赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第116話 それぞれの思い
アンナ達は、魔王城の前で話をしていた。
教授の話を発端に、各々話したかったことを話す流れになっていたのだ。
「さて、俺の話したかったことだが……」
ガルスは、ゆっくりと話し始めた。
彼が話しているのは、教授に振られたカルーナを庇ったためだ。
故に、ガルスにはそこまで話したいことなどないのである。
「……俺は、炎に耐性があるんだが、ずっと思っていたことがある」
「そうなの? 何かな?」
「ああ、あれはそれなりに熱くてな。いつも、我慢しているのだ。熱に強い体を持っていても、熱いものは熱いからな……」
「ええ? そうだったの……」
ガルスが放ったのは、自身の体質についてのことだった。
ガルスは、熱い地帯で育ったリザードマンであるため、炎攻撃などに強いとされていたはずだ。
だが、ガルス曰く、それでも熱いものは熱いらしい。
「……さて、これで俺は終わりだ」
ガルスの言いたいことは、それで終わったようだ。
「あ、それじゃあ、私も言いたいことを言っておきたいと思います」
次に言葉を放ったのは、ティリアだった。
ティリアも、何か言いたことがあるようだ。
「私は、その……気になる人が、できたんです」
「ええ!?」
「なんだと!?」
ティリアの放った言葉に驚いたのは、ネーレとツヴァイだった。
ティリアと一緒によく一緒にいる者と、ティリアの兄の二人だ。
二人は、ティリアとの距離を詰めていく。
「ティ、ティリアが好きな人って、だ、誰なの?」
「一体、どこのどいつだ。場合によっては、八つ裂きにしてやる……」
「あ、あの、二人とも、落ち着いてください……特に、兄さんは思い留まってください」
詰め寄って来た二人に、ティリアは困惑していた。
ネーレはともかく、ツヴァイは物騒すぎるので、それも仕方ないだろう。
「あ、ああ、ごめん、ティリア。俺、少し焦っちゃったよ……」
「ティリア、俺はお前のことを心配して……」
「兄さん、もう、やめてください……」
そんな三人から少し離れ、カルーナはあることを考えていた。
それは、教授に振られ、ガルスに庇ってもらった、カルーナの言わなければならないことについてである。
「……私も、言いたいことがあるんです」
そして、カルーナはゆっくりと呟いた。
それは、決意の呟きだ。
その場にいる全員の意識が、カルーナに集中する。
「お姉ちゃん、いいかな?」
「え? 私? 何かな?」
カルーナは、アンナの前に出た。
そのことに、アンナは少し驚く。
この流れであるため、カルーナが自分に何か言いたいことがあるとわかったからだ。
それが何か、アンナは考えるのだった。
「私……最近、少しだけお姉ちゃんを避けていたよね」
「あ、うん……」
「それには、ある理由があるんだ……」
「理由? 何かな?」
カルーナの言葉に、アンナは目を丸くする。
そのことは、アンナがずっと気になっていたことではある。ただ、それにカルーナが触れてくるとは思っていなかったのだ。
「私、お姉ちゃんが……好き」
「え?」
カルーナの口から、ゆっくりとその言葉が放たれた。
その瞬間、アンナは固まってしまう。その言葉の持つ意味に、気づいてしまったからだ。
カルーナの視線が、それを物語っていた。その言葉が、特別な意味だということを。
「少し避けていたのは、色々あってそのことに気づいたから。でも、本当はもっと前に気づいていたんだと思う。だから、お姉ちゃんと喧嘩しちゃったのも、それが原因なのかもしれない……」
「カルーナ……」
「姉妹だし、女の子同士だし、色々と思うところはあるよね。だから、答えは帰って来てからでいいよ」
カルーナはそれだけ言って、話を終わらせようとした。
それは、アンナのためか、カルーナ自身のためかはわからない。
しかし、アンナの心境は違った。
「カルーナ、そんなに先延ばしにしなくてもいいよ」
「え?」
「私の答えは、決まっている。だから、今答えるよ」
「お、お姉ちゃん……」
アンナの中で、答えは決まっていたのだ。
「カルーナに告白されて、びっくりしたけど、全然嫌ではなかった。むしろ、嬉しかったよ」
「えっ……」
「私、カルーナのことは大切だって思っている。ずっと一緒にいたいと思っている。それは、きっとそういう意味なんだって思うんだ」
アンナは、ゆっくりとカルーナに近づき、その体を抱きしめる。
「で、でも、よく考えた方が、いいと思うよ? だって、これってかなり大変なことだし……」
「カルーナ、私が本気だって、わかっていないのかな?」
「わ、私があんなに悩んで結論を出したのに、お姉ちゃん、その場の勢いで決めているみたいなんだもん。そ、それが大丈夫なのかって、思って……」
「なるほど、それなら、わかりやすくしようか……」
「え?」
このタイミングで、そんなことを言い出したカルーナに対して、アンナはあることを思いついた。
それは、カルーナを納得させるのに、一番わかりやすい方法だ。
アンナは、ゆっくりとその顔をカルーナに近づけていく。
そして、そっとその唇を奪う。
「んんっ!?」
「ん……」
それに対して、反射的に動こうとしたカルーナをアンナは押さえつけた。
その時点で、カルーナは抵抗を止め、ゆっくりと目を瞑る。
「……ふう」
「あっ……」
数秒後、アンナが離れていく。
「これで、わかってくれたかな?」
「……うん、とてもわかった。お姉ちゃんの気持ち……疑ってごめんなさい」
「いいんだよ。だって、それも仕方ないことだと思うし……」
アンナは、カルーナの言い分も理解していた。
アンナの思考は、この一瞬で切り替わったように見えるため、それを疑ってしまうのも、仕方ないだろう。
ただ、アンナも恐らくは、自分もずっとカルーナのことが好きだったと予想していた。今までの自分を振り返ると、そう思えたのだ。
そのため、アンナはカルーナの告白にすぐに答えられた。
それが、この瞬間の答えである。
「……あっ!?」
「ああっ!?」
そこで、アンナとカルーナは気づく。周りに、仲間達がいたことに。
そのことで、赤かった二人の顔が、さらに赤くなる。
「……お二人とも、おめでとうございます」
「薄々そうかと思っていたが、まさか本当にそうだったとはな……」
「まあ、一応祝福しておこう」
「なんだか、俺までドキドキしちゃったよ」
「これで、憂いもないだろう。後は、決着をつけるだけだね」
仲間達は、口々に二人に言葉をかけてきた。
それは様々な言葉であるが、皆、祝福しているのは確かだろう。
「よし! 次! 私!」
そこで、アンナは大きく手を叩く。
場の空気を切り替えるためである。
そして、アンナは言葉を放つ。
それは、アンナが一番言いたかったことだ。
「皆に言いたいことは、ただ一つ! 生きて帰ろう!」
その言葉に、仲間達はゆっくりと頷く。
さらに、口々に言葉を放つ。
「もちろん! 私の望みは、お姉ちゃんと平和に暮らすことだもん!」
「はい! 例え、どんな傷を負っても、私が治してみせます!」
「ここまできたのだ、お前達……いや、俺達なら必ず勝てるだろう」
「ティリアは、俺が守る。そして、お前達も俺が守ってみせよう!」
「こんな所まで来て、死んでたまるかってな!」
「さて、君達が生きて帰られるよう、教えを授け続けようか……」
アンナ達は、ゆっくりと歩き始まる。
この戦いは、最後の戦い。決戦の地は、魔王城だ。
教授の話を発端に、各々話したかったことを話す流れになっていたのだ。
「さて、俺の話したかったことだが……」
ガルスは、ゆっくりと話し始めた。
彼が話しているのは、教授に振られたカルーナを庇ったためだ。
故に、ガルスにはそこまで話したいことなどないのである。
「……俺は、炎に耐性があるんだが、ずっと思っていたことがある」
「そうなの? 何かな?」
「ああ、あれはそれなりに熱くてな。いつも、我慢しているのだ。熱に強い体を持っていても、熱いものは熱いからな……」
「ええ? そうだったの……」
ガルスが放ったのは、自身の体質についてのことだった。
ガルスは、熱い地帯で育ったリザードマンであるため、炎攻撃などに強いとされていたはずだ。
だが、ガルス曰く、それでも熱いものは熱いらしい。
「……さて、これで俺は終わりだ」
ガルスの言いたいことは、それで終わったようだ。
「あ、それじゃあ、私も言いたいことを言っておきたいと思います」
次に言葉を放ったのは、ティリアだった。
ティリアも、何か言いたことがあるようだ。
「私は、その……気になる人が、できたんです」
「ええ!?」
「なんだと!?」
ティリアの放った言葉に驚いたのは、ネーレとツヴァイだった。
ティリアと一緒によく一緒にいる者と、ティリアの兄の二人だ。
二人は、ティリアとの距離を詰めていく。
「ティ、ティリアが好きな人って、だ、誰なの?」
「一体、どこのどいつだ。場合によっては、八つ裂きにしてやる……」
「あ、あの、二人とも、落ち着いてください……特に、兄さんは思い留まってください」
詰め寄って来た二人に、ティリアは困惑していた。
ネーレはともかく、ツヴァイは物騒すぎるので、それも仕方ないだろう。
「あ、ああ、ごめん、ティリア。俺、少し焦っちゃったよ……」
「ティリア、俺はお前のことを心配して……」
「兄さん、もう、やめてください……」
そんな三人から少し離れ、カルーナはあることを考えていた。
それは、教授に振られ、ガルスに庇ってもらった、カルーナの言わなければならないことについてである。
「……私も、言いたいことがあるんです」
そして、カルーナはゆっくりと呟いた。
それは、決意の呟きだ。
その場にいる全員の意識が、カルーナに集中する。
「お姉ちゃん、いいかな?」
「え? 私? 何かな?」
カルーナは、アンナの前に出た。
そのことに、アンナは少し驚く。
この流れであるため、カルーナが自分に何か言いたいことがあるとわかったからだ。
それが何か、アンナは考えるのだった。
「私……最近、少しだけお姉ちゃんを避けていたよね」
「あ、うん……」
「それには、ある理由があるんだ……」
「理由? 何かな?」
カルーナの言葉に、アンナは目を丸くする。
そのことは、アンナがずっと気になっていたことではある。ただ、それにカルーナが触れてくるとは思っていなかったのだ。
「私、お姉ちゃんが……好き」
「え?」
カルーナの口から、ゆっくりとその言葉が放たれた。
その瞬間、アンナは固まってしまう。その言葉の持つ意味に、気づいてしまったからだ。
カルーナの視線が、それを物語っていた。その言葉が、特別な意味だということを。
「少し避けていたのは、色々あってそのことに気づいたから。でも、本当はもっと前に気づいていたんだと思う。だから、お姉ちゃんと喧嘩しちゃったのも、それが原因なのかもしれない……」
「カルーナ……」
「姉妹だし、女の子同士だし、色々と思うところはあるよね。だから、答えは帰って来てからでいいよ」
カルーナはそれだけ言って、話を終わらせようとした。
それは、アンナのためか、カルーナ自身のためかはわからない。
しかし、アンナの心境は違った。
「カルーナ、そんなに先延ばしにしなくてもいいよ」
「え?」
「私の答えは、決まっている。だから、今答えるよ」
「お、お姉ちゃん……」
アンナの中で、答えは決まっていたのだ。
「カルーナに告白されて、びっくりしたけど、全然嫌ではなかった。むしろ、嬉しかったよ」
「えっ……」
「私、カルーナのことは大切だって思っている。ずっと一緒にいたいと思っている。それは、きっとそういう意味なんだって思うんだ」
アンナは、ゆっくりとカルーナに近づき、その体を抱きしめる。
「で、でも、よく考えた方が、いいと思うよ? だって、これってかなり大変なことだし……」
「カルーナ、私が本気だって、わかっていないのかな?」
「わ、私があんなに悩んで結論を出したのに、お姉ちゃん、その場の勢いで決めているみたいなんだもん。そ、それが大丈夫なのかって、思って……」
「なるほど、それなら、わかりやすくしようか……」
「え?」
このタイミングで、そんなことを言い出したカルーナに対して、アンナはあることを思いついた。
それは、カルーナを納得させるのに、一番わかりやすい方法だ。
アンナは、ゆっくりとその顔をカルーナに近づけていく。
そして、そっとその唇を奪う。
「んんっ!?」
「ん……」
それに対して、反射的に動こうとしたカルーナをアンナは押さえつけた。
その時点で、カルーナは抵抗を止め、ゆっくりと目を瞑る。
「……ふう」
「あっ……」
数秒後、アンナが離れていく。
「これで、わかってくれたかな?」
「……うん、とてもわかった。お姉ちゃんの気持ち……疑ってごめんなさい」
「いいんだよ。だって、それも仕方ないことだと思うし……」
アンナは、カルーナの言い分も理解していた。
アンナの思考は、この一瞬で切り替わったように見えるため、それを疑ってしまうのも、仕方ないだろう。
ただ、アンナも恐らくは、自分もずっとカルーナのことが好きだったと予想していた。今までの自分を振り返ると、そう思えたのだ。
そのため、アンナはカルーナの告白にすぐに答えられた。
それが、この瞬間の答えである。
「……あっ!?」
「ああっ!?」
そこで、アンナとカルーナは気づく。周りに、仲間達がいたことに。
そのことで、赤かった二人の顔が、さらに赤くなる。
「……お二人とも、おめでとうございます」
「薄々そうかと思っていたが、まさか本当にそうだったとはな……」
「まあ、一応祝福しておこう」
「なんだか、俺までドキドキしちゃったよ」
「これで、憂いもないだろう。後は、決着をつけるだけだね」
仲間達は、口々に二人に言葉をかけてきた。
それは様々な言葉であるが、皆、祝福しているのは確かだろう。
「よし! 次! 私!」
そこで、アンナは大きく手を叩く。
場の空気を切り替えるためである。
そして、アンナは言葉を放つ。
それは、アンナが一番言いたかったことだ。
「皆に言いたいことは、ただ一つ! 生きて帰ろう!」
その言葉に、仲間達はゆっくりと頷く。
さらに、口々に言葉を放つ。
「もちろん! 私の望みは、お姉ちゃんと平和に暮らすことだもん!」
「はい! 例え、どんな傷を負っても、私が治してみせます!」
「ここまできたのだ、お前達……いや、俺達なら必ず勝てるだろう」
「ティリアは、俺が守る。そして、お前達も俺が守ってみせよう!」
「こんな所まで来て、死んでたまるかってな!」
「さて、君達が生きて帰られるよう、教えを授け続けようか……」
アンナ達は、ゆっくりと歩き始まる。
この戦いは、最後の戦い。決戦の地は、魔王城だ。
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