鬼がたむろする世界に転生したけど、何とかやってます

ノベルバユーザー417806

第一話

第一話

目が覚めたとき、ほのかに香る芝生の匂いと、気持ちよいそよ風が俺の体を包んだ。
ここはどこだ?確か俺はトラックに轢かれて…あまり思い出したくない光景を思い浮かべてしまい、思わず顔をしかめた。そう、俺、上野雄介はトラックに轢かれて死んだのだ。その事実に辿り着いた所でようやく俺は目を開けた。そこは一面に広がる原っぱと、憎たらしいくらい澄み渡った青空しかなかった。
「どこなんだ?ここは」 
「君にはどう見えるのかな?」
急に聞こえた声に、陸上だった俺はスタートで鍛えた反射神経を生かしてすぐ振り返った。一人の老人が立っている。腰まで伸びた白い髪、サンタクロースの様な白い髭、幾つものしわを刻んだその顔は、まるで神様の様な威厳を醸し出していた。
「あなたは?ここはどこなんですか?もしかして、天国的な?」
「質問は一度に一個までだよ、上野雄介君。
とはいえ、混乱するのも無理はないか。私は…そうだな、神とでも言っとこうか。そしてここはもちろん日本だ。天国ではない。ただし、君の知っている日本ではない。」
「ここが、日本?俺が知らない?てゆうかどーして俺の名前を…」
「神だから知っている。という理由では納得出来ないかな?さて、では本題に入ろうか。」
神だから俺の名前を知ってる、か。確かに神ならそんな事もしってそうだ。 
「なるほどな、ってなるかぁ!」
「どうした急に?何が納得いかないのだ?」
「いやいや、どーしてその理屈で納得出来ると思ったんだ?!神なんているわけないだろ!ていうかこれプライバシーの侵害だろ。どっから俺の個人情報漏れたんだ?!」 
「神は信じられないのか?しかし昔は、どの神を信じるかどうかとゆうくだらない理由で、人は皆争いを起こしていたではないか」
いつの話をしてんだこいつ。もしかして、頭おかしい系?俺が哀れみの目を向けている事に苛立ったのか、神とかいう爺さんは、少し声を荒げて言った。
「では、お前はどうなってここに来た?」
「...じゃあ、ここはどこなんだ?」
「さっきも言っただろう。ここは日本。ただしお前の知らない、な」
「どーゆー事?」
「パラレルワールドというのは知っているな?」
パラレルワールドて、あれか。漫画とかでよくあるヤツ。 
「それがどーした?」
「つまりここはパラレルワールドの日本だ。しかも、神話の時代にお前の世界から分岐した世界だ。」
うん。頭おかしいヤツだ。ここは多分天国なんだろうな。そーと決まれば歴史上の偉人にでも会いに行こう!
「おい、どこに行く気だ?ここにいろ!」
「どこって、せっかくの天国を観光にだよ」
「話を聞け!いいか?ここはパラレルワールドの日本。神話の時代に分岐したから、神でも化け物でもなんでもいる。ファンタジーの様な世界だ。そしてお前がここに居る理由だか…」
「どーした?俺がここに居る理由は?」
「それはーそのー、この世界は現在鬼どもの襲撃により、人口が減少していてな。それで人口を増やそうと、若くして死んだお前の様なものを連れてきたのだ。」 
なるほどな。信じるわけじゃないが、冷静になってみると俺に起きてる現象が既に理解不能だし、コイツの言ってる事も妄想ではないのかもしれない。急に歯切れが悪くなった理由は分からんが。
「で?俺にどーしろと?」
「信じてくれたか。まぁ要するに、こちらの世界で生きてくれ。」
すると、急に俺の周りが光りだした。
「…頼んだぞ。」
「え?え?ちょ待てやコラァ!」
次の瞬間辺りが急に真っ白になった。思わず目を瞑った俺が次に目を開けてとき
「ハァァァァァァァァァァァ」
あーあ、鬼だぁ、コレ。もう見てわかるもん。鬼じゃん。赤い肌にツノが生えててさ、しかもすげーグロテスクだし。なんか言葉も通じなさそーだなぁ。たぶん問答無用で襲ってくるんだろぉなぁ。ほら来た。何匹いるんだ?てか、なんでこんなとこに送ったんだよ。
「死ねあのクソ厨二病神がぁぁぁぁぁ!」

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