赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第127話 悪魔と半魔

 ツヴァイはアンナ達と別れて、闇魔将ドレイクと対峙していた。

「闇螺旋《ダーク・スパイラル》」

 ドレイクが、自らの指に闇を纏わせる。
 さらに、大地を蹴り、ツヴァイに接近してきた。

「喰らえ!」
「ふん!」

 ドレイクの攻撃をツヴァイは躱す。
 すると、ドレイクの指が奥の壁に突き刺さる。

「ちっ!」

 ドレイクは、ゆっくりと壁から指を引き抜く。
 その壁には、穴が開いており、その威力を物語っていた。
 ドレイクは、身を翻し、ツヴァイの元へと返ってくる。

「ふん!」
「くうっ!」

 ツヴァイは、再び身を躱す。
 しかし、ドレイクの動きは先程までとは違う。

「闇螺旋《ダーク・スパイラル》!」
「ぐっ……!」

 いつの間にか、もう片方の手にも闇を展開していたのだ。
 その片方を、ツヴァイが片手で受け止める。

「ぐうっ!?」

 その一撃は、ツヴァイの鎧を砕くのに、十分な攻撃だった。
 ツヴァイは咄嗟に大きく後退し、ドレイクから距離をとる。

「……逃がさん!」
「くっ!」

 だが、ドレイクもすぐにそれを追ってきた。
 ツヴァイは、さらに後退し、ドレイクから逃げる。
 しかし、咄嗟の逃げだったため、周りの状況を考えていなかった。

「くっ!?」

 ツヴァイの後退した先にあったのは、壁である。
 そのため、ドレイクの攻撃を受けざるを得ない。

「終わりだ!」
「くっ! 鎧の障壁アーマー・バリア!」

 ドレイクの攻撃に対して、ツヴァイは闘気の壁を展開する。
 だが、ドレイクの攻撃はその程度で止まらない。

「ぐっ!?」
「その程度か! 鎧魔将!」
「おおっ!」

 闘気の壁が破壊され、ドレイクの指が突き刺さった。
 鎧が砕け、ツヴァイの体を貫いてくる。
 ツヴァイは、咄嗟にドレイクの腕を掴む。

「むっ!?」
「ふん!」

 ツヴァイはそのまま、ドレイクを上方向へと放り投げた。
 瞬時の出来事に、ドレイクも対応できなかったようだ。

「かっ!」

 そこで、ドレイクが翼を広げた。
 悪魔の彼にとって、空中で動くことなど容易なのだ。
 ドレイクは空中で旋回し、ツヴァイに向かって来る。

「くっ!」

 ツヴァイは一気に駆け出し、ドレイクから逃れていく。
 当然、ドレイクはそれを追ってきた。

変化チェンジ・ランス!」

 それに対して、ツヴァイは鎧を槍に変化させる。
 ドレイクの攻撃に対して、防御ができないことは先程証明された。
 そのため、防御ではなく攻撃で対応するのだ。

「喰らえ!」
雷の槍サンダー・ランス!」

 ドレイクに合わせて、ツヴァイは槍を突く。
 ツヴァイの攻撃と、ドレイクの攻撃がぶつかり合う。
 その衝撃で、二人は大きく吹き飛ぶ。

「ぐううっ!」
「ぬううっ!」

 しかし、二人ともすぐに体勢を立て直す。
 二人とも、一気に相手に向かっていく。

「闇螺旋《ダーク・スパイラル》!」

 ドレイクが、指に闇を纏わせた。
 今度は、両手全ての指に、闇を纏わせている。
 その螺旋は、やがて一つになり、ドレイクの腕を覆っていく。

「ふん!」
「何!?」

 ドレイクは、さらに両手を合わせた。
 すると、闇が大きな回転となり、ツヴァイの元へと迫ってくる。

「喰らえ! 闇魔奥義! 螺旋魔光撃スパイラル・ブラスト!」
「くうっ! 回転するスピニング・雷の槍サンダー・ランス!」

 ドレイクの攻撃に対して、ツヴァイは槍を回転させた。
 それにより、ドレイクの攻撃を弾いていく。

「うっ……!」

 しかし、ドレイクの攻撃は強力だった。
 槍の回転の隙間から、ツヴァイの体を闇が貫いてくる。
 ツヴァイの体から、赤い血が飛び出していく。

「くっ……!」

 ダメージによって、ツヴァイの動きが少し鈍る。
 すると、その隙にドレイクの攻撃が突き抜けていく。

「ぐああああああっ!」

 ツヴァイの体は、闇に吹き飛ばされた。
 そのまま、ツヴァイは壁に叩きつけられる。

「がはっ!」
「止めだ!」

 壁際のツヴァイに、ドレイクが迫ってきた。
 指に闇を纏わせており、最後の一撃を放ってくるつもりであるようだ。

「ふんっ!」
「ぐっ!」
「何!?」

 ドレイクの攻撃が、ツヴァイを貫いた。
 それに対して、ツヴァイはドレイクの腕をとる。
 今度は、投げ飛ばさずにそのままの形だ。

「武器を捨てたか!?」

 ドレイクの腕をとったことによって、ツヴァイは槍を地面に落としていた。
 だが、それも全てツヴァイの狙い通りだ。
 ツヴァイは槍を蹴り上げながら、大きく叫ぶ。

変化チェンジ・リバーシブル・アーマード!」
「何!?」

 その言葉により、ドレイクの体が鎧に包まれる。
 こちらの鎧は、拘束具としての役割だ。
 これで、ドレイクの動きを封じ込めることができる。

「これは……!?」
「その状態では、お前の力も震えまい!」
「ぐっ!」

 ドレイクは何かしようとしたようだが、反転した鎧がそれを許さない。
 しばらくは、ドレイクもツヴァイに攻撃できないだろう。

「は、離せ!」
「離す訳がないだろう!」

 ツヴァイは、ドレイクの腕をとったままだ。
 そのため、ドレイクは逃げることすらできない。
 そして、その状態なら、ツヴァイの攻撃を受けざるを得ないだろう。

「喰らえ! 我が魔闘気の雷撃を!」
「ぐうっ!」

 ツヴァイの体から、雷が巻き起こる。
 その攻撃は、ドレイクの体を破壊していく。

「き、貴様……」

 だんだんと、ドレイクから力が抜けてきた。
 ツヴァイの雷が決まった瞬間だ。

「……ぐっ!」

 ゆっくりと、ドレイクが倒れていく。
 それと同時に、ツヴァイの体からも力が抜ける。
 ここまでのダメージが、かなり効いていたのだ。

「ぐっ! 後は……アンナ達に、任せるか……」

 ツヴァイとドレイク、二人の戦いは終結するのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品