鬼がたむろする世界に転生したけど、何とかやってます

ノベルバユーザー417806

第五話

第五話
次の日から、俺達の訓練が始まった。今年の訓練兵は105人。3クラスに分けられ、二年間そのクラスで教官にたっぷりしごかれるらしい。まぁ学校と似たようなもんか。ちなみに俺のクラスにはユミ、アリス、ハンゾウ、カタシとモキチもいる。
「さて、君達は今日から訓練兵となる。鬼と戦い、生き延びるたいならこの2年間は地獄と思え!鬼と戦う方がマシと思えるくらいしごいてやる。」
俺達の担当はシガ教官という人だ。年は65歳らしいが、そうは見えないほど身体からエネルギーが溢れている。てか怖い!スゲー怖い!
「お前達に昨日提出して貰ったアンケートだが……」
アンケート?ああ、そういえば昨日そんなの書いたな。将来の夢とか鬼に対しての知識だとかを聞いてきたヤツ。当然俺は鬼に対して何も知らないし、この世界でやりたい事なんてあるはずない。
「アリス!」
シガ教官が急に叫んだので、俺は驚いてアリスの方を見た。
「何でしょうか?」
「お前か?天才少女と期待されて13歳で訓練兵となったのは。」
「そうですが?丁度良い機会です。皆さんに自己紹介しておきましょう!私はアリス!西洋の血をひき、天才と謳われ、やがては最強の討伐者となる者です!ぜいぜい足を引っ張らないでください!」
うーわ、アイツウゼーなぁ。あんな事言ったら、確実に友達出来ないだろ。よくユミはあんな奴と仲良く出来るもんだ。
「そーか。天才、お前のアンケートだが、コレからの進路についてという部分。何が聞かれてるか分かるか?」
「?それは勿論、訓練兵を卒業したらどう生きていきたいか、でしょう?あなた、13歳だからと言って私を舐めているのですか!?」
「お前のこの質問に対しての答えはこうだ。’’天才の道を歩き続ける”もう一度聞くが、お前が天才と言われる少女か?」
「当たり前じゃないですか。見て分からんのですか?」
「そーか。アリス夜飯抜き、それと夜まで走ってこい。次舐めた答えしたら即刻家に帰ってもらう。」
「え?!ちょっと、何でですか?!私は…
「ハンゾウ!」
アリスの質問を遮り、教官はハンゾウの名を叫んでた。アリスはというと、あのクソジジイだとか天才故の差別だとか言いながらしぶしぶ走りに行った。
「何でござるか?」
「お前か、未だに忍者を志しているバカは。お前のアンケートだが…この字は何だ?お前が新しく作ったのか?」
ハンゾウのアンケートには、何やら暗号の様な字が連なっていた。
「それは暗号でごさるよ。忍者たる者、敵に内容が分からぬよう、暗号を使うのは当然の事でござる。」
「そうか。夜飯抜きだ。お前も走ってこい」
「何故でごさるか?!褒められる事はしたつもりでござるが、罰則を受けることはしてないでござるよ!」
ハンゾウはなおもごちゃごちゃ言っていたが、強制的に教室の外に追い出された。
「さて、現在この世界は、鬼に侵略されている。鬼は通常知性を持たず、人間を殺す事だけを目的としている。鬼にもランクがあり、赤鬼、青鬼、黒鬼という順に強さを増す。さらに、ヤツらは魔力をツノに宿しており、ツノが多いヤツほどその魔力は大きい。しかしそのツノを、破壊する事が出来れば鬼を殺す事が出来る。また、赤鬼だと一般人にも殺す事は可能だが、青鬼以降、もしくはツノを二本以上有する鬼には勝ち目がない。ヤツらに勝つ事が出来るのは討伐者、対鬼戦闘集団、通称鬼団と呼ばれる者達だ。」
そこで教官は話しをやめた。へぇ、ユミが倒した鬼は1番ザコだったから殺せたって訳か。
「今話したことは常識である。何故わざわざ話したかと言うと…ユウスケ!」
「はっ、はい!」
突如名前を呼ばれ、声が少し裏返ってしまった。
「お前の鬼に対する知識アンケートの部分だが、何だ?コレは。鬼を倒すにはどうするか?という質問に対して、”キビダンゴを食べさせた動物をけしかける”キビダンゴとは何だ?」
「いや、そのー」
しまった。大したアンケートじゃないだろうと思い適当な事を書いてしまったのだ。
「お前の事は噂になっているぞ?特性も無いらしいな。特性も知識も無しにどう鬼に勝つつもりなのだ?晩飯抜き。走ってこい」
「…はい。」

夜まで約10時間。俺とアリスとハンゾウは文字通り死ぬ程走らされた。
「天才である私が罰を受けるなんておかしいです!ユウスケ!ハンゾウ!明日あのバカ教官に一泡吹かせますよ!なーに、私にかかればあんなヤツ一撃ですよ!」
「お前は少し黙っとけ。もうフラフラなんだ。早く休みたい。」
「そうでござるよ。明日も朝早いでござる。もう寝ないと。それに、あの教官を怒らせるのはよした方がいいでござる。」
「あっ、アリスー!ユウスケ!おつかれ!」
俺達がフラフラになって歩いていると、食堂からユミがやってきた。
「ユミ!私、もうヘトヘトで。ユミなら一緒にあの教官を倒してくれるよね?」
「こちらの方は、ハンゾウさん?でしたっけ?」
ユミはアリスを見事に無視してハンゾウに尋ねた。
「そうでござる。あなたは?」
「私はユミ。多分これからお世話になると思うから、よろしくね!」
「お世話にって、そんなに話す機会も無いんじゃねーの?」
「そんな事ないわよ。ユウスケもアリスもハンゾウさんも、これから4人で頑張って行くんだから。」
「どういう事でござる?」
「私達4人でチームを組むって事。この2年間、4人1チームで訓練を受けるらしいの。さっきチームが発表されて私達は同じチーム。」
「えーーーー!」
マジかよ。ユミはともかく、この2年間をバカと忍者もどきと過ごすってか。
「じゃあおやすみ。明日からよろしくね!」
「僕ももう寝るでござる。先に寮に戻ってるでござるよ。ユウスケ、聞いてるでござるか?」
ショックから立ち直れない俺を残して、ユミとハンゾウは寮に戻って行った。
「良かったですね?ユウスケ。私がいれば100人力ですよ。なんて言っても、天才ですから。」
隣ではバカがまた何かほざいている。
「お前その天才とか言うのやめた方がいいぞ?友達出来ないだろ?」
「でっ、出来ない事ないしー。たまたまユミしか話し相手がいないだけですしー。」
「やっぱ友達いねーのかよ。まぁこれから同じチームになるわけだし、よろしく頼むぞ?お前の力だけは頼りにしてるから。」
「ふふん。任せて下さい。じゃあおやすみです。」
アリスも寮に戻って行った。俺も寮に行くか。初日から散々な日だったな。てか、バカと忍者もどきと特性無しの俺、しかも3人共初日から罰則受けてるヤツらを同じチームにするってどーかしてるだろ?あーあ憂鬱だ。
こうして、俺の訓練は最悪のスタートを切ったのだった。

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