幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)

雪月 桜

正しい攻略法

「うーん、さすがに最深部のボスなだけあって硬いなぁ。それに、レーザーに邪魔されて、ほとんど射撃が通らないし。しかも黄色いやつは反射までするとか面倒くさいよ! カナちゃんたち、よく二人だけで戦ってたなぁ」

迫りくるレーザーを自慢の機動力で避けながら、みのりんが一人、呟いた。

レーザーが放たれた後に反射神経で躱すという、カナのような芸当は出来ないため、縦横無尽に動き回って照準を外す戦法だ。

そして、それでも対応が追い付かないものは、両手の二丁拳銃で撃ち落とす。

その結果として、ここまでの被弾数はゼロ。

良く言えば互角の戦いだが、悪く言えば膠着こうちゃく状態で決め手に欠ける。

可能なら一人でケリを付けようかとも思っていたが、どうやら厳しそうだ。

それに、自分だけで全てを片付けてしまうと、みのりんの企みが達成できなくなってしまう。

やはり、色々な意味で、カナ達の力が必須だった。

「それに、アレを利用するなら、私よりカナちゃんの方が適任だしな〜」

そう言って、みのりんは床の一点を見つめる。

そこには放射状のヒビが入っていた。

この部屋に来た時に、みのりんが銃撃(という名の砲撃)を撃ち込んだ場所だ。

「あっちこっちで倒れてる柱といい、この部屋には壊せるものが多いんだね。そして、それがボス攻略の鍵になってる……っと!」

前後左右から迫ったレーザーを、【空中ジャンプ】で避ける、みのりん。

そして、着地の瞬間を狙って放たれたレーザーを片方の銃で迎撃し、もう片方の銃で反撃する。

しかし、そのエネルギー弾は、人型兵器に届く前に撃ち落とされてしまう。

「う〜ん、やっぱり何度やっても駄目みたいだね。一人の時なら強引に【銃剣】で攻めるけど、今は待ってたら増援が来るしなぁ。……仕方ない。ちょっと退屈だけど時間稼ぎに集中しようかな?」

あまり気乗りしない結論に達して、テンションが下がる、みのりん。

しかし、そこへ待ち望んでいた声が、ようやく届く。

「待たせたな、みのりん! 俺様、完全復活だぜ!」

「カナちゃん! ……あれ、ラックさんとベイドさんは?」

振り返った、その場所に、二人の姿はない。

そこに居たのは、謎のポーズでドヤ顔を決めるカナだけだ。

「まだ回復中。俺様だけ先に戻ってきたんだ。どうせ、あそこに居ても出来ることねぇしな。俺様が活躍するのは、やっぱり戦場だぜ!」

「なら、ちょうど良かった! 帰って来て早速で悪いけど、ちょっと、そこの壁を殴ってくれる?」

部屋を囲む4つの壁。

その中で一番近いものを指差す、みのりん。

「…………今度は何を企んでんだ?」

「人聞きが悪いなぁ。これはスタッフさんが考えた正しい攻略法なのに。……ただの予想だけど」

「おい、最後なんつった?」

「なんでもないよ! ほらほら、こうしてる今もレーザーがビュンビュン飛んできてるんだから早くして! 撃ち落とすのも疲れるんだからね!」

「……チッ、しゃあねぇなぁ!」

みのりんの要請に従ったカナが、腰を落とし、上半身を捻り、全身を躍動させて拳を放つ。

ステータスや称号の力も合わさって、さながら砲丸と化した、その小さな拳の一撃は、重々しい響きで壁に打ち付けられた。

結果、金属製の壁に亀裂が走り、中心部が大きく凹む。

「うん! その調子で部屋中をボコボコにしちゃって! 平らな所が無くなるくらい!」

「……なるほどな。ようやく俺様にも見えたぜ。勝利への道筋がよぉ!」

そう言って、ヤル気を漲らせたカナが次々と拳を放ち、壁や床を破壊していく。

さらに、みのりんの銃撃により、天井にもダメージが与えられ、部屋全体がボロボロに荒れ果てていった。

そうして、ラックやベイドが合流する頃には、部屋の様子が一変していたのだった。

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