音を知らない鈴

布袋アオイ

#12 そんなに心配しないで

 「鈴音、お帰り」

 「ただいま」

 「鈴音?元気?」

 「ん?元気だよ、どうして?」

 いつもは聞かれない質問をされた。

 「いや、何となく目が開いていないような」

 (え…?)

 そんなに目に見えて疲れた顔してるかな…

 少し驚いた。

 でも別に体はどうって事無い。寧ろ風にあたってすきっりしていたのに。

 「全然大丈夫だよ?そんな変な顔しる?」

 面白おかしく返した。

 「フフ、そんな事無いよ」

 笑ってくれた。

 「良かった、無理しないようにね」

 「うん、ありがとう。お母さんもね」

 「…?ありがとう…!」

 「じゃあ勉強してくる」

 「はーい」

 最後まで笑顔でいれた。部屋に入って恐る恐る鏡を見た。

 (ん…?至って………普通)

 自分で見ても特に変わったところは見られなかった。

 母親の最初の深刻そうな顔が頭から離れない。

 ピコッ!

 (ライン……)

 「え!?」

 驚いた。

《何か今日元気なかったけど、ちゃんと帰れたか?》

 金木君からだった。

 皆どうしてそんなに心配するの?もしかして、今日一緒に帰ろうって言ったのは私が疲れてそうだったから…?

 またまた心配になり鏡を見た。

 だが何度鏡を見ても、いつもの私だ。

 学校が好きでは無いから顔に出てしまったのか…。

 「そういう事かな?」

 直ぐに

《大丈夫、だから帰ろうって言ってくれたんだね。ありがとう。》

 とラインを返した。

 皆に心配させてしまった事を反省した。

 (ごめんね、気をつけよ)




 家に帰ると途端に制服の動き辛さに気づく。

 早く脱ぎ捨てたくなる衝動をなるべく抑えて丁寧にハンガーに掛けた。

 意外と完璧主義でこういうのは怠れない。

 だが、今にも脱力しそうな最後の力を振り切って靴下とブラウスは適当に洗濯カゴに投げ捨てた。

 薄いTシャツ、軽いズボン…

 開放感がたっぷり味わえる。

 それに今日は金曜日。

 格別だ…!

 ご飯まであと数時間。寝てしまわないうちにに机に向かった。

 ついでに窓を全開にして。

 髪も結い直して勉強に取り組んだ。

 1時間…

 2時間……

 そして………



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