幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)

雪月 桜

真っ向勝負

「いっくよぉぉぉ! 全MP消費! 魔導銃フルバースト!」

長いタメの後に放たれた、人型兵器の極大赤レーザー。

その脅威に対抗すべく、みのりんも己の切り札を解き放つ。

魔導銃の消費MPを限界に設定し、全てのエネルギーを収束させた、文字通りの“最後の一撃フルバースト”。

それは、一条の光となって、人型兵器のレーザーと真っ向から激突した。

「うぉぉぉっ!」

気持ちで押し負けてたまるかと、みのりんが叫ぶ。

まるで、命を振り絞るかのような咆哮と共に、みのりんのMPゲージが凄まじい勢いで減少していく。

対して、人型兵器の方は、まだ余裕が見られる。

先程の長い予備動作の間に、どこからか、エネルギーを供給されていたのか。

事の真相は不明だが、みのりんの窮地には変わりない。

「みのりんさん!」

遠くから、ラックの声が聞こえる。

何故か、その姿は見当たらないが、みのりんを案じているのは間違いない。

そして、みのりんは信じている。

このピンチを凌げば、ラックが必ず勝負を決めてくれると。

だから――、

「大丈夫! ラックさんは前だけ見てて! その先は、きっと勝利に繋がってるから!」

不安に揺れるラックの背中を押すように、声を張り上げた。

そう、何も心配することなんかない。

だって、自分には頼れる仲間達が付いているのだから。

「やれやれ……。本当に君は無茶ばかりするものだ」

そんな声と共に、一人の男が、みのりんの目の前に飛び込んだ。

まさに、そのタイミングで、みのりんの砲撃が終わりを迎える。

そして襲い来る赤い閃光。

しかし、男が構えた盾を中心として半球状の障壁が生まれた。

かつて、みのりんのフルバーストすら防いで見せた、彼の奥の手だ。

その障壁は、二人を飲み込まんと迫るレーザーをことごとく散らし、なお原型を保っている。

「ベイドさん!」

「全く、君というやつは……。まさか、あんな攻撃に真っ向勝負を挑むなんてね。まぁ、それでこそ、この僕が認めた甲斐があるというものだけどね」 

レーザーの脅威に晒されつつも、こちらを振り返って、不敵な笑みを浮かべるベイド。

「あははっ。危なくなっても、きっとベイドさんが助けに来てくれるって思ってたから!」

「……はぁ。人を頼るのは結構だけど、そんな簡単に他人を信じてたら、いつか足元を掬われるよ?」

全幅の信頼を乗せた、みのりんの言葉に何を思ったのか、ベイドはプイッと前を向いてしまう。

「え〜? ベイドさんは、もう他人じゃないでしょ? だって、私たち友達じゃん!」

「……」

みのりんの言葉に、何の反応も示さないベイド。

――いや、良く見ると、その耳が真っ赤に染まっている。

「あっ、ベイドさんが照れてる!」

「照れてない!」

先程までの緊迫感は、どこへやら。

敵の攻撃の真っ最中にも拘らず、そんな気の抜ける遣り取りが交わされていた。

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