第56話 片付け

愛理の部屋で敷布団に入ったエレナは、始めて寝る敷布団にウキウキしていた。 愛理はベットに入って明日エレナの部屋を作るために片付けないとと、どんな風にするか悩んでいた。

「エレナの部屋のレイアウトはベットにタンスに……てか、こっち見ていないで早く寝ないなさいよ。 なんやかんやもう十一時なんだからね」

愛理の言葉を聞いたエレナは、もっと起きていたいと言う。 しかし、愛理は寝ることは良いことよと返す。

「そうなの？ わかった！ もう寝る！」

エレナはすっと目を閉じて布団を口元まで持ってきていた。 愛理はそのエレナの姿を見て、やるやると微笑していた。 そして、自身も目を閉じて寝ることにした。 翌日は平日であるのだが、愛理は安静をということで休みということになっている。

「ゆっくり起きて、エレナの部屋を片付けよう」

そう呟くと、愛理は寝息を立て始めた。 愛理はエレナと暮らすことの楽しみしか考えていなかった。 未知なる世界から来た不思議な少女。 黒羽エレナとなった女の子は、これから愛理の世界で悩み苦しむが、苦痛と共に味わったことのない愛情や絆を知ることとなる。そんなことは知らないエレナは、幸せそうな笑顔で何か食べているような口の動きをしながら、もう食べれないし飲めないよと寝言を言っていた。

朝、予定していた七時半に目が覚めた愛理は床で寝ているエレナを起こさないようにエレナを跨いで静かに部屋をでていく。二階に降りると、そこには楓が朝ごはんの準備をしていた。 愛理を見た楓は、やっと起きたのねと言う。 愛理は早めに起きたつもりなんだけどなと言うと、椅子に座って楓が作った目玉焼きとウインナーに白米を食べ始めた。

「もうすぐエレナも起きると思うから、私と一緒に部屋片づけて」

愛理が楓に食べながら言うと、分かったわと楓が言う。 楓も愛理と一緒に朝ごはんを食べ始めた。 正人と奏は既に家を出ているので、愛理は久しぶりの平日の日中を感じていた。

「さて、食べ終わったし片付けますか！」

愛理と楓は掃除機と濡れ雑巾を持って、エレナの部屋になる予定の物置部屋を片付け始めた。 長らく物置部屋となっていたので、埃が多く、マスクをしなければ咳き込むほど辛い空間であった。

「こんなに埃があるなんて……この部屋を片付けるのは至難の業ね！」

愛理がそう言うと、楓は窓を開けて空気を循環させようとしていた。 しかし、すぐにはならずに楓は咳き込んでしまう。

「早く掃除してでましょう！」

楓のその言葉に愛理もそうねと返し、家具の移動をして掃除機や濡れ雑巾で部屋を片付けていく。 時折大きな物音を立ててしまっていたので、その音で目が覚めたエレナが目を擦りながら部屋に入ってきた。

「なにしてるのー……音が大きいよ……」

部屋に入ってきたエレナを見た愛理は、その言葉より姿に吹き出してしまった。

「エレナの髪の毛が四方八方に流れて凄い寝ぐせになってる！」

お腹を抱えて笑う愛理を見たエレナは自身の髪の毛を触ってみると、髪の毛が前や後ろ、右や左に寝ぐせがついてタコ足のようになっていた。愛理がエレナの寝ぐせを見て笑っていると、楓が愛理の頭頂部を叩いて笑いすぎよと軽く怒った。 愛理は楓に対していいじゃないと言うが、エレナが可哀そうよと言うと愛理はごめんなさいと楓に謝った。

「エレナ―！ 寝ぐせも可愛いわよ！」

愛理が可愛いわよと叫びながら二階にある洗面台に走っていくと、エレナが髪を濡らして整えている姿が見えた。 愛理はそんなのじゃダメよと言ってエレナを洗面台から離れさすと、櫛とドライヤーを駆使してエレナの寝ぐせを整えていく。

「こんな風に整えるのよ。 女にとって髪の毛は命の次に大事なんだから、大切に扱いなさい」

愛理のその言葉を聞いたエレナはありがとうと言って、整えてもらった髪の毛を優しく触っていく。

「自分の髪じゃないみたい！ 凄い綺麗！」

自身の髪を尚も触り続けていると、愛理がそろそろ上に行こうとエレナに言う。 エレナは私も片付けると言い、愛理は一緒にしましょうと返した。

「片付けって初めてだから、凄い楽しみ！」

エレナが笑いながら言うと、愛理は慣れると楽しいわよと言う。 その言葉を聞いたエレナは両手を上にあげてやるぞーと声を上げていた。愛理とエレナが談笑をしながら階段を上がって片付けている部屋に入ると、既に楓によってほぼ片付けられていた。 愛理はエレナと片付けたかったと言うと、来るのが遅いのよと楓は笑いながら言っていた。