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音を知らない鈴

布袋アオイ

#69 死ね、親父

 『龍也は勘がいい』

 さっきの仁さんの言葉が聞こえた。

 「そっか……」

 この際、私の事についてとことん話してはくれないか。

 私の為の時間をくれないか。

 仁さんからああ言われた時は、早く家に帰れと追い出されたような気がして、若干苛立ったが、今はこの事を言っていたのかと気が付いた。

 私もまだまだで、意外と家族のことに目を向けてこなかったことが露わになった。

 心がじんわりと暖かくなった。

 感情は言葉にするとガッカリなのに、胸の辺りが、じんわりと暖かい。

 涙が込み上げてくる感覚。

 懐かしい何かを思い出したかのように、じわじわと優しい色が、真っ白で何も乗っていない心に浮かび上がってくる。

 そして毎度恒例の現象、胸が痛い。

 イメージとしては、まだ何も写っていない写真の紙にゆっくり、真ん中から懐かしい思い出が現れてくるかのよう。

 これが、偶に小さい時からあった。

 でも毎回オレンジ色のインクがぼやっと広がるだけで、絵にはならないのだ。

 この時本当に苦しい。

 あの日の幸せを思い出せば、今の辛さが際立つ。

 最高を知らないでいたい。

 仁さん、これは何。この感情は言葉にすると何に当たるんだ。

 今思えば、記憶が操作されている私だから陥る闇なのかもしれない。

 待てよ…ということは同じく父親の手によって記憶が操作されている母も龍也もこの感覚に襲われたことがあるのではないか?

 この優しい色をした暖かい闇に葬られる気持ちが…お前には分かるのかっ…!

 こんなに苦しいんだぞ。

 人間同士、家族なのに…っ。

 赤ちゃんの私は生まれて間もなくでこの地獄を見つけてしまい…行き来してきた。

 何度も乗り越えてきた。

 いつか…いつか消える…そう思って一人で戦ってきた…!

 この辛さ…お前はわかるのかよ!!

 オレンジのような柔らかい色が淡く広がるのも束の間。

 底から黒や紺の混ざった濃くて重い紫が不気味に広がるった。

 オレンジ色を飲み込むようにおどろおどろしい動きが体を巡る。

 訳の分からない憎しみで体中が熱い!!

 『やりなよ』

 「ッハ!!!」

 耳元で囁く声がした。

 「何だ!!誰だ!!!」

 「お姉ちゃん…?」

 「鈴音!どうしたの!?」

 うわ!助けて!痛い!うるさい!!

 『やりな』

 「なに!!!うるさい!!!」

 「お姉ちゃん!!!」

 「鈴音!!!」

 姉が急に目の色を変え、階段の上で暴れだした。

 「なに!!!なに!!!」

 「危ない!!どうしたの!!」

 (お姉ちゃん…どうしちゃったんだ…)

 「聞こえる…気持ち悪い!!」

 背中に手を伸ばされているかのようにソワソワする。

 自分の悪い所を出せ出せと煽られているかのようだ!!

 「うわあっ!!!嫌だ!!嫌だ!!」

 頭も痛いっ!夜姫さんっ!仁さん!助けてくれ!!

 真っ白で何も見えない。

 『あなたの名前は鈴音』

 「ッくわぁ!!!やめろ!!」

 大ッキライなんだその響きが!!聞かせてくるな!しかも耳元で!!

 「はぁ…!はぁ…!気色悪い!!」

 『あなたは鈴音よ』

 「分かった!!分かったから!!」

 『ほら、いってごらん?す、ず、ね』

 「いや!!もうやめてくれ!!」

 『私がつけた名前、すずね』

 「ふぁっ!!」
 
 『すずね…』

 「ううっ!!!!」

 『すずね!』

 「うわぁぁぁぁっっっ!!!!」

 『鈴音!!!』

 ガチャ

 「ただいま〜」
 
 「ッ…!!」
 
 ダンダンダン!

 「うわ!なんだ!!」

 「…!?」

 切鈴…………………………
 
 「…ウッ!!」

 バタン

 「お父さん!!!」

 「あなた!!!!」









 …………………………ッ!!!!?





  



 

 
 

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