レーヴハーモニー輝く星の希望

天羽睦月

第75話 大浴場


大浴場に到着した愛理と奏は、この場所のどこに奏がいるのか探すことにした。愛理と奏は横並びで大浴場を歩いていると、奥の方にある乳白色を水素風呂にエレナが入っているのを見つけた。

「こら! 何で先に行っちゃうの!」

愛理は水素風呂に入って蕩け顔をしているエレナの頭部を軽く叩いた。叩かれたエレナは突然何が起こったのか理解が出来ていない表情で周囲を見渡すと、後ろを振り向いた瞬間に自身の後ろで右の拳を握り締めて笑っている愛理と、お腹を抱えて笑っている奏の姿が見えた。

「な、なんで握り拳なんか作って笑っているの……?」

エレナは水素風呂の奥の方に少しずつ移動すると、愛理が水素風呂にのしのしと入ってきた。愛理は後ろに下がり続けるエレナに尚も迫ると、エレナがごめんなさいと叫んだ。

「ごめんなさい! 温泉が気になって先に入っちゃった!」


エレナが謝ると、愛理は気をつけなさいよと言ってエレナの左腕を掴んだ。

「な、何するの!?」

エレナが怯えたように言うと、愛理が三人で身体洗ってから温泉に入るのよと言う。それを聞いたエレナは、そっかと笑って水素風呂から出て奏に洗いっこいようと言った。

「ちゃんと洗えるの!? 私が不安だよ!」

奏はエレナに洗い方を教えるからと言いながら、小走りで洗い場に行くエレナの後を奏が追っていた。奏は洗い場に設置してある備え付けのシャンプーとボディーソープを手に取り、エレンにこれを使ってくれと説明をした。奏はエレナに先に洗ってあげると言ってエレナの髪を洗い始めた。

「こういう風に洗ってね! ちゃんと洗うんだよ!」

笑顔でエレナに話しかけながらエレナの髪を洗っていくと、エレナが頭部の右側が痒いと言って奏に洗わせていく。

「もう痒いところはありませんかー?」

奏がエレナの髪を洗いながら聞くと、エレナはもう大丈夫だよと言った。次にエレナに私の髪を洗ってと言って、奏はシャンプーをエレナに渡した。

「これで洗うね! 手に付けて奏の髪を洗えばいいんだよね!」

そうだよとエレナに言うと、お姉ちゃんから洗い方教わらなかったっけと聞いた。

「教わったけど、まだそんなにやったことないから難しくて……」

エレナが難しいと言うと、私がやったみたいに爪を立てずに髪と頭皮を洗ってねと奏が言う。

「わかった! やってみるね!」

エレナは奏に洗ってもらったことを思い出しながら、奏の髪を洗っていく。洗い途中に爪を立ててしまって奏が痛がっていたが、奏は再度説明をしてエレナに洗い続けてもらう。エレナは奏の髪を洗っていると、慣れてきて楽しいと言っていた。

「楽しいのはいいけど、流石に洗いすぎ!」

奏はもういいよと言ってお湯で洗ってと言った。すると、もう終わりかと残念そうな顔をしながらシャワーで洗っていく。愛理はそんな楽しそうにしている二人を見ながら、一人で髪を洗っていた。

「さて、次は身体を洗おうかしら……てか、二人も騒いでいないでさっさと身体洗いなさいね」

愛理がそう言うと、奏とエレナは二人してはーいと言って自身で身体を洗い始めた。愛理は妹が二人いると大変だわと呟くと微笑して身体を洗い続ける。

「私は洗い終わったから、露天風呂に行ってるからゆっくり洗いなさいね」

愛理はタオルを畳んで頭部に乗せて露天風呂に行った。その姿を見たエレナは、奏に露天風呂に行くにはあんな風にしないとダメなのと聞くと、奏はそんなことはないよと返した。

「そうだよね! びっくりしたよ!」

エレナがそう言うと、私たちも早く露天風呂に行こうと奏が言った。エレナはそうだねと言って身体を洗い終えた。

「お姉ちゃんが行った露天風呂に行こう!」

奏のその言葉を聞いたエレナは、早く行こうと言って小走りで露天風呂がある奥の扉を開いた。扉を開くとそこには屋上から見る外の景色が広がっていた。孔雀温泉の建物の側にある海が良く見え、波の音などの自然の音が耳を澄ますと聞こえてきそうであった。

「あ、やっと二人とも来たね! 遅いよー」

愛理が大理石で丸く作られている風呂に、源泉の温泉を注がれている大理石風呂との名前の湯船に浸かっていた。

「その温泉もいいけど、ヒノキ風呂って書かれているあっちの海が見えるのに入りたい!」

エレナが指さした先には、ヒノキの木で作られている長方形のヒノキ風呂と書かれている長い屋上階の露天風呂の縦の長さ五メートルにぴったりと沿うように作られている特別な湯船であった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品