魔王様は学校にいきたい!
実技演習 ~魔法編~
ウルリカ様が人間界に転移した翌日。
快晴の空の下、ここはロームルス城の兵士訓練場。
「うむ、いい天気じゃ!」
「はい……そうですね……」
ご機嫌な笑顔のウルリカ様と、緊張した表情のオリヴィア。
そして……。
「ハッハッハッ! 確かにいい天気だな!!」
「はぁ……なぜ俺が……」
豪快な笑い声をあげるゼノン王と、深いため息をつく聖騎士のゴーヴァン。
広い訓練場に、四人だけがポツンと立っている。
「あの……国王陛下、質問してもよろしいでしょうか?」
「どうしたオリヴィア、申してみよ」
「なぜ国王陛下がここにおられるのですか?」
「試験に向けてウルリカが事前演習をすると聞いたのでな、友達として応援しに来たのだ」
「おお! 嬉しいぞゼノン、流石は妾の友達じゃな!!」
「なに、当たり前のことだ。ハッハッハッ!」
無邪気に喜ぶウルリカ様と、豪快に笑うゼノン王。
楽しそうな魔王様と国王様だ。
「えっと……ではゴーヴァン様はなぜここに?」
「国王陛下を一人にするわけにはいかない……護衛だ……」
そっぽを向いたまま、沈んだ声でオリヴィアの問いに答えるゴーヴァン。
「まったく……なぜ俺が……他にも護衛は沢山いるだろうに……」
不機嫌なゴーヴァンの肩を、ゼノン王がバシバシと叩く。
「そう言うなゴーヴァン。お前はウルリカの事情を知っているからな、都合が良かったのだ」
「ええ……理解はしていますが……」
「さてウルリカ、訓練場で演習ということは実技の演習だな?」
「知らぬのじゃ! リヴィに任せておる!!」
「おぉ……知らないのか……」
「うむ、全く知らぬ! ポリポリ……」
自信満々に答えるウルリカ様。
自分の演習だというのに、夢中で缶に入ったクッキーをほおばっている。
呑気なウルリカ様の様子に、ゼノン王とオリヴィアはそろって頭を抱えてしまう。
「本日は魔法と剣術の実技演習ですよ、ウルリカ様にも昨日説明したじゃないですか」
「うーむ……そんなことを言っておったかのう」
「ちゃんと聞いてて下さいよ……ではもう一度説明しますね」
コホンッと咳払いをするオリヴィア。
「ロームルス学園の入学試験は、筆記・魔法実技・剣術実技・実地での魔物討伐、の四種目です。今日はそのうちの魔法実技と剣術実技の演習をします」
「なるほど、筆記は常識問題だから置いておくとして、懸念は魔法と剣術、そして実地試験というわけか」
「ゴーヴァン様のおっしゃる通りです。ウルリカ様は魔王様だと伺いましたが、実力が未知数でして……演習をしておいた方がよいと思いました」
そう言ってオリヴィアは、片手に収まる小さな杖を取り出す。
キョトンとするウルリカ様に、小さな杖が手渡される。
「では早速はじめましょうか。ウルリカ様、これをお使いください」
「これは?」
「魔法の演習に使う、魔法媒体の杖です。新品は用意できなかったので、私が昔使っていたものですが……」
「誰のものでも気にはせぬが……媒体などなくとも魔法は使えるぞ? 使った方が良いのか?」
「普通は媒体なしだと威力が弱まってしまいますから、使った方がいいと思います」
「そうか、ではリヴィの言う通りにしようかの」
クルクルと杖を回して遊ぶウルリカ様。
「で、なにをすれば良いかのう?」
「向こうに的を置いてます、あれを狙って攻撃魔法を打ってください」
「よし! やるのじゃ!!」
次の瞬間、ウルリカ様から凄まじい勢いで魔力が立ち昇る。
一瞬で沸き起こった濃密な魔力に、ゼノン王が慌てて止めに入る。
「ちょっと待て、威力は控えめで──」
ゼノン王の言葉の途中で、無造作に杖を振るウルリカ様。
杖の動きにあわせて、十メートルほどもある漆黒の球体が空中に出現する。
「おい! なんだこれは!?」
「陛下、お下がりください!」
「きゃあぁっ!?」
球体から発せられる、耳をつんざくような叫び声。
周囲の空気を飲み込みながら、巨大化していく漆黒の球体。
的を飲み込み、城壁の一部を消し去った球体は、そのまま空の彼方へと消えていく。
後には抉り取られた地面と、ポッカリと穴のあいた城壁が残る。
そして、自慢気に腕を組むウルリカ様が立っていた。
「こんなもので良いかのう?」
「「「良くない!!」」」
オリヴィアとゼノン王、そしてゴーヴァン。
三人がそろって声を上げる。
「おいウルリカ、今の魔法はなんだ!?」
「ん? ただの滅亡魔法じゃが……」
「滅亡魔法!? そんなもの聞いたことないわ! 威力は控えめと言っただろうが!!」
「十分控えめだったではないか! 本気でやればこんな城、一瞬で消し飛んでおるのじゃ!!」
「あれで控めなのですか……」
「一瞬で城が……あり得ん……」
ウルリカ様とゼノン王の会話を聞いて、顔を青くするオリヴィアとゴーヴァン。
「ウルリカよ、試験では先ほどの魔法は禁止だ」
「ならばどんな魔法を使えばよいのじゃ? 終焉魔法はどうじゃ?」
「お前はなにを終焉させるつもりだ! 無難に火の魔法とかに出来ないのか!?」
「火か、であれば極炎魔法か煉獄魔法か……」
「そんな物騒な名前の魔法を使うな! 学園が消し炭になるわ!!」
頭を抱えるゼノン王。
「分かった、魔法はもう終わりだ。早く次にいってくれ!」
「仕方ないのう……では次にうつるのじゃ!」
こうして、魔法の演習は強制終了となったウルリカ様。
しかし、波乱の実技演習はまだまだ続く。
快晴の空の下、ここはロームルス城の兵士訓練場。
「うむ、いい天気じゃ!」
「はい……そうですね……」
ご機嫌な笑顔のウルリカ様と、緊張した表情のオリヴィア。
そして……。
「ハッハッハッ! 確かにいい天気だな!!」
「はぁ……なぜ俺が……」
豪快な笑い声をあげるゼノン王と、深いため息をつく聖騎士のゴーヴァン。
広い訓練場に、四人だけがポツンと立っている。
「あの……国王陛下、質問してもよろしいでしょうか?」
「どうしたオリヴィア、申してみよ」
「なぜ国王陛下がここにおられるのですか?」
「試験に向けてウルリカが事前演習をすると聞いたのでな、友達として応援しに来たのだ」
「おお! 嬉しいぞゼノン、流石は妾の友達じゃな!!」
「なに、当たり前のことだ。ハッハッハッ!」
無邪気に喜ぶウルリカ様と、豪快に笑うゼノン王。
楽しそうな魔王様と国王様だ。
「えっと……ではゴーヴァン様はなぜここに?」
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そっぽを向いたまま、沈んだ声でオリヴィアの問いに答えるゴーヴァン。
「まったく……なぜ俺が……他にも護衛は沢山いるだろうに……」
不機嫌なゴーヴァンの肩を、ゼノン王がバシバシと叩く。
「そう言うなゴーヴァン。お前はウルリカの事情を知っているからな、都合が良かったのだ」
「ええ……理解はしていますが……」
「さてウルリカ、訓練場で演習ということは実技の演習だな?」
「知らぬのじゃ! リヴィに任せておる!!」
「おぉ……知らないのか……」
「うむ、全く知らぬ! ポリポリ……」
自信満々に答えるウルリカ様。
自分の演習だというのに、夢中で缶に入ったクッキーをほおばっている。
呑気なウルリカ様の様子に、ゼノン王とオリヴィアはそろって頭を抱えてしまう。
「本日は魔法と剣術の実技演習ですよ、ウルリカ様にも昨日説明したじゃないですか」
「うーむ……そんなことを言っておったかのう」
「ちゃんと聞いてて下さいよ……ではもう一度説明しますね」
コホンッと咳払いをするオリヴィア。
「ロームルス学園の入学試験は、筆記・魔法実技・剣術実技・実地での魔物討伐、の四種目です。今日はそのうちの魔法実技と剣術実技の演習をします」
「なるほど、筆記は常識問題だから置いておくとして、懸念は魔法と剣術、そして実地試験というわけか」
「ゴーヴァン様のおっしゃる通りです。ウルリカ様は魔王様だと伺いましたが、実力が未知数でして……演習をしておいた方がよいと思いました」
そう言ってオリヴィアは、片手に収まる小さな杖を取り出す。
キョトンとするウルリカ様に、小さな杖が手渡される。
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クルクルと杖を回して遊ぶウルリカ様。
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「向こうに的を置いてます、あれを狙って攻撃魔法を打ってください」
「よし! やるのじゃ!!」
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ゼノン王の言葉の途中で、無造作に杖を振るウルリカ様。
杖の動きにあわせて、十メートルほどもある漆黒の球体が空中に出現する。
「おい! なんだこれは!?」
「陛下、お下がりください!」
「きゃあぁっ!?」
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的を飲み込み、城壁の一部を消し去った球体は、そのまま空の彼方へと消えていく。
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そして、自慢気に腕を組むウルリカ様が立っていた。
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オリヴィアとゼノン王、そしてゴーヴァン。
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「ん? ただの滅亡魔法じゃが……」
「滅亡魔法!? そんなもの聞いたことないわ! 威力は控えめと言っただろうが!!」
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