私、幽霊です!

黒華夜コウ

P.29

 その質問を受けても、まひろはただ首を傾げるだけだった。
「さぁ……? でも、これで信憑性が出てきたでしょ?」
 ここで和輝は頭を悩ませた。
 『信憑性』とは。
 人の話の信用できる度合いを指す言葉だ。
 ではこの場合の信憑性とは、なにを指しているのだろうか。
 これまでの話の流れと体験が和輝の脳内で絡みあっていく。
 その先には、どうやっても一つの答えしか用意されていなかった。
「まさか、今から行くところって……」
「えぇ、今の墓地よ」
 一呼吸の間も置かず、あっけらかんとまひろは言い放った。
「完璧に呪われたな、俺ら」
 天井を仰ぐ瞬が、溜息混じりに言葉を吐きだした。
 巻きこんだ側であるはずの瞬は、いつの間にか巻きこまれた側に態度を一変させている。
 彼にしてみれば肝試しは付属品。
 お化け屋敷程度のイベントだったのだろうし、メインはそっちではなかったはずだ。
 それが目の前で、非日常な体験をしてしまった今では、そうも言っていられなくなった。
 神谷まひろの情熱を甘くみていた。
 そのまひろは相も変わらず少しも動揺した態度を見せず、むしろどこか嬉々とした表情で足を崩して座り直した。
 予想外だったのは、それまで無関心そうだった優弥だ。
「行くのはいいんだが」
 おもむろに優弥は喋りだす。
「いや、行くのはいいんだが。どうやって行くつもりだ? ここから病院まで割と距離あるぞ」
 和輝も頭の中の地図を使って時間を計算してみる。が、途中の複雑な道のりのせいか、上手く道を辿ることができない。
「……そんなに掛かるっけ?」
 つい、そう口に出してきいてしまった。
「そうだな……歩くなら、三、四十分は見といたほうがいいな」
 優弥からはすぐに返答がきた。
 歩いて行けない距離ではないが、往復すると約一時間。
 墓地の中に入るなら肝試し中も歩くだろうから、倍は歩くかもしれない。
 行きはよいよい……となるのは勘弁だ。
 折角の美女二人との夜遊びも、疲労が勝るのが見えていれば行く気が失せる。
 それでなくとも既に怖い思いをしているのに。
 逆に言えば、大幅に移動時間を減らしてくれるような、魔法の道具でもあれば話は変わってくるのだが。
「……ん?」
 まひろと混乱の収まった舞の視線が刺さっているのを感じて、優弥は最後の言葉からそのまま疑問符をうった。
「城戸さん、今日お酒飲んだ?」
 舞が問う。
「いや、別に……」
「あなた、コンビニまでどうやって来たの?」
 続けてまひろも問いかける。
「近くのパーキングに……おい、ちょっと待て」
 なにかを察した優弥は、途端に眉間に皺を寄せた。



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