言いたいことが言えない

おかゆ

アートについて思うこと






音楽、絵画、文学。

どれでも共通なのが、
素晴らしい作品に出会えた時には
どうしても作者のことが
気になってしまう。

どんな人が作ったのか、
その人はどんな人なんだろうかと。
どんな性格で、どこに住んでいて、
友好関係や恋人には
どんな人物を選ぶのか。

時代背景、経済状況、
訪れたことのある国。
愛したもの。

なぜなら、ほとんどの場合、
それらが作品に影響している。
一枚の絵画にいったい
何が隠されているのか。

時代によって、描かれるものは
移り変わっていった。
もっぱら私は印象派が好きだ。
光の魔術師とまで言われた
ヨハネス・フェルメールの描く
繊細にとらえた光の粒。

正直、構造とか難しいことは
その精妙さの細部はわからないのだが
でも、あんなに写真に
とったみたいに肉感的に立体的に
この世界を写実できるなんて、
この人たちの目には
自分と違う世界が映っているに
違いないとさえ思う。



雲ひとつとっても、グレー、黄色、青
なんかの多数の色が複雑に
混じっているのを、
それがどのくらい混じっているから、
その色に見えるのを、
肌でわかってしまう
光と影を捉えて描写する
才能と技術。

気付かない者には、
おそらく一生気付かない
世界なのだろう。

そこに描かれている
ワイングラスの曲線は
愛する人の身体の曲線が

皿に乗っているマスカットの緑は、
焦がれる人の瞳の色の
一部が色彩として、
紛れ込んでいるかもしれないと
思うと、やはり見逃せないのだ。


そこに移り込んだなにかを、
あるいは漏れ出てしまった想いを、
そういったものが
どこかに隠れているかもしれないのだから。


モネのように、晩年に患った白内障にも
負けず、筆を取り続ける姿勢。
カンヴァスにべったりとついた絵の具が、
そのまま乾いて作品に残っているのを
美術館で見たときに
モネの強い執念や想いを
感じた気がして、目眩がした。



美術館に行くと、
いつもそんなことを思いながら
鑑賞するのであるから、
たった数時間の滞在なのに、
その日1日分の気力を使うのだった。

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