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彼氏が赤ちゃんになっちゃった中学生の育児日記

小鳥 薊

美波、眠さの限界に達する

(一平くんを元に戻す方法……。考えるんだった。)

一平くんの最後のデートから、怒濤の三週間が過ぎていた。私は、新米ママがだいぶ板に付いてきたと思う……自分でいうのもなんなんだけど。
ママもすごく協力してくれて、私は、あの泣きじゃくって醜態を曝した夜がきっかけで、自分からもママに甘えることができるようになった。それだけで、心の余裕が全然違う。
私は、確かに体はいつも疲れていたし、いつだって眠たかったけれど、一平くんの子育てに満たされていた。もしかしたら、大人になってもこんな経験をさせてもらえる機会ってないかもしれないじゃない。私が誰かと結婚して(元に戻った一平くんだったら嬉しいんだけど)、子どもがほしいって望んでも、授かるかどうかなんて保証はない。今を一生懸命生きよう、私は今までの自分よりもはるかに充実した毎日を送っていると思えるようになった。


(それにしても、眠たくて、頭がぼーっとするなあ。)

(期末試験も迫っているから、勉強しなくちゃならないんだけど……そんな時間があるなら眠りたい……。)

期末試験を目前にして、私はママとあることを相談していた。
それは、一平くんを保育所に預かってもらうことだった。今までは、私が学校にいる間はママに一平くんを見ていてもらっていたんだけれど、ママだってそれなりの歳だし(って、こんなことママに言ったら怒られるわ)、口には出さないけど、ママの目元のクマ! 誰かを気遣ってあげられる余裕もないこんな私だって、心配しちゃう。

(今日、学校に行ったら、郁美ちゃんに保育所のこと聞いてみよう!)

(あれ、でもなんだか、急に寒気がするような――それに視界が揺れているな。)

私は、ふらふらしながら体温計を取りにいくついでに時計をちらりを見た。もうそろそろ起きる時間だ。一平くんはまだすやすやと眠っている。
(可愛いな。)

布団に倒れ込み、熱を測る。布団から出る前よりもずっと寒くて、縮こまりながら耐えた。

――ピピピ。

(うわ、三十八度四分!)
やはり、熱があった。私は体温計を持ったままふらふらと歩き出し、階段を降りた。

「おはよう、美波。」
「ママ、熱でちゃったよ。」
「うっそー、あら本当にでこが熱い!」
私の額に触れたママの手は冷たくて気持ちよかった。私はそのまま深い眠りにつけたら幸せだろうなと思った。
「今日は、学校休みなさい。一平ちゃんのことは、いつもどおりママが面倒みてあげるから。」
「ママ……ありがとう。」


……。

どうやら、眠さが限界に達したようだ。私はママの前でそのまま倒れ込み、深く眠ってしまったらしい。気がつくと布団の中にいて、時計の針は午後二時を指していた。
とても、静かだった。
(休みの午後ってこんな感じだったな。)
一平くんの声も聞こえてこない。ママと買い物にでも出掛けたのか、それとも昼寝でもしているんだろうか。
私は久々に何もしないでぼーっと過ごした。

朝に飲んだ市販薬の風邪薬が効いているみたいで、いろいろ考えられる頭になってきた。
体を起こすにはまだ回復が必要みたいだったので、とりあえず私はこの時間を使って、今まで後回しにしていたことを整理してみることにした。

(あの日、デートで神社に寄ったのよね。それから、流れ星。きっとあの隕石が関係しているんじゃないかな……そんなことって、ないかなあ。)

私は、あの日の気象や天体についての情報を集めようと、スマホをいじった。
(この世界では、あの夜の出来事はどうなったことになっているんだろう。)
心配なのは、あの夜に寄った神社がこの世界に存在しなかったり、隕石の痕跡がなかったことになっていたらどうしよう、ということだった。
解決の糸口を探るためには、どうしても痕跡がないことには行き詰まってしまう。私は、あの夜の日にちを思い出し、思いつく限りのワードをさっそく検索ワードにかけた。

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