魔王様は学校にいきたい!
初登校!
どんよりと雲のかかった空の下。
横並びになって歩く、紺色の制服を着た三人の生徒。
シャルロット、ナターシャ、そしてウルリカ様の三人である。
ついでにオリヴィアも一緒だ。
「初登校じゃ~! 嬉しいのじゃ~!!」
今日はウルリカ様の初登校、そして初授業の日だ。
通学用の鞄を持って、パタパタと走り回るウルリカ様。
「そこのお主~! 妾は今日、初授業を受けるのじゃぞ!」
「あ……そうなの……」
「そこのお主よ! 妾の鞄はどうじゃ? 似合っておるか?」
「ええ……そうね……」
道行く生徒をつかまえては、グイグイと話しかけている。
とてつもなく楽しそうな様子だ。
「ウルリカ様、待ってください! 落ちついてください!」
慌ててあとを追いかけるオリヴィア。
はしゃいで回るウルリカ様を、なんとか捕まえることに成功する。
「ほら、クッキーをあげますから、大人しくしてください」
「あむむ……ポリポリ……美味しいのじゃ……ポリポリ……」
クッキーをほおばって、ウルリカ様はようやく大人しくなる。
「ウルリカさん、とても楽しそうですね!」
「ええ、だけどオリヴィアは大変そうだわ」
ワイワイと騒ぎながら、四人は校舎に向かって歩いていく。
間もなく校舎に到着という辺りで、不意に背後から呼び止められる。
「おいっ、そこの下級クラス共!」
「はい? なにかしら?」
くるりと振り返るシャルロットとナターシャ。
振り返った先には、白い制服を着た三人の生徒が立っていた。
男子生徒が一人と、女子生徒が二人だ。
白い制服の生徒達に気づいて、ウルリカ様も駆け寄ってくる。
「おはようなのじゃ! お主は……ポリポリ……同じクラスではなさそうじゃな……ポリポリ……」
「ふんっ、下級クラスなんかと一緒にするな」
そっけない態度で話す、白い制服を着た男子生徒。
スラリとした高身長に、綺麗に整った顔つき。髪はサラサラの金髪で、まるで王子様のような見た目をしている。
「貴様、下級クラスのくせに、ずいぶんと態度が悪いな」
「ふむ、そうかのう? ポリポリ……」
「生徒会長である私に、そんな態度をとっていいと思っているのか?」
「そう言われても、お主のことを知らんのじゃ。ポリポリ……」
「なに? 私のことを知らないだと?」
「うむ、まったく知らぬ!」
きっぱりと言い切るウルリカ様。
すると、二人の女生徒は一斉に抗議の声をあげる。
「ちょっとあなた! ハインリヒ様に対して、無礼すぎるわよ!」
「ハインリヒ様を知らないですって? 下級クラスのくせに、信じられないわ!」
キーキーとやかましく騒ぐ女生徒達。
ハインリヒと呼ばれた少年は、スッと片手をあげて女生徒達を大人しくさせる。
「落ちつきたまえ、しょせんは下級クラスの言うことだ」
そして、ウルリカ様へと自己紹介をする。
「では、無知な少女に名乗っておこうか。私の名はハインリヒ。ロームルス学園の生徒会で、生徒会長を務めている」
「ハインリヒじゃな! 妾はウルリカじゃ、よろしくなのじゃ!」
自己紹介をしながら、ウルリカ様はコクリと首をかしげる。
「ところで、生徒会とはなんじゃ?」
「そんなことも知らないのか? 流石は下級クラス、頭の作りも下級だな」
「知らんのじゃ! ポリポリ……」
「まあいい、なにも知らない哀れな少女に、私から直々に教えてやろう」
「頼むのじゃ! ポリポリ……」
嫌味たっぷりなハインリヒの言葉。
しかし、ウルリカ様にはまったく通用しない。
クッキーをポリポリ、いつも通りのマイペースだ。
「生徒会とは、ロームルス学園の生徒による自治組織だ。上級クラスの中でも、さらに優秀な生徒のみ加入を許される、特別な組織なのだ」
「ふむふむ……ポリポリ……」
「生徒の自主性を重んじるロームルス学園において、生徒会の権力は非常に大きい。時には教師以上の権力を持つこともある。私はそこの会長を務めているのだ」
「ほうほう……ポリポリ……」
「つまり私こそ、ロームルス学園の全生徒の頂点に立つ者……って、おい! ちゃんと話を聞いているのか?」
「もちろん聞いておったのじゃ。おっと、最後のクッキーじゃ……」
「なんだこいつは……私の凄さを分かっていないのか?」
自信満々に話をしていたハインリヒ。
しかし、ウルリカ様のマイペースさに肩透かしを食ってしまう。
「ふんっ、まあいい。今日は生徒会の説明をしに来たわけではないからな」
そう言うと、ハインリヒは制服の内側から一枚の紙を取り出す。
「さて、本題に入ろう」
「それは……なんですの?」
「学園から下級クラスへの通知書だ」
「通知書? なんと書いてあるのじゃ?」
「気になるか? では読みあげてやろう……」
ハインリヒは、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
そして、周囲にも聞こえるよう、大きな声で読みあげる。
「今年の下級クラスは、全授業を中止とする!」
「ほう……全授業を中止……」
読みあげられた通知の内容。
シンッと沈黙が流れ──。
「なっ、なんじゃと~!?」
曇り空に響く、ウルリカ様の絶叫。
登校初日、いきなり暗雲が立ち込めるのだった。
横並びになって歩く、紺色の制服を着た三人の生徒。
シャルロット、ナターシャ、そしてウルリカ様の三人である。
ついでにオリヴィアも一緒だ。
「初登校じゃ~! 嬉しいのじゃ~!!」
今日はウルリカ様の初登校、そして初授業の日だ。
通学用の鞄を持って、パタパタと走り回るウルリカ様。
「そこのお主~! 妾は今日、初授業を受けるのじゃぞ!」
「あ……そうなの……」
「そこのお主よ! 妾の鞄はどうじゃ? 似合っておるか?」
「ええ……そうね……」
道行く生徒をつかまえては、グイグイと話しかけている。
とてつもなく楽しそうな様子だ。
「ウルリカ様、待ってください! 落ちついてください!」
慌ててあとを追いかけるオリヴィア。
はしゃいで回るウルリカ様を、なんとか捕まえることに成功する。
「ほら、クッキーをあげますから、大人しくしてください」
「あむむ……ポリポリ……美味しいのじゃ……ポリポリ……」
クッキーをほおばって、ウルリカ様はようやく大人しくなる。
「ウルリカさん、とても楽しそうですね!」
「ええ、だけどオリヴィアは大変そうだわ」
ワイワイと騒ぎながら、四人は校舎に向かって歩いていく。
間もなく校舎に到着という辺りで、不意に背後から呼び止められる。
「おいっ、そこの下級クラス共!」
「はい? なにかしら?」
くるりと振り返るシャルロットとナターシャ。
振り返った先には、白い制服を着た三人の生徒が立っていた。
男子生徒が一人と、女子生徒が二人だ。
白い制服の生徒達に気づいて、ウルリカ様も駆け寄ってくる。
「おはようなのじゃ! お主は……ポリポリ……同じクラスではなさそうじゃな……ポリポリ……」
「ふんっ、下級クラスなんかと一緒にするな」
そっけない態度で話す、白い制服を着た男子生徒。
スラリとした高身長に、綺麗に整った顔つき。髪はサラサラの金髪で、まるで王子様のような見た目をしている。
「貴様、下級クラスのくせに、ずいぶんと態度が悪いな」
「ふむ、そうかのう? ポリポリ……」
「生徒会長である私に、そんな態度をとっていいと思っているのか?」
「そう言われても、お主のことを知らんのじゃ。ポリポリ……」
「なに? 私のことを知らないだと?」
「うむ、まったく知らぬ!」
きっぱりと言い切るウルリカ様。
すると、二人の女生徒は一斉に抗議の声をあげる。
「ちょっとあなた! ハインリヒ様に対して、無礼すぎるわよ!」
「ハインリヒ様を知らないですって? 下級クラスのくせに、信じられないわ!」
キーキーとやかましく騒ぐ女生徒達。
ハインリヒと呼ばれた少年は、スッと片手をあげて女生徒達を大人しくさせる。
「落ちつきたまえ、しょせんは下級クラスの言うことだ」
そして、ウルリカ様へと自己紹介をする。
「では、無知な少女に名乗っておこうか。私の名はハインリヒ。ロームルス学園の生徒会で、生徒会長を務めている」
「ハインリヒじゃな! 妾はウルリカじゃ、よろしくなのじゃ!」
自己紹介をしながら、ウルリカ様はコクリと首をかしげる。
「ところで、生徒会とはなんじゃ?」
「そんなことも知らないのか? 流石は下級クラス、頭の作りも下級だな」
「知らんのじゃ! ポリポリ……」
「まあいい、なにも知らない哀れな少女に、私から直々に教えてやろう」
「頼むのじゃ! ポリポリ……」
嫌味たっぷりなハインリヒの言葉。
しかし、ウルリカ様にはまったく通用しない。
クッキーをポリポリ、いつも通りのマイペースだ。
「生徒会とは、ロームルス学園の生徒による自治組織だ。上級クラスの中でも、さらに優秀な生徒のみ加入を許される、特別な組織なのだ」
「ふむふむ……ポリポリ……」
「生徒の自主性を重んじるロームルス学園において、生徒会の権力は非常に大きい。時には教師以上の権力を持つこともある。私はそこの会長を務めているのだ」
「ほうほう……ポリポリ……」
「つまり私こそ、ロームルス学園の全生徒の頂点に立つ者……って、おい! ちゃんと話を聞いているのか?」
「もちろん聞いておったのじゃ。おっと、最後のクッキーじゃ……」
「なんだこいつは……私の凄さを分かっていないのか?」
自信満々に話をしていたハインリヒ。
しかし、ウルリカ様のマイペースさに肩透かしを食ってしまう。
「ふんっ、まあいい。今日は生徒会の説明をしに来たわけではないからな」
そう言うと、ハインリヒは制服の内側から一枚の紙を取り出す。
「さて、本題に入ろう」
「それは……なんですの?」
「学園から下級クラスへの通知書だ」
「通知書? なんと書いてあるのじゃ?」
「気になるか? では読みあげてやろう……」
ハインリヒは、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
そして、周囲にも聞こえるよう、大きな声で読みあげる。
「今年の下級クラスは、全授業を中止とする!」
「ほう……全授業を中止……」
読みあげられた通知の内容。
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