私、幽霊です!
P.33
「経営不振……」
突然、まひろが窓の外を眺めながらポツリとつぶやいた。
「と、いうことになってるわね」
「引っ掛かる言い方だ」
ほとんど間を空けずに、優弥から疑問の声を投げかけられた。
「でも潰れた理由なんぞ俺も知らん。調べたのか?」
「まぁ、流石に……って言っても、ネットにも載ってないような所だったから、聞いて回っただけだけど」
一連のやり取りに、和輝も首を傾げる。
経営不振?
自分の記憶の中では、そんなに閑散とした病院でもなかったはずだが。
だが、それも幼い時の記憶だ。
時代の移り変わりは唐突に訪れる。
もしかしたら、行かなくなってからなにかあったのかもしれない。
相変わらず窓の外だけを眺めるまひろに、和輝は問うた。
「他になにか理由がありそうなんですか?」
まひろはこちらを向かず、しばらく考えるようにして間を空けてから返しだした。
「んー、それがなにもないのよねぇ」
やや間延びして返ってきた言葉に、和輝は、今度は心の中で首を傾げる。
「親に訊いても大人に訊いても返ってくるのは同じ理由ばっかり」
「皆が皆『詳しくは知らない』って」
舞がまひろの後を続けた。
「煙たがるようにその話は早々に打ち切られる」
「だから怪しい」
最後の舞の言葉に、まひろはコクリと頷いた。
「つまり、隠されてるってことッスか?」
瞬の問いに、今度はまひろが首を左に傾げた。
「どうかしらね。こういうのって、思い込みがそう匂わせてるって場合も多いから」
「思い込み?」
和輝が口を挟む。
「そう。金城病院の向かいに墓地がある。そこで怪奇現象が起きている。なにも知らない人がこれだけ聞いたら、きっとこの二つを関連付けるでしょう?」
「まぁ、その二つしかワードが出てきてないしな」
茶化すように言う優弥をよそに、和輝は追撃する。
「でも、その病院の墓地だったんでしょ? だったら……」
「いいえ」
ピシャリとまひろは否定した。
「墓地は病院が潰れてから建てられたものよ。直接的な関係はないわ」
と言ったものの、まひろは考えこむように顔を下に向ける。
バックミラー越しにそれを察知したのか、一瞬の間のあとに優弥が口を開いた。
「……全くないとも言い切れないけどな」
「はぁん?」
少し間の抜けた声で瞬が突っかかる。
優弥は続けた。
「その墓地ってのは、病院が所有していた公園を新しく造り直したんだよ。行きゃわかるが、その時のベンチやブランコなんかはそのまま置いてある。あの井戸だってそうだろうな」
「げっ……誰がそんなモンで遊ぶんだ」
「知るか」
言葉の終わりと同時に、優弥の車がスピードを落とす。
誰も通らない歩道の端にゆっくりハンドルを切ると、車は完全に停止した。
「知りたきゃ自分で見てみたらいいだろ?」
運転席と助手席の隙間から見えたニヤリと笑う優弥の横顔に、和輝は少し背筋を強張らせた。
突然、まひろが窓の外を眺めながらポツリとつぶやいた。
「と、いうことになってるわね」
「引っ掛かる言い方だ」
ほとんど間を空けずに、優弥から疑問の声を投げかけられた。
「でも潰れた理由なんぞ俺も知らん。調べたのか?」
「まぁ、流石に……って言っても、ネットにも載ってないような所だったから、聞いて回っただけだけど」
一連のやり取りに、和輝も首を傾げる。
経営不振?
自分の記憶の中では、そんなに閑散とした病院でもなかったはずだが。
だが、それも幼い時の記憶だ。
時代の移り変わりは唐突に訪れる。
もしかしたら、行かなくなってからなにかあったのかもしれない。
相変わらず窓の外だけを眺めるまひろに、和輝は問うた。
「他になにか理由がありそうなんですか?」
まひろはこちらを向かず、しばらく考えるようにして間を空けてから返しだした。
「んー、それがなにもないのよねぇ」
やや間延びして返ってきた言葉に、和輝は、今度は心の中で首を傾げる。
「親に訊いても大人に訊いても返ってくるのは同じ理由ばっかり」
「皆が皆『詳しくは知らない』って」
舞がまひろの後を続けた。
「煙たがるようにその話は早々に打ち切られる」
「だから怪しい」
最後の舞の言葉に、まひろはコクリと頷いた。
「つまり、隠されてるってことッスか?」
瞬の問いに、今度はまひろが首を左に傾げた。
「どうかしらね。こういうのって、思い込みがそう匂わせてるって場合も多いから」
「思い込み?」
和輝が口を挟む。
「そう。金城病院の向かいに墓地がある。そこで怪奇現象が起きている。なにも知らない人がこれだけ聞いたら、きっとこの二つを関連付けるでしょう?」
「まぁ、その二つしかワードが出てきてないしな」
茶化すように言う優弥をよそに、和輝は追撃する。
「でも、その病院の墓地だったんでしょ? だったら……」
「いいえ」
ピシャリとまひろは否定した。
「墓地は病院が潰れてから建てられたものよ。直接的な関係はないわ」
と言ったものの、まひろは考えこむように顔を下に向ける。
バックミラー越しにそれを察知したのか、一瞬の間のあとに優弥が口を開いた。
「……全くないとも言い切れないけどな」
「はぁん?」
少し間の抜けた声で瞬が突っかかる。
優弥は続けた。
「その墓地ってのは、病院が所有していた公園を新しく造り直したんだよ。行きゃわかるが、その時のベンチやブランコなんかはそのまま置いてある。あの井戸だってそうだろうな」
「げっ……誰がそんなモンで遊ぶんだ」
「知るか」
言葉の終わりと同時に、優弥の車がスピードを落とす。
誰も通らない歩道の端にゆっくりハンドルを切ると、車は完全に停止した。
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