魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

合格発表とクラス分け

 入学試験から数日後。
 ロームルス学園の校庭に、多くの若者が集まっていた。
 入学試験を受けた受験生達である。

「やった! 合格だ!!」

「そんな……名前がない……」

「上級クラスだ! 見てくれ、上級クラスだー!!」

 この日行われているのは、入学試験の合否発表、およびクラス分けだ。
 掲示板に大きな紙が張り出され、合格者の名前とクラスが発表されている。

 試験結果を見て、一喜一憂する受験生達。
 そこへ、ウルリカ様もやってくる。

「あそこじゃ! 楽しみなのじゃ!!」

「待ってください、ウルリカ様!」

 パタパタ走るウルリカ様と、慌てて追いかけるオリヴィア。
 後ろからシャルロットとナターシャが、ゆっくりとついてくる。

「ううぅ……緊張します……」

「ナターシャなら大丈夫よ、自信をもって」

「ロティ! サーシャ! 早く来るのじゃ!!」

 掲示板の前に立ち、四人そろって結果を確認する。

「ふむ……“上級クラス”、“一般クラス”、“下級クラス”? これはなんじゃ?」

「試験の成績に応じて、クラス分けをされるのですよ。上級クラスは上位二割の優等生です」

「ふむふむ」

「一般クラスはその他の七割です、いわゆる普通の学生ですね」

「ということは、下位の一割は下級クラスかの?」

「その通りです。合格ギリギリだった者は、下級クラスで入学出来ます……ただし……」

 オリヴィアは少し言い辛そうにする。

「下級クラスに入ってしまうと、学園内で冷遇されてしまうのです。教室や寮はボロボロで、他の生徒からいびられたりするそうです……」

「なるほどの、よく分かったのじゃ!」

 一通りの説明を受けたウルリカ様。
 下級クラスの扱いについては、まったく気にしていない様子だ。 
 身を乗り出して試験結果を確認している。

「おぉっ、ロティは上級クラスじゃ! 凄いではないか!!」

「ええ、ありがとうですわ……」

 シャルロットは照れくさそうに、ほっぺたに手を当てる。
 顔を赤らめて嬉しそうだ。

「次は一般クラスじゃな、ナターシャの名前があるのじゃ!」

「はぁ……合格してました、よかったですぅ……」

「はて、妾の名前はどこに……」

「あっ、あそこです」

 オリヴィアの指差す先に、ウルリカ様の名前が記されている。
 クラス分けには、下級クラスと記されている。

「見つけたのじゃ! 妾は下級クラスじゃな!!」

 下級クラスと聞いて、周囲の受験生達は冷たい目を向ける。
 しかし、ウルリカ様はそんな目をまったく気にしない。

「やったのじゃ! ちゃんと合格しておったのじゃ~!!」

「ウルリカ様、下級クラスでいいのですか?」

「合格には違いないのじゃ!」

 マイペースなウルリカ様を見て、オリヴィアはホっと息をつく。
 そこへ、一人の老人がやってくる。

「これ! お主等はこれから、我が校の生徒になるのですな。あまり下品に騒ぐものではないですな」

「ノイマン学長!」

「賢者様だわ!」

 ノイマン学長の登場に、歓声をあげる受験生達。
 受験生達にとって、賢者と呼ばれるノイマン学長は、憧れの的なのである。

「まったく、騒いでいる生徒はどこの誰ひええぇぇっ!? ウルリカ様あぁ!!」

 ウルリカ様を発見して、奇声をあげるノイマン学長。
 ノイマン学長にとって、ウルリカ様は神にも近い、崇拝の対象なのである。

「申し訳ございません! 申し訳ございません!! 試験結果については色々と協議したのですが、下級クラスということに……」

 誰になにを言われたわけでもないのに、ノイマン学長はビターンと地面に張りついて謝っている。
 その不穏な雰囲気に、心配そうな表情を浮かべるウルリカ様。

「なんじゃ? もしや……妾は学校にいけないのか?」

「いえいえ! もちろん通っていただけます、下級クラスというだけで……」

「ならば問題ないのじゃ! ありがとうなのじゃっ」

 ポンポンと、ノイマン学長の頭をなでるウルリカ様。

「ふおおぉっ!! なんという寛大なお心! 優しさ! 女神様じゃぁ~」

 賢者と呼ばれ、尊敬を集めるノイマン学長。
 その学長が、たった一人の少女にひれ伏している。
 完全な異常事態だ。

 そんな中、さらなる異常事態が発生する。

「ノイマン学長! ワタクシも下級クラスに入れてください!!」

 「はぁ!?」と声をあげる受験生達。
 王族であるシャルロットが、上級クラスで合格しているのに、わざわざ底辺である下級クラスを希望したのだ。
 そしてさらに──。

「私も! 私も下級クラスがいいです!!」

 パッと手を上げるナターシャ。
 上級クラスや一般クラスの合格者が、下級クラスを希望する、という異常事態。
 受験生達は、思考停止で固まってしまっている。

 言われたノイマン学長も困った様子だ。

「なぜ下級クラスを? そもそもクラスの変更は出来ないのですな……」

「でも! ワタクシはウルリカと一緒のクラスに通いたいのですわ。お友達ですもの!」

「私もです! ウルリカさんとはお友達です!!」

 話を聞いていたウルリカ様は、ピョーンと跳ねて喜ぶ。

「本当か! 嬉しいのじゃ!! ロティもサーシャも一緒のクラスじゃ~」

「いえいえウルリカ様、クラスの変更は不可能で……」

「ダメなのか? それは残念じゃ……しかし決まりならば仕方ないのじゃ……」

 ショボンと落ち込むウルリカ様。
 眉を八の字にして、とても残念そうだ。
 それを見たノイマン学長は、勢いよく掲示板に飛びかかる。

「滅相もございません! 直ちにクラス分けを貼り直しますぅ!!」

 バリバリィッと、合格発表の紙を破り捨てるノイマン学長。
 もはや老人の動きではない。

「よいのか? 本当じゃな? ノイマンは優しいのじゃ!!」

 ひれ伏すノイマン学長の頭を、ポンポンとなでるウルリカ様。
 ノイマン学長は、震えながら涙を流している。

「ふおおぉっ! ウルリカ様ぁ~」

 こうして、異様な雰囲気の中、クラス分けが決まったのだった。

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