その心が白銀色に染まるなら

じんまーた

第一話 『銀色に光る朝日』

重苦しい瞼を持ち上げると窓から太陽の光が射し込み、目の前の何かを照らしていた。
ふと見上げると、そこには赤錆びた鉄の椅子に見知らぬ女が腰かけていた。

「……誰だ?」

俺は思わず声を出してしまった。声を……?
首にあった大きな傷のせいで上手く声を出せなかったはずだが、その傷は何故かなくなっていた。
そして、自分の体に目を移してみると手足の欠損部分はそのままだが、体中の傷もなくなっている。あの抉るような感覚も綺麗に消え去っていた。

この女がやった……のか? いや、そうに違いない。

今度こそ終わりだと思った。今まで何度も死にかけた。
刃が折れた剣で、切れもしない肉を無理やりにでも切られたことがあった。その度に千切れそうになる手や足を、実験で作ったであろう得体のしれない薬で治され、薬で腐敗しようものなら再び剣で切られの繰り返し。

死にたくても死ねない、そんな地獄のような日々だった。

俺がここに連れてこられた時、騎士たちは取り調べと称して、徹底的に俺を痛めつけた。
それはただの娯しみでしかなく、目的が他にあったのだ。

俺には幼少の頃から、目に特殊な力が宿っていた。
騎士たちはその力を欲したのだろうか。定期的に現れる騎士たちは実験が終わると、俺の目の部分だけをきれいに修復し、黄土色の薬品を体に投げつけてきた。


目の前の女は俺がここに来る理由となった騎士たちの仲間なのだろう。光に照らされ輝く銀色の鎧は、嫌でもあの時のことを思い出させてしまう。

この女が何の意図があって俺の傷を治したのかはわからないが、感謝してやる気にはならない。今まで受けた仕打ちを考えると当然だろう。
そして、憎しみのほうが勝ってしまうから。失意の果てに一度は捨てた感情だったが、生きているのならばこの感情をぶつけてしまってもいいんじゃないだろうか。

そう思い、再びあの時のことを思い出す。忌まわしい惨劇。血の匂い。恐怖と絶望。

忘れることのできない厭世の記憶――


          

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