魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

本物の鬼

 発動する時空間魔法。
 現れる大量の魔法陣。

 重なりあう魔法陣は、光の柱となって周囲を眩く照らす。

 ──ズズンッ!!──。

「きゃあぁぁっ、なんですの!?」

 光の柱を中心に激震が走る。
 パラテノ森林全域を震わせる、激しい衝撃だ。

 薄れていく光の柱。舞いあがる土埃。
 その中を、ゆっくりと黒い影が立ちあがる。

「む……ここは?」

「うまく呼び出せたようじゃな!」

「その声! まさかウルリカ様!!」

 特徴的な黒い瞳と髪。
 そして、額から伸びる二本の角。

「うむ! 久しぶりじゃな、ジュウベエよ!」

 彼こそ、魔界を統べる大公爵の一人。
 “悪鬼”ジュウベエ・ヤツセである。

「ここは人間界か? ウルリカ様、俺を人間界に召喚してくれたのか!!」

「うむ! その通りじゃ!」

 「おぉ!」と声を漏らし、感動に打ち震えるジュウベエ。

「もしかして! 俺に会いたくなって、それで召喚してくれたのか!!」

「うむ! それは違うのじゃ!」

 「おぉ……」と声を漏らし、ズーンッと落ち込んでしまうジュウベエ。
 ウルリカ様はピョンと飛びあがり、ジュウベエの頭をポンポンと撫でてあげる。

 和やかな雰囲気のウルリカ様とジュウベエ。
 そんな二人とは正反対に、エリザベスは顔を真っ青にしている。

「なんだ……この生き物は……こんな生き物が……この世に存在していいのか……」

 ジュウベエの発する強大な気配に気圧されてるのだ。
 オニマルも刀を構えたまま、じっと動けずにいる。

「それでウルリカ様、どうして俺を呼んでくれたのです?」

「ほれ、あれじゃ」

 ウルリカ様はオニマルを指差す。

「あれは?」

「オニマルという魔物なのじゃ」

「オニマルですか……まるで鬼のような魔物ですね」

 スッと目を細めるジュウベエ。
 たったそれだけで威圧感は何倍にも膨れあがり、オニマルの体をビクリと震わせる。

「どうやらオニマルは本物の鬼になりたいようなのじゃ、しかし妾では鬼にはしてやれんのじゃ」

「なるほど、それで本物の鬼である俺の出番というわけですね」

「そういうことじゃな!」

 ウルリカ様は大きく頷く。

「それともう一つ、ジュウベエを呼んだ理由があるのじゃ」

 「もう一つ?」と首をかしげるジュウベエ。

「オニマルは剣豪の魔物なのじゃ……ジュウベエの大好物じゃろう?」

 剣豪と聞き、ジュウベエはニヤリと笑う。

「剣豪……クククッ、大好物です……!」

「うむ! ではオニマルはジュウベエに任せるのじゃ」

 そう言うとウルリカ様は、森の奥へと視線を移す。
 ジュウベエの肩をポンと叩いて、スタスタと歩き出してしまう。

「なにやら苦しんでおるようじゃからな、早めに楽にしてやるのじゃぞ」

「ウルリカ様? どちらに行かれるので?」

「うむ、妾は別の用事じゃ」

 体を霧に変化させるウルリカ様。
 森の暗がりと混じりあい、闇へと溶ける霧の体。

「ジュウベエよ、鬼になりたいオニマルに、本物の鬼の力を見せてやるのじゃ!」

「クククッ……承知しました!!」

 嬉々として返事をしたジュウベエは、そっと腰の刀へ手をかける。

「では……いざ!」

 そして、本物の鬼がその刃を抜く。

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