音を知らない鈴

布袋アオイ

#8 夏海と千早

 「すずー!おはよー」

 「おはよう、なつ」

 「いいなぁ、朝練無いの楽だよね〜」

 「テニ部はあるの?」

 「あるよー、はぁ…試合近いからね」

 「そっか、大変だね」

 「んー?どうせ思ってないんでしょ!良いよ気を遣っていただかなくても」

 「本当だよー!」

 「はいはい、冗談だよ」

 「……」

 「試合なんて高校生だけでやるんだからテストと被らないように調整できんもんかね」

 「でもなつはいつも成績いいじゃん」

 「なあに?これでも努力してんのよ?」

 「あ、そっか。ごめんごめん」

 「ったく〜、すずはどうなの?テスト勉強」

 「何にもしてないよ、部活が無いところで
別に何もしてない」

 「本当?すずの部活試合ないの?」

 「うん、もう少し先」

 「へぇー、私達もずらして欲しいわ」

 (大丈夫だよ、なつは賢いから)

 あ、この子は五島夏海。

 出席番号が近かったおかげで入学式に声をかけてくれた。

 それからいつも一緒にいる仲になった。

 この子は無自覚かもしれないが、結構モテる。

 高校の時点で5、6人から告白されている。

 それでも彼氏ができないのは部活に集中したいかららしいが、私からしたら勿体ない…。

 めちゃめちゃ青春ではないかと思うのだが本人は

 「電話とかデートとかいちいち面倒じゃん?」

 だとさ。

 羨ましい限りだ。

 でもなつなら欲しくなればいつでも彼氏はできるだろう。

 本人も焦らなくていいと感じているのだ。

 それに、恋人がいる事を面倒だと思うのも
この身だが分かる気がする。

 全然告白はされないけど。

 (オーラが出てるのかな…)

 「おはよー」

 「お!金木おはよーう!」

 「おう!楠?」

 「すず?金木がおはようって」

 「ん?あ!おはよう!ごめん」

 「いいよ、何か考えてたのか?珍しい」

 「ちょ、どういう事?」

 「お前も頭使う時があるとはね〜」

 「あるわ!」

 「どーせろくな事考えてねーんだろ、朝から疲れっぞ」

 「…っ!?謝るんじゃなかった!」

 「まあまあ、幼馴染だけあって仲良いね」

 「今のどこを見てそう思ったの?」

 「全部だよ」

 「………」

 「おい、先生来るぞ」

 「マジか!すず座ろ!」

 「……うん」

 何かいっつも私遊ばれてるな…






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