赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第119話 再生ラミアナ

 ツヴァイは、魔王城の一室に来ていた。
 これは、オーデットが操る魔将の屍、屍人形デス・マリオネットが放った魔法の筒マジック・ポットによって、部屋を移動したからである。

「シャアア……」
「お前は……」

 ツヴァイの前には、ある魔将の屍人形デス・マリオネットがいる。
 その魔将は、毒魔将ラミアナ。ツヴァイが、勇者一行の仲間になってから、初めて戦った魔将だ。

「シャア!」
「何っ!」

 ラミアナは、口を大きく開け、紫色の液体を放ってきた。
 それは、ラミアナが持つ毒である。
 その毒をまともに受けたら、ツヴァイでも確実に死に至るだろう。それは、なんとしても躱さなければならない。

「くっ!」

 ツヴァイは大きく後退し、ツヴァイの毒から逃れていく。
 そんなツヴァイを、ラミアナが追ってくる。

「シャア!」
「くっ……!」

 その口からは、毒が漏れていた。
 このまま追跡されれば、毒を喰らうのは時間の問題である。
 そのため、ツヴァイは毒を浴びても平気なように対策することにした。

変化チェンジ・アーマード!」

 ツヴァイは、手に持つ槍を鎧へと変化させる。
 ツヴァイの体は、鎧に包まれた。これで、毒を受けても平気だ。

「シャア!」
「ふん!」

 それを気にせず向かって来るラミアナに対して、ツヴァイは拳を振るう。

「シャア!?」

 ラミアナは、攻撃をまったく予測していなかったようで、その拳が完璧に入る。
 そのまま、ラミアナの体は後退していく。

「……ラミアナなら、この程度の攻撃など、簡単に予測できただろうな……」

 ツヴァイは、ラミアナのことを思い出していた。
 先程の拳など、ラミアナなら簡単に躱せたはずである。
 それが躱せなかったのは、ラミアナとしての意識がなかったかだろう。

「そもそも、奴は毒を用いた戦術など使わなかっただろうがな……」

 ラミアナは、自身の持つ毒を戦いで使うことを嫌っていた。
 それ故に、剣の技術を鍛え、毒に頼らずに魔将にまでなったのだ。
 そんなラミアナが、毒に頼った戦いをするとは、以前よりも強くないのは当たり前なのである。

「シャアア!」

 ツヴァイがそう考えている内に、ラミアナが体勢を立て直していた。
 今度は、剣を構えて、ツヴァイに向かって来る。

「剣に頼るか……だが、今更だ! 変化チェンジ・ランス!」

 ツヴァイは鎧を槍に変化させ、ラミアナの攻撃に備えた。

「シャア!」

 すると、ラミアナが体を動かし始める。
 腕を広げ、その体を回転させ始めたのだ。

「シャアア!」
雷の槍サンダー・ランス!」

 それに対して、ツヴァイは槍を振るう。
 雷を纏った、魔闘気の槍である。
 ツヴァイの槍と、ラミアナの剣がぶつかり合う。

「ふん!」
「シャアア!?」
変化チェンジ・アーマード!」

 ツヴァイの槍により、ラミアナの体は後退していく。
 そんなラミアナを、ツヴァイは追いかけながら飛び上がる。
 さらに、槍を鎧に変化さながら、片膝を下に向け、落下していく。

稲妻鎧落としライジング・ブレイク!」
「シャアアアア!」

 ツヴァイの膝が、ラミアナに突き刺さった。
 魔闘気によって強化された一撃が、ラミアナの体を破壊する。
 その攻撃によって、ラミアナは大きく叫んだ。
 ツヴァイは、反動によって一度後退する。

「シャアア!」
「む!?」

 その時、ラミアナは体勢を立て直していた。
 さらに、ラミアナは大きく飛び上がってくる。

「これは……!」

 ラミアナは、ツヴァイの頭上で回転を始めた。
 ツヴァイはそれが、毒魔奥義蛇の嵐スネーク・ストームであると気づく。

「……ならば、俺も全力で相手するとしよう」

 ツヴァイは自らの魔闘気を解放し、電撃を発せさせる。

鎧放電撃アーマード・スパーク!」
「シャアアアアア!」

 ラミアナは、頭上から剣による突きを放ってきた。
 ツヴァイの鎧が砕けていくが、ツヴァイは気にしない。

「シャアア!?」

 なぜなら、動けば電撃が外れるからだ。
 ツヴァイの電撃で、ラミアナの動きが少し鈍る。

「これで終わらせよう……変化チェンジ・ランス! 雷の槍サンダー・ランス!」

 その隙に、ツヴァイは鎧を槍に変化させ、一気に解き放つ。

「シャアア!」

 ラミアナの体を、ツヴァイの槍が貫いた。
 すると、ラミアナの体から、ゆっくりと力が抜けていく。

「シャア……」

 ラミアナの体が、地面に落ちてきた。
 その体には、最早力は残ってなさそうだ。
 ツヴァイは、その体からゆっくりと槍を抜く。

『まさか、お前に解放されるとはな……』
「む……?」

 そこで、声が聞こえた。
 これは、毒魔将ラミアナの声である。

『感謝しておくぞ……ツヴァイ』
「……ふん!」

 ツヴァイは、ゆっくりと歩き出す。
 一人の戦士に、心の中で敬意を表しながら。

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