魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

懲りない二人

 戦いの爪跡残る、ロームルス学園の校庭。
 着々と進む復興の様子を、ラヴレス副学長とハインリヒは、静かに眺めていた。

「ラヴレス副学長……」

「どうしましたか?」

「私は……悔しいですよ……」

 グッとこぶしを握りしめるハインリヒ。下を向き、肩を震わせ、表情はもの凄く悔しそうだ。

「今回の戦い、活躍したのは下級クラスの連中です……」

「確かにその通りですね」

「私達はなにも出来なかった……それを思うと、悔しくて……!」

「気持ちは分かりますよ、私も悔しく思って……うぅっ」

 話の途中にもかかわらず、ラヴレス副学長はその場から飛びのいてしまう。そしてどういうわけか、じりじりとハインリヒから距離をとる。
 よく見ると両手で鼻を押さえ、もの凄く苦しそうだ。

「……まだ私は臭いですか……?」

「いえ……まあ……そうですね……かなり臭いですよ……」

 先日の戦いで、悪魔の兵器“超激臭、魔物避け爆弾”の直撃を受けてしまったハインリヒ。
 なんと戦いから二日経った現在も、全身から激臭をまき散らしているのである。

「悔しいです……凄く……」

「ええ……そうですね……」

 悔しさのあまり目に涙を浮かべるハインリヒと、臭さのあまり目に涙を浮かべるラヴレス副学長。
 いたたまれない空気の中、ラヴレス副学長は「コホンッ」と咳払いをして、無理やり話題を切り替える。

「しかし、私は諦めてはいませんよ。我々ロームルス学園の力こそ、なによりも優れていると、いつか必ず証明して見せます」

「……副学長!」

 ラヴレス副学長の力強い言葉に、ハインリヒも表情を明るくさせる。

「今回は失態をさらしました。しかし今回の反省を活かして、次こそ我々の力を──」

「あっ……副学長……」

「ん? ハインリヒ、どうかしましたか?」

「……ラヴレス副学長……ハインリヒ……ずいぶんと楽しそうですな?」

 背後からの声に、ギクリッと肩を震わせるラヴレス副学長。
 ゆっくり後ろを振り向くと、ニコニコと微笑む一人の老人が立っている。

「ノ……ノイマン学長……」

「爺様……」

「二人とも……あれだけの失態を晒しておいて……まだ懲りていないのですかな?」

 ゴゴゴッと音を立てながら、ノイマン学長は二人へにじり寄っていく。
 顔こそ笑ってはいるものの、明らかに怒っている気配だ。

「待ってください爺様! 誤解です、勘違いです!」

「今のは言葉のあやですよ、決してよからぬことを考えているわけでは──」

「言いわけ無用! どうやら二人とも、教育の必要がありそうですな。こうなったら、徹底的に再教育してやりますかな」

「「ひいぃっ!?」」

 こうして、ロームルス学園の校庭に、懲りない二人の哀れな叫びがこだまするのだった。

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