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音を知らない鈴

布袋アオイ

#67 いなくなりそうで

 「頼むから龍也!内緒にして」

 「でもお母さん!僕にはお姉ちゃんが」

 どうしよう。言葉にして良いのだろうか…。

 「……何」

 「……」

 「教えて」

 お母さん…。

 「お姉ちゃんがどこかに…」

 (何だ、言葉がでない…というか、言いたくないっ)

 「消えそう?」

 「え?」

 「すずが消えそうなの?」

 「……」

 こくりと頷いた。よくそんなに言えるもんだ。

 「ねぇ、私達何か不思議に思わない」

 「…?」

 「過去に違和感…ない?」

 「過去?何急に」

 「お母さんさ、思い出せない事があるの」

 「え?」

 「鈴音の小さい時、覚えてない」

 「お姉ちゃんの?」

 お母さん、大丈夫か…?お姉ちゃんの小さい時なんて………

 「あれ……」

 「…龍也も?」

 (え…あ、いや。覚えてる。お姉ちゃんと。あれ、記憶は確かに)

 「お母さんの感覚聞いてくれる?」

 感覚?どういうことだ。

 「鈴音の記憶が全部無い訳じゃないの。あるんだけど、あの子の本気の感情を見たことがない」

 「本気の感情?」

 「うん。はぁ…言葉にするの難しいわね。何かこう、あの子の綺麗な思い出はあるんだけど、一緒に遊んだり出かけたり」

 「うん」

 「でもあの子が駄々こねてるとこや、印象に残った言葉がないのよ。どこを切り取っても良い子、笑ってるの」

 「そんなこと…」 

 それは只の性格じゃないのか?

 「娘の感情むき出しの顔が思い出せないなんてあるかしら」

 「でも僕は…あれ……」

 ついこないだまで覚えていたはずなのに、お姉ちゃんの優しい顔。

 「なんの時だっけ…」

 泣けるほど優しい感覚に包まれたのに…。

 もう二度と触れられない事だけは予感がした、あの懐かしさは…

 「なんでだ!あんなに…覚えていたのにッ!」

 思い出せない事に腹がたってきた。

 言われてみればお姉ちゃんとの記憶が薄い。なんだったらこれといって思い出せない…。

 どうしてだ…!?仲が悪い訳でもないし、こんなに思い出が無いなんて…

 「お母さん!ますますお姉ちゃんが」 
 
 「だからお願い」

 僕が言う前に止められた。

 「慎重にいきたいの。あなたも感じてるでしょ」

 (お母さん……)

 「お母さんも怖い。鈴音が」

 「いなくなりそうで…」
 (いなくなりそうで…)

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