転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する

カイガ

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 「この魔術に名前を付けるなら...“神による選別”って感じか?ははは、厨二くせーな」


 自嘲しながら全てを教えてくれる魔術本を取り出してこの国の今の様子を見てみる。

 まずは政治家の大半が消えた。高給取りの無能どもなんか当然要らない。俺の生活の潤いに全く貢献していない愚物やしな。
 次に警察。あんな偽善者無能組織など役に立たない。国民を守るとか笑わせる。消えて良し。
 その次は学校関連。虐めの主犯連中とそれを助長して囃し立てる連中、さらには見て見ぬフリをして助けようとしない有象無象ども。そして何より、虐めに大して全く解決を図ろうとしないでいるクソな大人そのものの教師ども。要するに被害者になってる生徒もしくは教師以外全員の人間は絶滅したってところか。ははは、一気に少子化を進めてしまったな。
 その他...例の有害人種どもとその予備軍、さらに遠くない未来で俺に不快感を与えるであろう人間までも消えていた。ウイルスと同じ、予防は大事やからな。芽が出る前に絶やせ、や。
 あとは...俺の母と姉も消されていた。まぁ当然か。俺も無意識に二人の死を願っていたし、「粛清」の対象になるわな。家族を殺したことに何の感情も湧いてないことが、あいつらに対する死の願いが本物だったってことが改めて実感した。とりあえず身内に対するけじめはつけた。そして消えた人種の確認もこれで終わり、と。

 では逆に、どんな日本人は殺さないでおいたのか。対象は、食い物を生産・管理している連中、飲料や様々な用途になる水と電気・ガスと薬を開発・管理している連中など、生活に欠かせないもの関する要素全てだ。それらに関わる仕事をしている連中を消すと生活がだいぶ不便になるからな。まぁその中でも俺が嫌悪する人種は消しておいたが。
 次に俺の趣味...アニメと漫画と小説とゲームを創っている連中も当然生かさなければならない。あいつらを消しちゃったら今後の生活が一気につまらなくしてしまう。日本の数少ない良い要素を消すなどあり得ねーし。声優などもよほどクソゴミクズじゃない限りは削除対象外だ。あとはアニメや面白い番組を流す媒体...テレビ局もやな。書籍やゲームを全国へ届ける運輸系もある程度は残そう。ゲームをプレイする為にのテレビやパソコン機械の製造も同様。
 他には......「エロ」も不可欠やな。俺はもちろん、人間誰しにも《《性》》活は不可欠や。だから俺にとって無害なAV女優や風俗嬢は残そう。
 つーかスゲーな。俺の今後の生活を支えるのに生かすべき人種が全てこの本に記載されている。ホンマに何でも教えてくれる本やなー。

 「......お、振り返ってたらもう終わったようやな」

 1億数千万人はいた日本人の今の人口が......ほう、5割は減ったか、中々の成果や。
 ドローンカメラを大量に飛ばして各地の様子をリアルタイムで見てみる。悲鳴、怒号、絶望、怯え、パニックなど負の感情をまき散らす者もいれば...


 「ははは...僕を虐めてたから殺されたんだよ、ざまーみろ!あはははははは!誰だか知らないけどありがとうっ!!」
 「うはははははっ!やったぜ!!俺の大切な同僚を過労死させたクソ上司が死んだ!人を道具のように扱って、命を粗末にしたことに対する当然の報いだっ!!」
 「アスリートである私にとってタバコの煙は本当に迷惑で害だったのよね。清々したわ!」
 

 などと、歓喜の声も聞こえる。比率としては前者の方が上か。やっぱりこの国の人間のほとんどは、俺と違って今の日本に満足してたのか。日本だけじゃない、世界中そうかもしれない。俺には微塵も理解できないが。
 何はともあれ、これで「選別」は完了。俺にとって害になる(そうなる可能性も含む)不要な日本人は消してやった。今後は俺の害になる敵はもう現れないと考えて良いだろう。


 「理想の日本が、見えてきた...!」


 残すことは、この国の制度の改造や...。


 『消費税を撤廃することを決定。明日から消費税は無くなります』
 『自家用車とバイクの撤廃により、電車とバスの運転数を増加させることを決定』
 『学校や職場で起こる虐めやパワハラに大して刑罰を科すことに......即死罪と決定』
 『残業を1秒でも行った場合、それを強制した者・そうするよう促した者に限り懲戒免職、状況によっては死罪が科されることを決定 なお自発的に、希望して残業を行った者に対しては罰を免除する』
 『警察組織と自衛隊を解体。新たな組織を代わりに結成する方針だ』


 などと、色々好き勝手に書き換えてやった。宣言したのは俺の傀儡と化した感情の無い大臣どもだ。これが俺が思い描く日本の制度や!
 さて...「選別」でこの国の人口がまあまあ減ってしまったな。これでは人手不足で国が機能しなくなってしまう。ではどうするか?


 「“錬成”.....アバター作成」


 無人の広い荒野で魔術を行使、地面から幾万ものアバター人間が這い出てきた。こいつらも俺に忠実な人形、しかも一般の日本人より頑丈で強い。食い物も水も摂らなくても消えない、動力源は定期的な魔力の注入で良い。月に1回くらいの充電で大丈夫かな?

 「さぁ、人手が必要としている地域で活動しろ。お前らでこの国を支えろ。お前らがいればこの国は機能する―――行け」

 命令をとばすと同時にアバターどもは各地へ移動した。これなら労働不足に悩むこともない。人がいくら死のうが、俺の魔術でいくらでも補填できる。これでいつも通りの生活を保てるはずだ。


 「理想の日本が、完成したぞ...!」


 感激して少し泣いてしまった。これからは幸せで楽しい人生が待っている。復讐を終え、粛清と改造も終えた後は、楽しく生きるだけだ!!





 あれから数年――。

 

 「ん......ぁはあ♪楽しかった...気持ち良かった♪また私と遊んで下さいね、友聖君♡」
 「おーう。今日も良かったで。またよろしく」


 今日も行きつけの風俗で色々発散してから帰宅。新作ゲームをプレイ。ドハマりする。毎日娯楽尽くしの最高の日々を過ごしている。

 アバターを各地へ流出したあの日以降、やっぱりというか、残った国民はしばらくまともに動くことをしなかった。俺に対する不満や憎悪があちこちで芽生えていて、暴動が起こりかねない状況になった。
 だけども俺を憎むだけであって、暴動を起こしたり俺ん家に危害を加えたりなど俺に不快感や害を為すわけじゃなかったから、粛清はしなかった。とは言えこれが続くのも国民の生活環境を悪くする要因になりかねない。
 だから国民全てに“催眠”をかけることにした。アバター越しに魔術を放って、俺が今まで行ってきた殺戮と粛清に関すること全てを忘れさせて、今の日本に何の違和感も不満も抱かないよう暗示をかけた。名付けて「夢の国」ってところかな。
 はいこれでホントに理想の日本ができた。俺は幸せやし、他の国民らも嫌な気持ちにならない、丸く治まったね!

 という感じで国を運営して楽しい生活を送っている。海外諸国の目も何やかんやで誤魔化して平常通り。むしろ先進国の中で経済レベルがアメリカや中国に比肩するくらいにまで成長していて高評価されている。
 何の害も不快感も無い生活。美味い食い物と娯楽に溢れた家。外に出ても敵はいない、障害も無い。楽しい、楽しくて仕方がない!幸せ過ぎる!!


 楽しい、幸せだ!この気持ちに間違いは無い。嘘じゃない。食い物もアニメもゲームも漫画も小説もその他番組もエロも、全てが充実している。そこには不満は無い。あるわけがない。理想が叶って毎日が最高の一日だ!



 だが......俺はどこまでも欲深い人間だったのだと、ここにきて改めて気付かされた。




 「.........足りない」

 まだ、満出来ていない―――







*次回 第一部最終話


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