魔王様は学校にいきたい!
聖騎士、空を舞う
ロアーナの町、そしてロアーナ高原で激しい戦いが繰り広げられていたころ、ロアーナ要塞上空をワイバーンの群れが埋め尽くしていた。
「弓兵は全員、戦線に投入しました!」
「大砲も全て稼働しております! しかし砲弾の数が足りません!」
ロアーナ要塞はあらゆる対空戦力を総動員して防衛にあたっている。しかしワイバーンの数は尋常ではなく攻撃が追いつかない。
「エリザベス様! ご指示をお願いします!」
「硬くて丸ければなんでもいい! 撃ち出せそうなものは全部撃ってしまえ!」
「「「えぇっ!?」」」
ロアーナ要塞はロアーナ地方を守る最重要拠点である、なんとしてでも死守せねばならない。とはいえエリザベスの指示は突飛すぎている、よほど追い詰められているのだろう。
「他に撃ち出せるものはないのか……、壊れた鎧……台所の漬物石……栽培中のカボチャ……」
追い詰められすぎである。
「くそっ、このままではロアーナ要塞を落とされてしまう……」
「エリザベス様! エリザベス様ー!」
「スカーレットか、どうした?」
「倉庫の奥から古い投石機を見つけてきました!」
スカーレットの指差す先では、兵士達が数台の投石機を運んでいる。ずいぶん長く使われていなかったのだろう、動かす度にギシギシと音を立てている。
「今にも壊れてしまいそうだな、それでもないよりはマシか……」
「壊れたら破片をギュッと集めて、大砲でぶっ放してやりましょうよ!」
「ハッハッハッ、それはいい考えかもな! いや待てよ……」
「はい? どうかしましたか、エリザベス様?」
「投石機……撃ち出せそうなものは全部撃つ……」
エリザベスは運ばれてくる投石機を見ながら、じっと物思いにふける。そして──。
「スカーレットよ、いい作戦を思いついだぞ!」
そう言ってニヤリと不敵な笑みを浮かべるのだった。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
一方そのころ、聖騎士カイウスは最前線でレイピアを振るっていた。
「奥義、天空衝!」
「グオォォッ!?」
カイウスの奥義“天空衝”は、天高く伸びる突き技である。遠距離の攻撃手段を持つということで、最前線で戦っているのである。
「グルオォッ! グルオォッ!」
「くっ、次から次へと忌々しい!」
なかなか数の減らないワイバーンに、カイウスは思わず悪態をつく。とその時、カイウスの視界に異様な光景が飛び込んでくる。
「あれは……?」
ギシギシと音を立てながら、今にも壊れそうな投石器が運ばれてくるのだ。
サビだらけの留め具、折れかけの腕木、そして投石具の部分にしゃがみ込む人影。その光景を見たカイウスは、かつてないほどまん丸に目を見開く。
「なあぁっ!?」
カイウスが驚くのも無理はない。なにしろ投石具の部分、本来は投擲物を設置する部分にエリザベスがしゃがみ込んでいるのである。そして──。
「発射だーっ!!」
響き渡る号令、跳ねあがる投石機、そして飛んでいくエリザベス。なんとエリザベスは投石機を用いて、自らを空高く投擲させたのである。
「「「「「はあぁーっ!?」」」」」
あまりにもメチャクチャな行動に、カイウスは開いた口が塞がらない。というかその場にいたロアーナ兵は全員、開いた口が塞がらない。
「「「「「グアァーッ!?」」」」」
そしてワイバーンも開いた口が塞がらない。
なにしろ生身の人間が凄まじい勢いで飛んでくるのである、ワイバーンの群れは大混乱である。
「はあぁっ! 隙だらけだ!」
そんな大混乱などお構いなしに、エリザベスは空中で体を捻るとワイバーンへと斬りかかる。空中にいるとは思えない絶妙な身のこなしで、ワイバーンの首を一刀両断に切り落としてしまう。
「次だ!」
エリザベスはワイバーンの死体を踏み台に、近くを飛んでいた別のワイバーンへと飛びかかる。そして再びワイバーンの首を切り落とし、次のワイバーンへ飛びかかる。
その戦いっぷりを見て、地上にいたスカーレットは大興奮だ。
「流石エリザベス様です、凄すぎます! 私も負けてられませんね!」
「えっ、スカーレット?」
「私もいきます! たあぁぁっ!!」
「スカーレットォ!?」
いつも冷静なカイウスからは想像もつかない、素っとん狂な叫び声があがる。なんとスカーレットまでもが、投石機を用いて空へと飛びあがってしまったのである。
「スカーレット! よくきてくれたな!」
「エリザベス様一人で戦わせるわけにはいきません! 私も戦います!」
「よし! さっさとワイバーン共を片づけるぞ!」
「はいっ!」
エリザベスとスカーレットはバッサバッサとワイバーンを斬りまくる。それはもはや人間に可能な動きではない、人外といえども可能な動きではないだろう。
空を舞う聖騎士二人の活躍によって、ワイバーンの群れはあっという間に数を減らしていく。残り数体まで減らしたところで、エリザベスはスカーレットを呼び寄せる。
「スカーレット! こちらへこい!」
「はい!」
二人は一体のワイバーンに飛び乗ると、バッサリと首を切り落とす。そして落下するワイバーンにしがみつくと、そのまま地上へと落下してしまったのである。
顔面蒼白のカイウスは大慌てで駆け寄る。
「エリザベス様ー! スカーレットー!」
「おお、カイウス!」
「ただいまカイウス!」
カイウスの心配を余所に、二人はピンピンしていた。落下の衝撃をワイバーンの死体で和らげたのである。
「はぁ……まったく心配させないでください……」
「ハッハッハッ! 悪かったなカイウス、しかしワイバーンの群れは片づいただろう?」
エリザベスの言う通り、空を舞うワイバーンは残り数体まで減っている。もはや勝負はついたかに思われた、その時──。
「流石は聖騎士筆頭、とんでもない方法でワイバーンを倒してしまったな」
「なっ、何者だ!?」
「クククッ……さて、何者だろうな?」
不気味に響く男の声。
黒いローブに身を包んだ集団がロアーナ要塞を取り囲む、そして──。
「さあ蘇れ! ワイバーン共よ!」
男の指がパチンッと鳴る、と同時に死んでいたはずのワイバーンに異変が起こる。首を落とされているにもかかわらず、ローブの男達を乗せバサバサと飛びあがったのだ。
「バカな……」
ロアーナ要塞を、再びワイバーンの脅威が襲う。
そしてその様子を、一匹のコウモリがじっと観察していた。
「弓兵は全員、戦線に投入しました!」
「大砲も全て稼働しております! しかし砲弾の数が足りません!」
ロアーナ要塞はあらゆる対空戦力を総動員して防衛にあたっている。しかしワイバーンの数は尋常ではなく攻撃が追いつかない。
「エリザベス様! ご指示をお願いします!」
「硬くて丸ければなんでもいい! 撃ち出せそうなものは全部撃ってしまえ!」
「「「えぇっ!?」」」
ロアーナ要塞はロアーナ地方を守る最重要拠点である、なんとしてでも死守せねばならない。とはいえエリザベスの指示は突飛すぎている、よほど追い詰められているのだろう。
「他に撃ち出せるものはないのか……、壊れた鎧……台所の漬物石……栽培中のカボチャ……」
追い詰められすぎである。
「くそっ、このままではロアーナ要塞を落とされてしまう……」
「エリザベス様! エリザベス様ー!」
「スカーレットか、どうした?」
「倉庫の奥から古い投石機を見つけてきました!」
スカーレットの指差す先では、兵士達が数台の投石機を運んでいる。ずいぶん長く使われていなかったのだろう、動かす度にギシギシと音を立てている。
「今にも壊れてしまいそうだな、それでもないよりはマシか……」
「壊れたら破片をギュッと集めて、大砲でぶっ放してやりましょうよ!」
「ハッハッハッ、それはいい考えかもな! いや待てよ……」
「はい? どうかしましたか、エリザベス様?」
「投石機……撃ち出せそうなものは全部撃つ……」
エリザベスは運ばれてくる投石機を見ながら、じっと物思いにふける。そして──。
「スカーレットよ、いい作戦を思いついだぞ!」
そう言ってニヤリと不敵な笑みを浮かべるのだった。
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一方そのころ、聖騎士カイウスは最前線でレイピアを振るっていた。
「奥義、天空衝!」
「グオォォッ!?」
カイウスの奥義“天空衝”は、天高く伸びる突き技である。遠距離の攻撃手段を持つということで、最前線で戦っているのである。
「グルオォッ! グルオォッ!」
「くっ、次から次へと忌々しい!」
なかなか数の減らないワイバーンに、カイウスは思わず悪態をつく。とその時、カイウスの視界に異様な光景が飛び込んでくる。
「あれは……?」
ギシギシと音を立てながら、今にも壊れそうな投石器が運ばれてくるのだ。
サビだらけの留め具、折れかけの腕木、そして投石具の部分にしゃがみ込む人影。その光景を見たカイウスは、かつてないほどまん丸に目を見開く。
「なあぁっ!?」
カイウスが驚くのも無理はない。なにしろ投石具の部分、本来は投擲物を設置する部分にエリザベスがしゃがみ込んでいるのである。そして──。
「発射だーっ!!」
響き渡る号令、跳ねあがる投石機、そして飛んでいくエリザベス。なんとエリザベスは投石機を用いて、自らを空高く投擲させたのである。
「「「「「はあぁーっ!?」」」」」
あまりにもメチャクチャな行動に、カイウスは開いた口が塞がらない。というかその場にいたロアーナ兵は全員、開いた口が塞がらない。
「「「「「グアァーッ!?」」」」」
そしてワイバーンも開いた口が塞がらない。
なにしろ生身の人間が凄まじい勢いで飛んでくるのである、ワイバーンの群れは大混乱である。
「はあぁっ! 隙だらけだ!」
そんな大混乱などお構いなしに、エリザベスは空中で体を捻るとワイバーンへと斬りかかる。空中にいるとは思えない絶妙な身のこなしで、ワイバーンの首を一刀両断に切り落としてしまう。
「次だ!」
エリザベスはワイバーンの死体を踏み台に、近くを飛んでいた別のワイバーンへと飛びかかる。そして再びワイバーンの首を切り落とし、次のワイバーンへ飛びかかる。
その戦いっぷりを見て、地上にいたスカーレットは大興奮だ。
「流石エリザベス様です、凄すぎます! 私も負けてられませんね!」
「えっ、スカーレット?」
「私もいきます! たあぁぁっ!!」
「スカーレットォ!?」
いつも冷静なカイウスからは想像もつかない、素っとん狂な叫び声があがる。なんとスカーレットまでもが、投石機を用いて空へと飛びあがってしまったのである。
「スカーレット! よくきてくれたな!」
「エリザベス様一人で戦わせるわけにはいきません! 私も戦います!」
「よし! さっさとワイバーン共を片づけるぞ!」
「はいっ!」
エリザベスとスカーレットはバッサバッサとワイバーンを斬りまくる。それはもはや人間に可能な動きではない、人外といえども可能な動きではないだろう。
空を舞う聖騎士二人の活躍によって、ワイバーンの群れはあっという間に数を減らしていく。残り数体まで減らしたところで、エリザベスはスカーレットを呼び寄せる。
「スカーレット! こちらへこい!」
「はい!」
二人は一体のワイバーンに飛び乗ると、バッサリと首を切り落とす。そして落下するワイバーンにしがみつくと、そのまま地上へと落下してしまったのである。
顔面蒼白のカイウスは大慌てで駆け寄る。
「エリザベス様ー! スカーレットー!」
「おお、カイウス!」
「ただいまカイウス!」
カイウスの心配を余所に、二人はピンピンしていた。落下の衝撃をワイバーンの死体で和らげたのである。
「はぁ……まったく心配させないでください……」
「ハッハッハッ! 悪かったなカイウス、しかしワイバーンの群れは片づいただろう?」
エリザベスの言う通り、空を舞うワイバーンは残り数体まで減っている。もはや勝負はついたかに思われた、その時──。
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「なっ、何者だ!?」
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男の指がパチンッと鳴る、と同時に死んでいたはずのワイバーンに異変が起こる。首を落とされているにもかかわらず、ローブの男達を乗せバサバサと飛びあがったのだ。
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