夜の詩

小鳥 薊

第4話 動悸


たっぷり肥えた小動物
かと思ったら 老婆

三角コーナーで何してんの

生ゴミになったの

老婆はさっき
私に暴言を吐いた
弾丸も尽きたころ
般若と泣き女の境を
右往左往していたんだ

私はそれを
ただ見ていた




「ナナカマドの葉がずいぶん落ちましたね」
「落ちていません」

「ほら見て、これはナナカマドの木です」
「そうですね」
「枝の葉がないでしょう」
「そうですか」

よくもまあ
ぬけぬけと

「実は落ちるのですか」
「落ちるわけありません」

罵るように
嘲るように




イエスと言わない男の、イエスの判別
ノーと言えば、ノー
ノーと言っても、イエス
こちらが、イエスと解釈すると
機嫌を損ねるのはなぜだろう




矛盾を孕んだ叱責を
さも当然のように
まさか趣味のように
やはり快感のように

小石を拾った少年のように瞳を輝かせ
矛盾などないように
矛盾を受けつけない
矛盾だらけのヒステリック上司が
今朝も喚き散らしている

矛盾を論破したら
紅潮して怒り出すのは目に見えている




彼等の動悸がわからない
彼等を解剖してスケッチしたら
わかってくるのか……
脳のレントゲン写真
覘いたら見えてくるのか……

憎き彼等に幸あれ
私の明日から消えろ

          

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