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音を知らない鈴

布袋アオイ

#68 かわいそうに 

 「お母さんも言いたいの、本当は」

 「……」

 「でも言わないのはなぜだと思う?」

 「……分かってる」

 薄々分かってはいるんだ。

 お姉ちゃんがこんな事受け入れられる強さを持っているのか。

 決してお姉ちゃんを弱く見ているんじゃない。

 ただ未知数なだけで…データが無いんだ。

 だから何がお姉ちゃんを守る方法なのか正直分からない。

 だけど…お姉ちゃんの行動が…

 「まるで…探しに行ってるみたいで……」 

 「………龍也」

 「お姉ちゃん、何か分かってるんじゃないかな……」

 「……」

 「真実を全部知った方が…楽なんじゃ……」

 「………」

 一人で背負う時間を持ってほしく無いんだ。

 お姉ちゃんにはそういう節がある。

 昔から何でも一人で解決しようとするし、大方人に頼まなくても出来てしまうタイプなのだ。

 きっと無自覚だが。

 いや、だからこそ怖いのだ。

 でも、これは…お姉ちゃんが壊れてしまう。

 助けてあげたい……。

 「分かった」

 「え?」

 母の声……では無かった。

 母の声なら安心する一言だっただろうに、僕は今心臓が止まってしまったかのように苦しかった。

 「鈴音………」

 母の目線の先、階段に立っていたのは

 「お姉ちゃん……」

 「なら、教えて」

 「ッえ………」

 「私に教えて、何が言いたいの」

 「………」

 「………」

 「言えないの?」

 「鈴音…」

 「お母さん、もういいよ、そんなに考えなくても」

 「………」

 「………」

 「………」

 (いつ、どこから聞いていたのだろうか)

 絶対思っちゃいけない!いけないけど…

 恐るべし。そう思った。

 やはりとも、流石とも。

 何なんだ…この人は………



 

 私って、普通の子じゃ無かったのか。二人ともガッカリしてそうな顔…。

 普通の子だったら、こんな事に悩まなくても良かったのにね。ごめんね。

 他にいるかな、こんな子。

 きっと……いないよね。

 何で生まれてきちゃったんだろうね、私。

 迷惑かけてばかりで、今すぐ死にたいよ。

 私に…家族らしさも、子供らしさも消えていく。

 神様…………神様………神様、神様神様神様神様神様神様っ!!!

 助けてっ…………。

 どうすればいいの。家族をこんな顔にさせてしまう私って、どうしてこうも憎ったらしいのかな。
 
 今すぐ剥ぎ取って、捨てて消えて…

 「ごめんね………」

 


 「お姉ちゃん………」

 泣けよ…。我慢すんなよ。どうして謝るんだよ。

 真っ直ぐ見る姉の目は、ガラス玉のようで、世界が違う生き物みたいだ。

 姉の周りの時が止まっているかのように別世界から舞い降りた、何も知らない姫のようだ。

 かわいそうに……お姉ちゃん…僕のお姉ちゃんなのに…




 はぁ……。どうすれば……。




 

 
 


 
 

 
 

 

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