レーヴハーモニー輝く星の希望

天羽睦月

第66話 いちごジャムパン


愛理は沈黙した宇宙船の中に入ると、数個の扉を潜った先に倒れている人影を見つけた。その人影に近づくと日本人と思わしき顔をしている人間の女性を見つけ、愛理はその身体に手を当てて揺さぶる。何度か揺さぶると、倒れている女性は目を開けて愛理に突然襲い掛かってくる。腰に付けていた短剣を引き抜いて愛理の首筋を切ろうとするも、愛理は紙一重でかわしていく。愛理は白色に戻った剣を振るって短剣を落とす。

愛理は女性の頬を叩くと、この船は何で襲ってきたと問いただす。すると、この地球はもともと住んでいた我々アウレアの民のものだと言う。愛理はアウレアの民とは何なのと聞くと、その女性は一万年以上前にこの地球を脱出して、違う星系の惑星に移住した地球人だと言う。地球人なのと愛理がそう聞くと、どうして現在地球に住んでいる地球人を襲うのかと聞く。すると、その女性はこの惑星に現在住む人間は我々にはない魔力器官を持っていると言う。

我々は他惑星の魔力器官を持つ生物から魔力器官を移植することで一定期間魔法を扱うことが出来るが、もともと魔力器官を持つ現在の地球人は永久に魔法を扱える。我々は地球に戻り、現在繁栄している地球人を捕らえて魔力器官を摘出すると言ってくる。愛理は何でそんなことをするのかと聞こうとした瞬間、愛理は目が覚めた。愛理は自身の首筋を触ると大量の汗をかいており、今見ていた夢を思い出していた。

「皆の死体に、砂漠に宇宙船……それに日本人と思われる顔を持つ女性が言っていた魔力器官の摘出……ただの夢とは思えない……」

愛理は不思議な夢を見たと思いながら、タンスに入れているハンカチを取り出して汗を拭く。愛理は何で突然不思議な夢を見たのかと疑問に思うが、最近自身が戦っている夢を見ることが多く、これは未来視なのかと思うことがある。しかし、そんな現象が自分に起こるわけがないと思い、気にしないようにした。

ベットから起き上がりスマートフォンを見ると、時刻は深夜一時であった。愛理は風呂に入って寝ようと決めると、汗で濡れたハンカチを持って風呂場に行く。風呂場にある洗濯機にハンカチを入れるとそのまま服を脱いでシャワーを浴びる。愛理は疲れた身体や心を癒す。お風呂はやはりいい文化だと感じていると、身体と頭を洗い終わったので脱衣所に出る。愛理はバスタオルで身体を拭いて部屋着に着替えると、自室に戻っていく。時刻は二時を回っているので、すぐに寝て朝に備えようと決める。

早く学校に行きたいと思いながら朝になるのを布団に入りながら考えているの、すぐに眠りに落ちてしまう。愛理は自身の思っている以上に身体的、精神的疲労が蓄積している。自身ではそのことに気がつかないが、ふとした瞬間に疲れが出てしまい、ベットで瞬時に寝てしまう。そんなことは知らない愛理は、布団を被って寝ていると、今度は夢を見ずに熟睡をしていた。そして、誰かに身体を揺すられた感覚で起きる。

「もう朝ぁ? まだ寝たい……」

愛理が目を擦りながら身体を起こすと、目の前にエレナがいちごジャムを塗っている食パンを加えていた。愛理は一瞬何をしているのか理解が出来なかったが、エレナが目の前にいることは理解が出来た。

「いちごジャムパン! いちごジャムパン!」

エレナは愛理に何度も壊れたレコードのように、いちごジャムパンと連呼している。愛理は何よそんなに連呼してとエレナに言うと、エレナはいちごジャムパンと再度言う。

「いちごジャムパンがどうしたの? 朝ごはんだったの?」

愛理はエレナが起こしに来たということは、朝になり、朝食であるいちごジャムパンを咥えているだけでなのだろうと察した。エレナは愛理が察したように、いちごジャムパンが朝ごはんで美味しいと煌く笑顔で愛理に言う。

「わかったから、そんなにパンクズを飛ばさないで……」

愛理な顔には、エレナが喋るたびにパンクズが飛ばされていた。愛理はエレナを落ち着かせると、机の上に置いてあるボックスティッシュから一枚取り出してベッドに散らばるパンクズを拾う。

「それで、エレナは起こしに来てくれたの?」

ベッドからでた愛理がエレナに聞いてみると、エレナは愛理の右腕を掴んで朝ごはん美味しいから早く行こうと何度も右腕を揺らして急かす。愛理はわかったから揺らさないでと何度も言いながらエレナに連れられて二階のリビングに歩いて行く。リビングに入ると椅子に座って、星空校長が優雅に紅茶を飲んでいる姿が愛理の目に映った。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く