目標までの道のり

遠藤良二

第2話 憧れの職業

こんな俺でも夢がある。高校時代から憧れている「小説家」という職業。性格的には短気だけれど、内向的。趣味は読書で、小説を書き始めたのは三年前の二十五歳の時。ある作家の恋愛小説を読んでいて、自分も書こうと決断した。統合失調症は二十歳で発病したので、それから四年くらいはまともに小説を読んでいなかった。
当時の俺は、「なぜこんな病気になってしまったのだろう……?」と、解決の糸口がつかめない疑問を抱いていた。最初、心理療法士に訊いてみた。その人は女性で三十歳くらいに見えた。その人がいうには、
「環境やそういう病気になりやすい体質というのはあると思います」
とても現実的なことを言っていた。主治医はやはり医者だけのことはあって説得力のあることを言っていた。それは、
「どうして病気になったかを考えるより、なってしまったから良くなる方向を考えていきましょう」
と、言っていた。当時はさすがだな! と感心した。でも、月日が経つにつれ徐々に言うことが同じようなものになって今ではやぶ医者ではないかと思っている。何故、そう思うかと言うと幻聴が治まらないからだ。薬を増やしても、違う種類の薬に変えてもあまり効果がない。いったい何故だろう……。主治医も頭を抱えていた。病院を変えることも考えたことはある。
最近に至っては、B型の事業所ではあるが仕事をしているので、気持ちのメリハリのおかげか少しそれは減っている気がする。そして再び夢に向かって活動を再開したところだ。俺が書く小説は、一応、恋愛小説のつもりで書いている。過去のすくない恋愛経験や友だちから聞いた話し、ネットで読んだネタ、などを中心に書いている。われながら自慢できるほどの作品とは現時点では言えない。でも、そんな俺の作品を唯一読んでくれている同級生がいる。彼女の名前は貝沢梨絵かいざわりえ、二十八歳。今日は俺の作品を読んでもらう約束をしている。今日は日曜日で俺の仕事は休みだし、梨絵も休みだと言っていた。午後からLINEをしてみようと思っている。日程を確認するために。今回の作品は五作目で出版社に投稿するためにパソコンのWordで書いている。それを印刷したものを地元の図書館で待ち合わせをしている予定だ。
母が作ってくれたうどんをお昼に食べて、梨絵にLINEを送った。
[こんにちは! 今日、何時ごろなら都合がいい?]
返信は十分くらいできた。
[1時過ぎに図書館で待ってるよ]
思った通りの時間で満足した。
[わかった。俺もそれくらいに行くから]
そう送り、小説を印刷したり身支度をしたりと出掛ける準備をはじめた。

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