魔王様は学校にいきたい!
襲来
魔物襲来の報せを受けて、ロアーナの町では避難が開始されていた。魔物の群れが迫っているというのに、住人達は慌てることなく避難先の屋敷を目指している。ヴィクトリア女王が自ら先頭に立ち、避難を呼びかけているからこそであろう。
そんな中、下級クラスの生徒達は未だ町に残っていた。
「シャルロット様、私達も早く避難しましょう!」
「でもワタクシは王族ですわ、王族であるワタクシが国民を置き去りにするわけには……」
「ヴィクトリア様から避難するよう言われたはずです、先生命令ですよ!」
必死に避難を促すナターシャ。しかしどうやらシャルロットは、住人を差し置いて避難することを躊躇っているようだ。
「お母様もお姉様達も、国民を守るために戦っていますわ。なのにワタクシは……」
「ふむ……ロティの気持ちは分かるのじゃ、しかし今は避難するべきかもしれんのじゃ」
黙って様子を見ていたウルリカ様は、避難を続ける住人達を指差す。よく見ると住人達は、横目でチラチラとシャルロットの様子を伺っているようだ。
「ほれ、住人達がロティを気にして避難し辛そうにしておるのじゃ」
「どうして……」
「王族であるロティを差し置いて避難しておるからじゃろうな。ロティが一緒に避難してやらねば、民は罪悪感を感じてしまうのじゃ」
「そう……分かりましたわ……」
ウルリカ様の説得で、シャルロットはようやく避難を開始する。その時──。
「きゃあぁぁっ!」
突如響き渡る女性の悲鳴。
避難を続ける住人達の背後からウルフが現れたのである。数頭の群れを成したウルフは、一斉に住人達へと襲いかかる。
「させません!」
「させるか!」
突然の事態にもかかわらず、ナターシャとシャルルの動きは早かった。ナターシャはヨグソードを引き抜くと、バッサリとウルフを切り捨てる。シャルルは猛烈な体当たりで、ウルフをまとめて吹き飛ばしてしまう。
「魔物は私達に任せて、早く逃げてください!」
「うぅ……でも足が……」
襲われた女性はウルフの爪で足を切り裂かれてしまったようだ、酷い切り傷のせいで立ちあがることが出来ない。
その間に撃退したはずのウルフが、血をダラダラと流しながら再び襲いかかってくる。
「グルルゥ……」
「そんな! どうしてあの傷で動けるのですか!?」
「落ちついてくださいナターシャさん、あれはアンデットと呼ばれる不死の魔物です」
少し遅れて駆けつけたヘンリーは、一瞬にして魔物の正体を看破する。現れた魔物はただの魔物ではなく、アンデットと呼ばれる特殊な魔物のようだ。
「アンデットは通常の攻撃では倒せません、シャルルとナターシャさんは魔物を足止めすることに専念してください!」
「分かりました! やあぁっ!」
「うおぉっ! 筋力増強魔法だ、はあぁっ!!」
「アンデットには治癒魔法が効果的です、オリヴィアさんお願いします! ベッポはケガ人の避難を頼みます!」
「分かった! ケガをした住人の避難は任せろ!」
「治癒魔法は任せてください、デモヒール!」
この危機的な状況下において、下級クラスの生徒達は見事な動きを見せた。
各々が即座に役割を理解し、速やかに行動する。何度も厳しい戦いを経験してきたことで、全員が大きく成長しているのである。
「うむ! 素晴らしい連携じゃな!」
「そ……そうですわね……」
クラスメイトの活躍を見守りながら、ウルリカ様はうんうんと頷いている。
一方シャルロットの表情は浮かないものだ。シャルロットは自分だけが動けていないことを気に病んでいるようである。そこへ──。
「あなた達、まだこんな所にいたの!?」
ヴィクトリア女王とスカーレット、そして数人の兵士が、魔物に追われながら走ってきたのである。
ウルフの群れに巨大なオーク、どの魔物も全身から血を流しながら迫ってくる。どうやらロアーナの町を襲っている魔物は、全てアンデットと化しているようだ。
「ここは私が食い止めます! みなさんは早く避難してください!」
「自分達も戦うぞ、ヴィクトリア様をお守りするだ!」
「「「「「おうっ!」」」」」
住人達を避難させるため激しい戦いを繰り広げてきたのだろう、兵士達はすっかりボロボロである。鎧を着ていないスカーレットにいたっては、全身傷だらけで今にも倒れてしまいそうだ。
しかしスカーレットと兵士達は、果敢にも魔物へと立ち向っていく。
「さあみんな、早く避難するのよ!」
「でもお母様! 傷だらけのスカーレット達を置いてはいけませんわ!」
「ダメよシャルロット! 今は早く──」
「ヴォオオォッ!」
ヴィクトリア女王の言葉は轟く鳴き声にかき消されてしまう。一体のオークが兵士達の防衛を突破し、シャルロットへと襲いかかったのだ。
「きゃあぁっ!?」
「させないわよ!」
ヴィクトリア女王は身を挺してシャルロットをかばおうとする、しかし華奢なヴィクトリア女王ではオークの攻撃を防げるはずもない。巨大なオークの腕がヴィクトリア女王の眼前へと迫り──。
「そこまでじゃ!」
間一髪で割って入ったウルリカ様は、片手で軽々とオークの腕を止めてしまう。
「妾の大切な友達を……大好きな先生を傷つけることは許さんのじゃ……!」
その瞳に、怒りの炎が静かに灯る。
そんな中、下級クラスの生徒達は未だ町に残っていた。
「シャルロット様、私達も早く避難しましょう!」
「でもワタクシは王族ですわ、王族であるワタクシが国民を置き去りにするわけには……」
「ヴィクトリア様から避難するよう言われたはずです、先生命令ですよ!」
必死に避難を促すナターシャ。しかしどうやらシャルロットは、住人を差し置いて避難することを躊躇っているようだ。
「お母様もお姉様達も、国民を守るために戦っていますわ。なのにワタクシは……」
「ふむ……ロティの気持ちは分かるのじゃ、しかし今は避難するべきかもしれんのじゃ」
黙って様子を見ていたウルリカ様は、避難を続ける住人達を指差す。よく見ると住人達は、横目でチラチラとシャルロットの様子を伺っているようだ。
「ほれ、住人達がロティを気にして避難し辛そうにしておるのじゃ」
「どうして……」
「王族であるロティを差し置いて避難しておるからじゃろうな。ロティが一緒に避難してやらねば、民は罪悪感を感じてしまうのじゃ」
「そう……分かりましたわ……」
ウルリカ様の説得で、シャルロットはようやく避難を開始する。その時──。
「きゃあぁぁっ!」
突如響き渡る女性の悲鳴。
避難を続ける住人達の背後からウルフが現れたのである。数頭の群れを成したウルフは、一斉に住人達へと襲いかかる。
「させません!」
「させるか!」
突然の事態にもかかわらず、ナターシャとシャルルの動きは早かった。ナターシャはヨグソードを引き抜くと、バッサリとウルフを切り捨てる。シャルルは猛烈な体当たりで、ウルフをまとめて吹き飛ばしてしまう。
「魔物は私達に任せて、早く逃げてください!」
「うぅ……でも足が……」
襲われた女性はウルフの爪で足を切り裂かれてしまったようだ、酷い切り傷のせいで立ちあがることが出来ない。
その間に撃退したはずのウルフが、血をダラダラと流しながら再び襲いかかってくる。
「グルルゥ……」
「そんな! どうしてあの傷で動けるのですか!?」
「落ちついてくださいナターシャさん、あれはアンデットと呼ばれる不死の魔物です」
少し遅れて駆けつけたヘンリーは、一瞬にして魔物の正体を看破する。現れた魔物はただの魔物ではなく、アンデットと呼ばれる特殊な魔物のようだ。
「アンデットは通常の攻撃では倒せません、シャルルとナターシャさんは魔物を足止めすることに専念してください!」
「分かりました! やあぁっ!」
「うおぉっ! 筋力増強魔法だ、はあぁっ!!」
「アンデットには治癒魔法が効果的です、オリヴィアさんお願いします! ベッポはケガ人の避難を頼みます!」
「分かった! ケガをした住人の避難は任せろ!」
「治癒魔法は任せてください、デモヒール!」
この危機的な状況下において、下級クラスの生徒達は見事な動きを見せた。
各々が即座に役割を理解し、速やかに行動する。何度も厳しい戦いを経験してきたことで、全員が大きく成長しているのである。
「うむ! 素晴らしい連携じゃな!」
「そ……そうですわね……」
クラスメイトの活躍を見守りながら、ウルリカ様はうんうんと頷いている。
一方シャルロットの表情は浮かないものだ。シャルロットは自分だけが動けていないことを気に病んでいるようである。そこへ──。
「あなた達、まだこんな所にいたの!?」
ヴィクトリア女王とスカーレット、そして数人の兵士が、魔物に追われながら走ってきたのである。
ウルフの群れに巨大なオーク、どの魔物も全身から血を流しながら迫ってくる。どうやらロアーナの町を襲っている魔物は、全てアンデットと化しているようだ。
「ここは私が食い止めます! みなさんは早く避難してください!」
「自分達も戦うぞ、ヴィクトリア様をお守りするだ!」
「「「「「おうっ!」」」」」
住人達を避難させるため激しい戦いを繰り広げてきたのだろう、兵士達はすっかりボロボロである。鎧を着ていないスカーレットにいたっては、全身傷だらけで今にも倒れてしまいそうだ。
しかしスカーレットと兵士達は、果敢にも魔物へと立ち向っていく。
「さあみんな、早く避難するのよ!」
「でもお母様! 傷だらけのスカーレット達を置いてはいけませんわ!」
「ダメよシャルロット! 今は早く──」
「ヴォオオォッ!」
ヴィクトリア女王の言葉は轟く鳴き声にかき消されてしまう。一体のオークが兵士達の防衛を突破し、シャルロットへと襲いかかったのだ。
「きゃあぁっ!?」
「させないわよ!」
ヴィクトリア女王は身を挺してシャルロットをかばおうとする、しかし華奢なヴィクトリア女王ではオークの攻撃を防げるはずもない。巨大なオークの腕がヴィクトリア女王の眼前へと迫り──。
「そこまでじゃ!」
間一髪で割って入ったウルリカ様は、片手で軽々とオークの腕を止めてしまう。
「妾の大切な友達を……大好きな先生を傷つけることは許さんのじゃ……!」
その瞳に、怒りの炎が静かに灯る。
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