は逃げようとしたウルリカ様をあっさりと捕まえてしまったのだ。
「ウルリカ様だわぁ、生ウルリカ様だわぁ」
「ぐええ……苦しいのじゃ……」
彼女こそ魔界において大公爵と呼ばれる魔物の一角、“百獣”ヴァーミリア・アニマクロスである。
突然のヴァーミリア出現に周囲の人々はすっかり混乱状態だ。
「驚きましたわ、一体なにが起きましたの?」
「ウルリカさんの魔法が失敗したのでしょうか?」
「大変です、ウルリカ様が捕まってますっ」
「あらぁ?」
ヴァーミリアはウルリカ様を抱っこしたまま、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの三人へと血走った視線を送る。
「なんて可愛らしい子達! ウルリカ様と一緒に抱っこしちゃうわぁ!」
「「「ひっ!?」」」
なにやら興奮した様子のヴァーミリアは、グングンと腕を伸ばして三人をグルグル巻きにしてしまう。それはもはや腕というより海洋生物の触腕だ。
「「「きゃあぁー!?」」」
ヴァーミリアは豊満な肉体で四人をギュッと包み込む、四人は柔らかな肉に包まれて窒息寸前だ。しかし興奮したヴァーミリアは四人の状況にまったく気づいていない。
「うふふぅ、可愛いわぁ……可愛いわぁ……」
「むうぅ……ぷはぁ!」
ここでようやくウルリカ様はヴァーミリアの胸から顔を引きはがすことに成功する。
「こらヴァーミリア、妾の友達を窒息させる気か!」
「あらぁ?」
慌てて力を緩めるヴァーミリア。しかし気づいた時にはすでに手遅れ、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの三人は酸欠で目を回していたのである。
それから数刻、意識を取り戻したオリヴィア、シャルロット、ナターシャ、そしてウルリカ様とヴァーミリアは近くの喫茶店を訪れていた。
「さっきはごめんなさいねぇ、可愛らしい生き物を見るとギュッとしたくなっちゃうのよぉ」
「気にしないでくださいですわ、少しビックリしただけですの」
「ふふっ、シャルロットちゃんは優しいのねぇ」
五人は紅茶とお茶菓子を囲んでお喋りをしている、この短期間ですっかり仲よくなったようだ。
ちなみにウルリカ様だけはまったく楽しそうではない、ヴァーミリアの膝の上で居心地悪そうにチョコンと座っている。
「ところでヴァーミリアさん、先ほど腕が伸びていたように見えました。あれは私の気のせいでしょうか?」
「気のせいじゃないわよ、ほらぁ」
ヴァーミリアはグネグネと腕を伸ばして見せる、あらためて見ても凄まじい光景だ。
「ひぇ……どうしてヴァーミリア様は腕を伸ばせるのですか?」
「私はキマイラという種族なのよ、だから腕を伸ばせるのよぉ」
「「「キマイラ……?」」」
人間界では馴染みにのない“キマイラ”という単語に、三人はキョトンと首を傾げてしまう。
「ところでヴァーミリアよ、そろそろ魔界に帰ってはどうかのう?」
「それは酷いわウルリカ様、もっと一緒にいたいわぁ」
ヴァーミリアはプクッと頬を膨らませながら、ウルリカ様をギュッと抱きしめる。
「ぐぇ……しかしお主は時空間魔法の暴走に巻き込まれただけなのじゃ、特に用事はないのじゃ」
「あんまりだわぁ、少しくらい遊んでほしいわぁ」
そんな二人のやり取りを見て、シャルロットはつい口をはさんでしまう。
「そうですわね、ワタクシも少し可哀そうに思いますわよ」
「こんなにウルリカさんのことを好きなのに、あっさり帰してしまうのはちょっと……」
「今日はお休みなのですから、ご一緒に過ごされてはどうですか?」
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思わぬ援護射撃を受けて、ヴァーミリアはとても嬉しそうだ。
「そうですわ、今日は五人で城下町を回るというのはどうですの?」
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