音を知らない鈴
#66 この夢は終わらせて
「お姉ちゃん!!」
「…!?龍也、ただいま」
「また……」
龍也が…怒っている?何故だろうか。
「なに?どうした?」
「頼むからもう神社には行かないでくれよ!!」
「え……」
こんなキツイ言い方をする龍也を今で見たことがない。
大人しくて優しい性格なのに。なにかあったのだろうか。
「え…、何でそんなこと言うの?」
冷静に聞いてみた。ここで心を乱してしまっては、二人とも結論のでない無意味な感情の嵐が巻き起こる。
こんな表現でいいのか?
分からないがまずは落ち着かないと。この子の喘息も心配だ。
「ねえ!お姉ちゃんは気付いていないの!?」
「……」
(気付いて…いない…?)
なんか女の子みたいな言い回しだな。珍しいが率直に言うとまわりくどい。
出来れば結論から言ってほしい。
あー、私はなんて殺伐とした性格なのだろうか。
さっきね幽霊みてきた!!って明るく変な話でも切り出して、またお姉ちゃん変なんだけどで盛り上がるか?
それが一番楽なんだよね。
どうかな…って取り敢えず靴を脱いで上がろうとしたら
「龍也……?」
「うぅッ…」
「な、ん?泣くことないでしょ?どうしたの?」
でもそこから少し龍也の成長が伺えた。
泣き虫っ子で涙を人に見せることに躊躇のなかったあの頃とは違って、俯いて拳を固く握り、震えながらないている。
こんなに大きくなったんだ。私はいつの間にか龍也を見ていなかったのかもしれない
苦しい思いをさせてこなかっただろうか。
ここまでの感情が湧きで出て殺す。感慨深いし、傍目に見るとやはり不思議な事をしていたのだな。
人間ってなんなんだ。
「お姉ちゃん!!またその目…っ!」
「…ッ!?」
「僕をどう思ってるんだよ!!僕は…お姉ちゃんの家族だぞ!!」
「えっ…ちょっどうしたの?本当に」
「嫌なんだ!!お姉ちゃんがまるで僕らのことを他人のように見てるの!家族だって分かってるのかよ!?」
難しいようで単純なことを泣きながら言うから、もう訳が分からない。
「何を言ってるの?分かってるよ?当たり前の事じゃない、それ」
「いや!!お姉ちゃんはいつも僕たちを頼らないし、蔑まないし、妬まないし、怒らないし」
良い子だろ?
「なんかまるで……か…」
「ん?」
「善人っぽくてッ」
「あ…」
よく言われたな、善人ぶってるって。
「ハハ…」
それってつまり、悪口…だよね。
やっぱり私っておかしいんだ。
「ごめん、ちょっと着替えるわ」
もう、笑うしかないよ。そんなの言われたら。
家族なら私の事少しは知ってくれていると思ったから、安心してたけど、やっぱりそう見えちゃうんだ。
私にとっては普通の反応を、人は善人ぶってるやら、自分を出さない臆病者やら言ってきた。
これが答えだと言えども私の言葉としては受け取ってくれず、根の黒さを隠す猫のように皆怪訝がった。
家族なら……
「いや、分かんねぇか」
仁さん、これはどういう感情でしょうか。
私はさっき“辛さ”を覚えた。鮮明に。
でもこれは、この心は違う。辛さを越して、笑えるんだよ。
呆れたのか、誰に?私に?
分かんないよ…、ハハ。
死んでも…いいかな……
もうそれは、おばけのように脱力した手足で龍也の横を通り過ぎた。
「いや!違う!!お姉ちゃん!ごめん!僕、言葉にするのが下手だから」
「…」
「あの……あのさっ…僕、気になってる事があって…その…」
「龍也」
「あ!!」
「ん?」
「お母さん……」
「おかえり、鈴音」
「ただいま」
「着替えといで」
「はい」
「あ…お姉ちゃん…」
二人をよそに私は自分の部屋へと上がった。
若干聞こえる二人の声は、珍しくも喧嘩気がある。
しかし、今の私は傷を負ったかのように、体が重く辛い。
「辛い……」
言葉を覚えたばかりの赤ん坊のように言った。
覚えたての感覚を傷として深く刻まれたようだ。
心に“辛い”の文字が刻印のように彫られていくのが見えた。
こんなもの背負って生きてるのか、みんな。
一階で二人が何かを言っているが、そんなことも、何故龍也が泣いたのかも今はどうだっていい。
私は安静を選び静かに眠った。
そして、夢を織り成す声がした。
『約束したのに、鈴音に言わないでって』
『お母さん、ごめんなさい。でももう見てられないよ!お姉ちゃんのあんな姿』
『お願い…慎重に考えて進めたいの』
神様…今日の夢も苦しく泣きそうです。
「…!?龍也、ただいま」
「また……」
龍也が…怒っている?何故だろうか。
「なに?どうした?」
「頼むからもう神社には行かないでくれよ!!」
「え……」
こんなキツイ言い方をする龍也を今で見たことがない。
大人しくて優しい性格なのに。なにかあったのだろうか。
「え…、何でそんなこと言うの?」
冷静に聞いてみた。ここで心を乱してしまっては、二人とも結論のでない無意味な感情の嵐が巻き起こる。
こんな表現でいいのか?
分からないがまずは落ち着かないと。この子の喘息も心配だ。
「ねえ!お姉ちゃんは気付いていないの!?」
「……」
(気付いて…いない…?)
なんか女の子みたいな言い回しだな。珍しいが率直に言うとまわりくどい。
出来れば結論から言ってほしい。
あー、私はなんて殺伐とした性格なのだろうか。
さっきね幽霊みてきた!!って明るく変な話でも切り出して、またお姉ちゃん変なんだけどで盛り上がるか?
それが一番楽なんだよね。
どうかな…って取り敢えず靴を脱いで上がろうとしたら
「龍也……?」
「うぅッ…」
「な、ん?泣くことないでしょ?どうしたの?」
でもそこから少し龍也の成長が伺えた。
泣き虫っ子で涙を人に見せることに躊躇のなかったあの頃とは違って、俯いて拳を固く握り、震えながらないている。
こんなに大きくなったんだ。私はいつの間にか龍也を見ていなかったのかもしれない
苦しい思いをさせてこなかっただろうか。
ここまでの感情が湧きで出て殺す。感慨深いし、傍目に見るとやはり不思議な事をしていたのだな。
人間ってなんなんだ。
「お姉ちゃん!!またその目…っ!」
「…ッ!?」
「僕をどう思ってるんだよ!!僕は…お姉ちゃんの家族だぞ!!」
「えっ…ちょっどうしたの?本当に」
「嫌なんだ!!お姉ちゃんがまるで僕らのことを他人のように見てるの!家族だって分かってるのかよ!?」
難しいようで単純なことを泣きながら言うから、もう訳が分からない。
「何を言ってるの?分かってるよ?当たり前の事じゃない、それ」
「いや!!お姉ちゃんはいつも僕たちを頼らないし、蔑まないし、妬まないし、怒らないし」
良い子だろ?
「なんかまるで……か…」
「ん?」
「善人っぽくてッ」
「あ…」
よく言われたな、善人ぶってるって。
「ハハ…」
それってつまり、悪口…だよね。
やっぱり私っておかしいんだ。
「ごめん、ちょっと着替えるわ」
もう、笑うしかないよ。そんなの言われたら。
家族なら私の事少しは知ってくれていると思ったから、安心してたけど、やっぱりそう見えちゃうんだ。
私にとっては普通の反応を、人は善人ぶってるやら、自分を出さない臆病者やら言ってきた。
これが答えだと言えども私の言葉としては受け取ってくれず、根の黒さを隠す猫のように皆怪訝がった。
家族なら……
「いや、分かんねぇか」
仁さん、これはどういう感情でしょうか。
私はさっき“辛さ”を覚えた。鮮明に。
でもこれは、この心は違う。辛さを越して、笑えるんだよ。
呆れたのか、誰に?私に?
分かんないよ…、ハハ。
死んでも…いいかな……
もうそれは、おばけのように脱力した手足で龍也の横を通り過ぎた。
「いや!違う!!お姉ちゃん!ごめん!僕、言葉にするのが下手だから」
「…」
「あの……あのさっ…僕、気になってる事があって…その…」
「龍也」
「あ!!」
「ん?」
「お母さん……」
「おかえり、鈴音」
「ただいま」
「着替えといで」
「はい」
「あ…お姉ちゃん…」
二人をよそに私は自分の部屋へと上がった。
若干聞こえる二人の声は、珍しくも喧嘩気がある。
しかし、今の私は傷を負ったかのように、体が重く辛い。
「辛い……」
言葉を覚えたばかりの赤ん坊のように言った。
覚えたての感覚を傷として深く刻まれたようだ。
心に“辛い”の文字が刻印のように彫られていくのが見えた。
こんなもの背負って生きてるのか、みんな。
一階で二人が何かを言っているが、そんなことも、何故龍也が泣いたのかも今はどうだっていい。
私は安静を選び静かに眠った。
そして、夢を織り成す声がした。
『約束したのに、鈴音に言わないでって』
『お母さん、ごめんなさい。でももう見てられないよ!お姉ちゃんのあんな姿』
『お願い…慎重に考えて進めたいの』
神様…今日の夢も苦しく泣きそうです。
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