転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する

カイガ

38-1

改造編



 東京都千代田区にある首相官邸。建国史上類を見ない凶悪のテロリストが占拠していた。


 「テロだなんて随分な...。俺はただこの国のことを思って行動しているだけやのに」

 俺は官邸に突然訪問をして、現総理大臣および全大臣を集合させて、テレビで見たことある国会議会所へ連行して無理矢理座らせて、緊急座談会的なことを始める。

 「へぇ、テレビに映ってるものでしか見たことなかったけど、中身はこうなってんのかぁ。無駄に広いな。こんなに無駄に場所を取って定期的に議会をやってたんやなぁ。無能な政治家もここに呼んで出席してたんやろうなぁ......何て無駄なことをやってたんだか」

 嘲るように国会議会所を見回しながら大きめの独り言を発する俺に対して誰一人口を開く者はいない...正式には開けない、が正しいか。

 「ああ、すまんすまん。どうでもいい前置きは切り上げて本題に入ろっかー。お口チャック解除っと」

 手を叩くと同時に“見えない鎖”を解除して連行した国を運営する中心人物らを楽にさせる。全員青い顔をして荒く呼吸をしながら俺を見つめる。得体の知れない化け物の様子を窺う態度を一瞥して俺から話合いの口火を切る。

 「では改めて...手荒な連行をしてしまって悪いねー。俺は杉山友聖。ついさっき大阪からここにやって来た者で.....お前らの誰かの差し金で、俺を討伐しに来た軍隊を潰してからここへ訪問した」

 軍隊を潰したというセリフに一部が息を呑む気配がした。そしてそいつが口を開いた。

 「まさか......本当にあの規模の軍を!?戦闘機や戦車まで用意したというのに...あっさり破ってここまで...」
 「......残念ながら事実だ。件の男が私たちをここに連れて来る少し前に、自衛将官から連絡が入った......我々の軍が全滅したと...!」

 厳つい顔とガタイの良いジジイが悔しそうに震えながら事実を述べる。アイツが今の防衛大臣か。

 「なぁ防衛大臣さんよぉ、あの軍を最終的に寄越すことを決定したのは、今喋った総理大臣だって現地で聞いが、ホンマなん?」
 「......事実、だ。まさかたった一人で軍を潰すなんて予想もしなかったが」
 「そこはもう相手が悪かったとしか言えないなァ。なんせ俺にはこの世ならざる馬鹿みたいな力を持ってるから...って言った方が分かりやすいか?お前らアニメや漫画の知識が少しでもあれば説明しやすいんやけど」
 
 残念でしたね~といった調子で防衛大臣を詰って一呼吸おいて続ける。

 「まぁ分かってほしい点を挙げるなら、俺は軍隊を何度も寄越そうがそれを全て返り討ちにできる力があること。武力で俺を排除しようとしても悪戯に人を死なせるということ。俺は別に積極的に国民を殺戮しようとはしていない。それだけ分かってさえいれば俺がどういう存在かは分かるんじゃねーか?」
 「......今の発言、矛盾していないか?ならば何故お前は白昼往来の場で人を殺して回っていた?どういう目的で人を殺したというのだ?」

 さっきよりかは落ち着いた様子の......環境大臣が糾弾してきた。

 「あー、まぁ確かにお前らからにしてみれば矛盾はしてるわな。けど俺にとっては必要な粛清活動やったんや。あのな――」


 俺はこの場の連中にも俺がこの世から消すと決めた人種について簡単に説明をした。したのは良いが、誰もが俺をコイツ何言ってんだって顔で見てきたんで思わずため息を吐く。


 「...やっぱ分からないかぁ、この考えは。まぁこの考えに至った経緯を説明すると長くなりそうやから、まずは俺のかつての境遇について簡単に教えようか...。

 ―――俺は社会から虐げられていた被害者だった。学生時代では酷い虐めに遭い、同級生も教師も警察も家族も、大人ども誰一人として俺の味方になってくれた奴はいなかった。そのせいで成績不振に陥り大学進学は挫折した。
 社会人時代でも理不尽な扱いの日々だった。人間関係最悪なとこばかり。悪くもない俺ばかりが不当で意味分からない仕打ちを受けてきた。お前らが用意した救済措置の労基に頼っても解決はせず。そして相手が悪いのに俺が排除されて終わり。これが社会だと、あいつ等はそう冷たく俺を切った...」


 大臣らは俺の話を黙って...否、口を閉ざさせて黙らせて聞いている。一息ついて続きを話す。

 「...とまぁ、俺にとってこの世界は、この社会は...誰も俺を味方してくれる奴はいないんだと確信して断定した。もはや俺に救いなんて存在しないって、そう思った。思わざるを得なかった。
 
 お前らが形成してき社会が、俺を絶望させたんや」


 正確には異世界での出来事が、俺を今の俺にしたんやけど、異世界については話す必要は無いな。

 「だから、こんな味方一人いないクソッタレな世の中...今回は国に絞るが...俺は好き勝手に蹂躙することにした!手始めに俺を特に虐げた連中と理不尽に排除しやがった連中への物理的制裁...復讐を実行した!
 そしてその次が、今進めているこの国の改造や。俺が要らないと断定した人間と要素をこの国から完全に消すことで、俺の理想日本に改造する!だから、あの往来での殺戮や会社の破壊だった!ここまで話せば、俺が何がしたいか分かったんとちゃうか?」

 数秒沈黙。最初に口を開いたのは、痩せ型のジジイ......あれは文部科学大臣か。

 「杉山友聖、君は酷い虐めに遭ったと言ったな?そして助けを求めたがそれに応じる人さえいなかったと...。本当にそうだったのか?もっと視野を広くして――」
 「あーあー。もうそういうの良いから。“もっと助けを求めてればよかったんや”“もっと色んなところへ行って相談すればよかったんや”
 虐めの被害者にかける言葉は結局はそればっかや。被害者になったことない無関心な人間の常套句や。しかも悩み相談とか虐め対策とかを掲げている大人でさえそういう言葉を投げかける無関心で心が無い奴ばかりだった...!それでもお前は、俺の行動に不備があったと、そう言いたいのかな...!?」

 思わず殺気を全員に放つ。全員さらに青い顔をすした。

 「ひぃ...!」
 「というか文部科学大臣さんさァ、お前は学校の虐め問題に対して今までどう対処してたわけ?いや、対処も何も無いか。未だに虐めは無くならない...無くせないが正しいか。クソガキどもにいちいち虐めをするなって喧伝しても無理あるのが現実だ。じゃあ大人は?クソガキどもを正しく導く為に、学校に先生を置いてるはずが、その先生どもは全く機能してなかったのは俺の気のせいか?お前はそういう教育分野の大臣を務めておきながら何一つ改善できていない。俺にはそう感じるし、事実に見えてんだよクソ無能がっ!!」
 「ぐ、ぅ...!何も知らないくせに、勝手な――」
 「ああ知らねーなァ。知る機会なんてあるわけなかったからな。俺はただ祈るしかできなかった。早く虐めが無くなって欲しいってな。けど叶わなかった。お前ら代々教育分野を担当する大臣どもは何も機能していないクズだったんや!!」

 ペッと唾を吐いて、今度は厚生労働大臣に目を向ける。


 「なぁ。今この国の労働環境は、二十年前に比べてどうなってるんやろな?表向きでは残業を無くすことに成功してましたー。ブラック企業と呼べる会社は以前と比べて減りましたーって公開してるそうやけど、果たしてそうか?俺は知ってるで?実は目に見えないところで残業を強制しているクソ会社がいくつも存在していること。人間性がクソッタレ過ぎる奴が上司をしていること。ブラック企業なんてまだまだ腐る程に存在していること。お前らの統計は嘘ばかりや。俺の魔術では目を逸らしたくなるようなクソ事情を抱えているクソ会社が大量に存在してるぞ?何がアルバイトや社員の味方の労基や。
 俺が相談してもあいつらは全く相手しなかったぞ!?味方とかほざくなゴミクズが!!お前ら代々労働大臣はまっっっったく労働環境の改善なんか成功してねーんだよクソが!!」


 労働大臣に向けて針を投げる。頬をかなり抉って血を咲かせてやった。喚く大臣を無視して他の大臣に話しかける。


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