幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)
カナの実力
「ほらほら、どうしたぁ!? もっと気合い入れて掛かってこいや!」
真っ赤な生地に金の刺繍のチャイナドレスが翻る。
暴漢共を相手に、広場で獅子奮迅の活躍を見せるカナは、黒い髪をお団子に纏めた中華風のスタイルだ。
スリットの部分からチラリと覗く足は、まだ、それほど長くはない。
カナの身長は友人内で一番に低く、140センチほど。
みのりんとは別の理由で毎朝、欠かさず牛乳を飲んでいるのだった。
「このガキ調子に乗りやがって……のわぁ!?」
「おい、バカ、武器をこっちに——うわぁ!?」
男が額に青筋を浮かべて突き出した槍を掴み、別の男に向かって投げつける。
その際、相手の勢いを殺さず、上手く利用することに注意を向けた。
その結果、槍は狙い通りに男の体を貫通し、HPをそれなりに減らす。
「ちっ、やっぱ素手だと効率悪いなぁ、おい。けど、まぁ、この苦闘こそロマンプレイの醍醐味だぜ!」
その後も、滑るような独特の足運びで敵を撹乱し、同士討ちを狙い、時には自ら手を出して強制的に事故を起こす。
相手が自棄になって魔法を使ってきた時は、更に都合が良い。
敵が詠唱している間に間合いを調整して、寸前で飛び退き、周りを巻き込む。
そうして、効率よく敵を狩っていった。
カナは頭で考えるのではなく、直感に従って、これら全てを、こなしている。
「もういい、お前ら下がってろ! 俺が一人で相手する!」
100人以上いた集団が、ほぼ壊滅状態になって、ようやくリーダーの男が重たい腰を上げる。
その身長は2メートル近く、カナと比べれば、その体格差は圧倒的だ。
ただし、このゲームでは、体格差は能力に影響しない。
身長や体重が攻撃力の計算に含まれる事はないし、物を動かす際の判定は可能か不可の二択だけ。
可能なら、たとえ片手でも簡単に動かせるし、不可なら力をどれだけ込めても動かせない。
とはいえ、見た目が生み出すプレッシャーまでは無視できないだろう。
「くっくっく。ようやくボス戦かよ。燃えてきたぁっ!」
ただし、そのプレッシャーが常にマイナスに働くとは限らない。
少なくとも、カナにとって、プレッシャーは戦意を高揚させる起爆剤にしかならなかった。
「図に乗るなよ、小娘ぇッ!」
開戦直後、リーダーの男は大振りの両手斧を、いきなり地面に叩きつけた。
瞬間、大地に無数の衝撃波が走り、カナへと迫る。
「おおっとぉ!?」
暴漢との戦いで、初めて焦った声を上げるカナ。
しかし、その動きに淀みはなく、素早く的確なステップで回避していく。
「ふぅ~、危ねぇ危ねぇ。もうちっとで当たるとこだったぜ」
「嘘つけ! 全部、危なげなく避けてただろうが!」
「まぁな! リップサービスって奴だ!」
チュッ、と投げキッスの仕草をして見せるカナ。
男は、良い感じに敵意を煽られたようで、プルプルと肩を震わせている。
「しっかし、どうすっかな~。負ける気はしないけど、一対一だと決め手がねぇ。……なぁ、お前ら、別に不意討ちとかしてくれても良いんだぜ?」
周りで見ている暴漢たちに、ニヤリと視線を向けてみるが、リーダーが下がっているように命じたためか、動く気配はない。
戦闘中の連携は今一つだったが、どうやら統率は取れているらしい。
「ちぇ~。ダメかぁ。……ってか、良く考えたら、もう別に戦う必要ないな。あの兄ちゃんも、きちんと逃げられたみたいだし。……つーか、やべっ!? 待ち合わせの時間、過ぎてんじゃん! あーあ、また、やっちまったなぁ。みのりん怒ってっかなぁ」
もはや男そっちのけで、メニュー画面を確認して一人、焦っているカナ。
遅刻常習犯として、一応の罪悪感は覚えているので、この後の事を思うと気が重いのだ。
が、もちろん暴漢の男に、そんな事情は関係ない。
「てめぇ、このガキ! 俺を無視するとは良い度胸だな、あぁん!?」
散々コケにされたせいか、既に顔は茹で上がったタコのように赤い。
そのうち、煙か湯気でも吹き出すのではなかろうか。
「あー、わりぃわりぃ。んじゃ、時間もないことだし、こうしようぜ? デュエルの一撃決着モードで勝負しよう。それで、俺様が勝ったら大人しく帰れ。俺様が負けたら、お前らのパシりだ。煮るなり焼くなり好きにしろ」
相手に悟られない自然な動きで、足の爪先を地面に突き刺しつつ、カナは提案する。
ぶっちゃけ、一度ログアウトしてしまえば、簡単に逃げられるのだが、自分で決めて首を突っ込んだ喧嘩を中途半端に終わらせるのは後味が悪い。
そう思っての発言だったが、暴漢のリーダーは顔をしかめた。
「はぁ~? なんで、俺がてめぇの言うこと聞かなきゃなんねーんだよ。このまま、お前をぶちのめせば、それで終わりだろうが」
と、言いつつ、ここまで手を出さずに大人しく待っているが、もしやツンデレなのだろうか。
「いや、どーせ避けるから、時間の無駄。つーか、デュエルを断るってことは、要するに自信がないんだな?」
「んだと、このガキ! いいぜ、乗ってやんよ、吠え面かくなよ!?」
あっさり挑発に乗って、デュエルの申し込みを受け入れるリーダー。
そして、戦闘開始のカウントが10から始まり、0になった瞬間、二人は互いに地面を蹴った。
ただし、カナは後ろに、リーダーは前に。
「ハッ! いきなり下がるなんて、さっきの威勢はどうした……なぁっ!?」
カナの後退を嗤ったリーダーだか、その顔は、すぐさま驚愕に変わる。
まぁ、それも当然だろう。
硬い感触が返ってくるはずの地面が、何故か砂漠のように沈み込んだのだから。
「おいおい、隙だらけだぜ? さっきの威勢は、どうしたぁ!?」
もちろん、そのチャンスを作り出したカナが、それを利用しない訳がない。
開戦直後、一歩だけ大きく飛び退いたカナは、すぐさま体勢を整えて前に突進する。
そして、砂に足を取られてバランスを崩している、リーダーの無防備な溝尾に、その小さな拳を全力で叩き込んだ。
真っ赤な生地に金の刺繍のチャイナドレスが翻る。
暴漢共を相手に、広場で獅子奮迅の活躍を見せるカナは、黒い髪をお団子に纏めた中華風のスタイルだ。
スリットの部分からチラリと覗く足は、まだ、それほど長くはない。
カナの身長は友人内で一番に低く、140センチほど。
みのりんとは別の理由で毎朝、欠かさず牛乳を飲んでいるのだった。
「このガキ調子に乗りやがって……のわぁ!?」
「おい、バカ、武器をこっちに——うわぁ!?」
男が額に青筋を浮かべて突き出した槍を掴み、別の男に向かって投げつける。
その際、相手の勢いを殺さず、上手く利用することに注意を向けた。
その結果、槍は狙い通りに男の体を貫通し、HPをそれなりに減らす。
「ちっ、やっぱ素手だと効率悪いなぁ、おい。けど、まぁ、この苦闘こそロマンプレイの醍醐味だぜ!」
その後も、滑るような独特の足運びで敵を撹乱し、同士討ちを狙い、時には自ら手を出して強制的に事故を起こす。
相手が自棄になって魔法を使ってきた時は、更に都合が良い。
敵が詠唱している間に間合いを調整して、寸前で飛び退き、周りを巻き込む。
そうして、効率よく敵を狩っていった。
カナは頭で考えるのではなく、直感に従って、これら全てを、こなしている。
「もういい、お前ら下がってろ! 俺が一人で相手する!」
100人以上いた集団が、ほぼ壊滅状態になって、ようやくリーダーの男が重たい腰を上げる。
その身長は2メートル近く、カナと比べれば、その体格差は圧倒的だ。
ただし、このゲームでは、体格差は能力に影響しない。
身長や体重が攻撃力の計算に含まれる事はないし、物を動かす際の判定は可能か不可の二択だけ。
可能なら、たとえ片手でも簡単に動かせるし、不可なら力をどれだけ込めても動かせない。
とはいえ、見た目が生み出すプレッシャーまでは無視できないだろう。
「くっくっく。ようやくボス戦かよ。燃えてきたぁっ!」
ただし、そのプレッシャーが常にマイナスに働くとは限らない。
少なくとも、カナにとって、プレッシャーは戦意を高揚させる起爆剤にしかならなかった。
「図に乗るなよ、小娘ぇッ!」
開戦直後、リーダーの男は大振りの両手斧を、いきなり地面に叩きつけた。
瞬間、大地に無数の衝撃波が走り、カナへと迫る。
「おおっとぉ!?」
暴漢との戦いで、初めて焦った声を上げるカナ。
しかし、その動きに淀みはなく、素早く的確なステップで回避していく。
「ふぅ~、危ねぇ危ねぇ。もうちっとで当たるとこだったぜ」
「嘘つけ! 全部、危なげなく避けてただろうが!」
「まぁな! リップサービスって奴だ!」
チュッ、と投げキッスの仕草をして見せるカナ。
男は、良い感じに敵意を煽られたようで、プルプルと肩を震わせている。
「しっかし、どうすっかな~。負ける気はしないけど、一対一だと決め手がねぇ。……なぁ、お前ら、別に不意討ちとかしてくれても良いんだぜ?」
周りで見ている暴漢たちに、ニヤリと視線を向けてみるが、リーダーが下がっているように命じたためか、動く気配はない。
戦闘中の連携は今一つだったが、どうやら統率は取れているらしい。
「ちぇ~。ダメかぁ。……ってか、良く考えたら、もう別に戦う必要ないな。あの兄ちゃんも、きちんと逃げられたみたいだし。……つーか、やべっ!? 待ち合わせの時間、過ぎてんじゃん! あーあ、また、やっちまったなぁ。みのりん怒ってっかなぁ」
もはや男そっちのけで、メニュー画面を確認して一人、焦っているカナ。
遅刻常習犯として、一応の罪悪感は覚えているので、この後の事を思うと気が重いのだ。
が、もちろん暴漢の男に、そんな事情は関係ない。
「てめぇ、このガキ! 俺を無視するとは良い度胸だな、あぁん!?」
散々コケにされたせいか、既に顔は茹で上がったタコのように赤い。
そのうち、煙か湯気でも吹き出すのではなかろうか。
「あー、わりぃわりぃ。んじゃ、時間もないことだし、こうしようぜ? デュエルの一撃決着モードで勝負しよう。それで、俺様が勝ったら大人しく帰れ。俺様が負けたら、お前らのパシりだ。煮るなり焼くなり好きにしろ」
相手に悟られない自然な動きで、足の爪先を地面に突き刺しつつ、カナは提案する。
ぶっちゃけ、一度ログアウトしてしまえば、簡単に逃げられるのだが、自分で決めて首を突っ込んだ喧嘩を中途半端に終わらせるのは後味が悪い。
そう思っての発言だったが、暴漢のリーダーは顔をしかめた。
「はぁ~? なんで、俺がてめぇの言うこと聞かなきゃなんねーんだよ。このまま、お前をぶちのめせば、それで終わりだろうが」
と、言いつつ、ここまで手を出さずに大人しく待っているが、もしやツンデレなのだろうか。
「いや、どーせ避けるから、時間の無駄。つーか、デュエルを断るってことは、要するに自信がないんだな?」
「んだと、このガキ! いいぜ、乗ってやんよ、吠え面かくなよ!?」
あっさり挑発に乗って、デュエルの申し込みを受け入れるリーダー。
そして、戦闘開始のカウントが10から始まり、0になった瞬間、二人は互いに地面を蹴った。
ただし、カナは後ろに、リーダーは前に。
「ハッ! いきなり下がるなんて、さっきの威勢はどうした……なぁっ!?」
カナの後退を嗤ったリーダーだか、その顔は、すぐさま驚愕に変わる。
まぁ、それも当然だろう。
硬い感触が返ってくるはずの地面が、何故か砂漠のように沈み込んだのだから。
「おいおい、隙だらけだぜ? さっきの威勢は、どうしたぁ!?」
もちろん、そのチャンスを作り出したカナが、それを利用しない訳がない。
開戦直後、一歩だけ大きく飛び退いたカナは、すぐさま体勢を整えて前に突進する。
そして、砂に足を取られてバランスを崩している、リーダーの無防備な溝尾に、その小さな拳を全力で叩き込んだ。
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