転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する
19
ヤクザを潰した翌日、私物を新居へ全て移行して引越作業を完了させる。昨日は夜になってから母と姉が帰って来た。解放したあの後それぞれ学校・職場へ行ったんやろうな。感情が無い分何が起ころうがお構いなし、いつもの行動を進めることしかしないようになっている。
帰った後もいつも通り無言のままだった。解放したことに対して礼の一言も無く、俺の邪魔にならないところへ引っ込んだだけ。
最後に財布や携帯などの小物を全て鞄にまとめて、あとはこのまま新居に移って新生活を始めるだけや...。
「これで、お前らクソ家族と完全に縁を切れるわ。本来ならこうして絶縁するのにあと七年はかかったからな...こうして早よ絶縁できたんは僥倖《ぎょうこう》」
けけけと笑いながら最後に俺が使っていた部屋を除菌する。俺がこの部屋を使った痕跡を完全に絶やして、まるでそこは最初から誰も使ってなかったかのようにしておいた。ここには俺の思い出などは塵一つも無くなっている。未練も何も残っていない。
スッキリした気分で玄関へ行き靴を履いているところで後ろから人の気配がしたから、振り向く。
「.........」
クソ母が玄関前に立ち、俺を見つめていた。
「はぁ?いったいどういうつもりなん?こないだの時といい、キモいねん」
「.........」
口汚く罵って詰問しても無言のまま。感じ悪いったらありゃしない。心と感情は確かに消し去った。つまりは何かに興味を持つことも起きないということにもなる。だからこうして何か意図した行動を起こすなど無いはずや。
何でこうなっているのか訳が分からん。独立する息子の見送りのつもりかよ?
「クソが、馬鹿馬鹿しい。下らん詮索は要らんわな。早よ出て行こ」
自分を叱咤するようにそう叫んでこの家を出た。奴の気配は、ドアを閉めてもそのままで、玄関前から立ち去ろうとはしなかった。
「......今さら何やねんって話や...。俺が苦しんでた時にロクに助けようとせーへんかったクソが...!」
こうして俺は「杉山」と完全に縁を切った。俺は本当の意味で天涯孤独の身となった――。
*
新居に移ってからしばらくは自堕落な生活を続けていた。高級食品(料理)・ゲーム・アニメ・漫画・風俗等々...欲しいもの全て思うがままの生活だった。金の心配は無い。以前と同じく競馬やカジノ、さらには株トレードも始めて当てまくったことで月に数百万の収入を得ている。
何もかもを見通す力があれば働かないで暮らせる...。この検索魔術本はチートアイテムそのものやな。
もちろん自堕落生活を送ってばかりではない。娯楽を満喫している片手間に、二度目の人生と同じようにこの国の「粛清」と「改造」をまた実行した!
ヤニカスやクソ運転手に、騒音まき散らす害悪どもを片っ端から殺しまくる日々!この時代は未来と比べて規制が凄く緩かったせいでまーいるわいるわゴミクズどもが。
「日本人はどいつもこいつも...特に高齢層は自分のことしか考えていないクズばっかやなおいぃ!!死ね、死ねえええええ”え”え”っ!!!」
などとお前が言うな的な発言をしながら俺にとって要らない害になる奴らをどんどん消していった。やがて直接殺すことに飽きたところで、いったん粛清を中断する。
「来年には高校生になるあいつに復讐するからな...。その際この粛清活動をやり過ぎたせいで、あいつの未来を変えてしまわんようにせなな。一旦切り上げや。この続きはあのクソ野郎どもをぶち殺した後や」
来年になると前世の俺が通ってた高校に復讐対象...上方逸樹《かみかたいつき》とその他虐め連中が現れる。今ここで派手に動き過ぎてしまってはもしかすると奴らがあの高校の生徒じゃなくなる事態になるかもしれない。雰囲気に拘る俺は、あの高校の制服を着た状態の上方どもに復讐したい。せやから今回の粛清はせいぜい自分が住む市内まで止めておく。
それに復讐対象はまだいる......社会人時代で遭ったあいつらにアパートのクソ隣人なんかも...!粛清を完遂してしまうとあいつらもきっと自動的に消してしまう。それはオモんないからなー。
「理想の国に改造するのは残りの復讐対象全員をぶち殺した後にする...と。まずは来年の高校で上方どもを。そこからさらに4~5年後、それぞれの勤め先やアパートへ行って、当時憎んだ世代のあいつらをぶち殺す!プランは決まった!!」
ノートに簡単に今後の予定をまとめて満足気に頷く。ともあれ自分が住む地域だけでも綺麗に改造してやった。
副流煙も無い、横断を邪魔する車も無い、騒音出すバイクやカーも無い。俺が住んでる地域くらいはそういう環境にしてやっても全く文句は無いよなぁ!?なんてな。
「最高や...。何もかもが俺の思うがままや!俺に優しくない、してくれへん、味方無しで敵しかおらへんこんな世の中はどうなったってかまへん」
「いくら他人が不幸になろうが悲しもうが絶望してようが全部どうでもいい。この俺が幸せでさえいれば、この世界にいる他の人間なんか全部どうでもええわ!!俺の味方をせずただ理不尽を強いるだけのクソッタレな世界なんか、俺の好きなように潰して汚して殺しまくって、改造したるっちゅーねん!!!」
「お前らがそうさせたんや!俺ばっかあんな目に遭わせたのが悪いんや!!この状況を形成したんは、お前らクズどもが選んだ結果や!!俺を理不尽に虐げて排除することしかない世の中やったから!俺はこういうことしてるだけやっっ!!!」
誰に向けて誰かに聞かせているわけでもなく、ただ確認するかのように俺は自分の本音を叫んでいた。
俺にとって優しくないこの世界が憎かった。俺に味方というものを何一つ与えてくれなかった。俺の助けを求めるサインに誰一人まともに応じようとせーへんかった...!
せやから俺は全てに牙を向けた。復讐することを決心した。このクソッタレな世界を自分好みの世界に改造してやると決意した。その際にどれ程の犠牲も他人の不幸と絶望も厭わない、むしろ指さして嗤ってやると考え付いた。
俺がこうなったのは全部お前らが悪い。そうに違いない。全部お前らが悪い。全部、全部お前らのせいや......っ!
ギリと歯を軋ませて怒りのままにコンクリートをある程度破壊してから帰る。それ以降の毎日は、「その日」が訪れるまでずっと自身の欲望に浸り続けた...。
――そしてあっという間に年が変わり春を迎える。つまり高校生になる年や!
俺は受験しなかった為15才にして無職となってしまったがどうでもええ。復讐ができるなら肩書きも職業も何も要らんわ。
天気は曇り。この曇天は...上方逸樹のクソ野郎どもに不幸と絶望が訪れるサインだと思うと気分が良くなった。
「そう......今日はあの最低ゴミカス上方逸樹どもをぶち殺す日や...。やっと殺せる。あのクソ憎い面を見下しながらどう甚振ってやろうか。楽しみや...ああ楽しみやなァ!!」
本来俺が入学するはずだった高校の屋上で俺はその時を待っていた。奴らが登校してきたらここへ引きずり出して最高の復讐タイムを始める。そしてこの高校も地獄に変えてやる。あの中学と同じ、この高校も俺の虐めは知らんぷりで済ませて全く問題にしなかった。
いくら偏差値が低い学校でもこれは無いやろ。赦してはいけない...教師どもはもちろん連帯責任で生徒全員もぶち殺されなければならない...!ああ今日はまた大量の血が流れることになるんやろーなァ!!
「くく、ふふふふふ......っははははははははははははは!!!
さぁさぁ!あと10分ってところかァ!?さァ続きを始めよう!復讐を、俺の心を救う為の儀式を!!このクソッタレな世の中をぶっ潰す為の――――」
―――そこまでよ 友聖
歪んだ笑みを浮かべながら意気揚々とこれから行うことを叫んでいざ行動開始!...と思ったところに、《《その声》》は聞こえた。
聞こえた...というより、「響いた」が正しい。脳に直接語りかけたような感じ。耳を塞いでも絶対聞こえるようなそんな感じだった。
そしてその声は...初めて聞くものではなかった。
まるで......そう、あれだ。人の心を潤すような澄んだ綺麗な声...的な。
その時俺は弾かれるように空を見た。そこに何かあると何故か思わされたからだ。案の定、空に異変が起きていた......曇っていたはずの空が、明るく光っていたのだ...!
「あれは.........魔術か何か、か...!?」
曇天を穿つような光が差し込まれてこの世界を明るく照らしている...そんな光だった。その光の中に、何か人のようなシルエットが見えた。それは徐々に俺のところに近づき、やがて俺と相対するように降りてきた。同時にその人のようなものの正体も分かったのだが......
「は、あぁ......っ!?お前、は...っ!!」
その姿を見た俺は、ただ驚愕することしかできなかった。有り得ないものを見たリアクションを取るしかなかった。
俺の前に立っている「そいつ」は、姿はアレ......「女神」を思わせる格好で天使の輪っかを浮かせて羽を生やした少女だ。これだけだったならただの初見女で済んだのだが、問題は彼女の髪と顔だ...!
《《肩にかかるくらいまで伸ばした艶やかな青い髪》》の、育ちが良い《《王女》》を思わせる少女......というか、王女だった奴、だ...!!
「友聖。あなたの凶行はここまでよ。あなたは......私が止める!!!」
リリナ王女。
異世界で復讐して殺したはずの女が、この世界に現れて俺の前に降臨した―――
*以降 回想
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