赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第115話 魔王城の前で
アンナ達は、魔王の住む場所、魔王城の前まで来ていた。
周りの様子を伺ったアンナは、一つの感想を覚える。
「この周りにも、魔族がいないのか……」
「そうみたいだね……」
魔王という魔族の総大将が住むはずの城に、警備の魔族が一人もいないことは、違和感があった。
やはり、魔族側に何か大きな問題が起きているようだ。
「だが、僕達にとっては、むしろ好都合ともいえる。これから、魔王軍と戦うのだから、相手は少ない方がいい。そもそも、ここで魔族がいたら引き返すことも考えなければならないだろうからね」
「教授……」
「その通りだ。元々、魔族に何かあったからこそ来たのだ。ここまでは想定通りといえる」
「ガルス……」
仲間の言葉達に、アンナは考えを改める。
魔族側に何が起こったかなど、アンナが気にする必要はないのだ。
なぜなら、これからアンナ達は、魔王軍と戦うからである。
「わかった。皆、行こうか……」
「ああ、少し待ってくれ」
「え?」
そう思い、アンナが一歩踏み出そうとした時だった。
教授が、アンナを引き止めたのである。
「ど、どうしたんですか? 教授?」
「もしかしたら、これが最後かもしれないからね。僕の秘密を、君達に教えておきたいんだ」
「秘密? なんですか?」
どうやら、教授は、何か秘密を打ち明けておきたいらしい。
このタイミングで言うことなので、かなり重要なことなのだと、アンナは予測する。
「君達に、以前僕が何者なのかを問われた時、詳細を話さなかったね。あれを話しておこうと思ったんだ」
「ああ、そういえば、そうでしたね……」
「実は、僕はアストリオン王族の関係でね。ヴィクティスの兄……正確には、腹違いの兄ということになるんだ」
「え?」
教授の打ち明けたことに、アンナを含めた皆は驚いた。
まさか、教授が王族なのだと、思っていなかったからだ。
その様子に、教授は笑う。
「やはり、驚いたか。まあ、当然だろう……それで、僕は腹違いということもあって、結構冷遇されていたけど、なんとか王国軍で頑張っていたんだけど、トラシドはそれも気に入らなかったみたいでね。国外追放されてしまったんだ」
「きょ、教授も、大変だったんですね……」
「ああ、まあね。さて、僕の話はこれで終わりだ。聞いてくれて、ありがとう」
教授の話は、これで終わりのようだ。
すると、そこでネーレが手をあげる。
「ネーレ? どうしたの?」
「いや、俺も皆に伝えておきたいことがあったんだ」
「伝えておきたいこと?」
「ああ、教授のついでにな」
どうやら、ネーレも伝えておきたいことがあるようだ。
別に、断る理由も無いので、アンナ達は聞くことにする。
「実は、俺の父親って、元々は海賊なんだよ。だから、私って、海賊の娘なんだ」
「海賊……ええ!?」
ネーレの言葉に、アンナは驚く。
海賊というと、海を荒らして回る荒くれ者達である。
その娘とは、中々すごいことだった。
「あ、でも、人を襲ったりはしてないからな。宝とかを見つけているだけなんだ。まあ、違法なのは変わりないけど……」
「ネーレも、色々と大変なんだね……」
「まあ、大変という訳でもないと思うけど……」
アンナの言葉に、ネーレは笑う。
恐らく、本人の中では既に整理がついていることなのだろう。
「この流れに、俺も乗らせてもらおうか……」
「ツヴァイ?」
次に声をあげたのは、ツヴァイだった。
ツヴァイも、何か言いたいことがあるようだ。
「俺のことではないのだが、一つ気になっていてな……」
「ツヴァイのことではない? それじゃあ、ティリアとか?」
「え? 私ですか……?」
ツヴァイの話したいことが、自分のことではないらしい。
それを聞いて、アンナはティリアのことかと思った。なぜなら、ツヴァイが他人のことを話すなど、妹のことしかないと思ったからだ。
「いや、そうではない……」
「え? それじゃあ、一体……?」
しかし、そうではないようだ。
それなら、アンナには見当もつかないのだった。
「実は、プラチナスのことでな……」
「プラチナス?」
「ああ、タイラーン戦の前、少し話したのだが、奴はもしかしたら、エスラティオ女王と親しい関係かもしれん……」
「は?」
ツヴァイの言葉に、アンナ達は驚く。
それは、かなり衝撃的な発言だった。
女王であるレミレアと、立場的に捕虜であるプラチナスが懇意とは、かなりすごいことだろう。
「まだ、推測の域は出んが、なんとなくそう思えるのだ。それで、俺はどうすればいいのかと思ってな……」
「どうすればいいって言われても……」
その事実は、ツヴァイですら困惑することだったようだ。
ただ、どうすればいいのかなど、アンナにもわからない。
「……祝福すれば、いいんだと思います」
「ティリア?」
「人間と魔族が結ばれるなら、私達の両親と同じです。それなら、祝福すればいいだけだと思います」
「ティリア、お前……」
そこで、ティリアが言葉を放った。
その言葉に、ツヴァイは目を丸くする。
しかし、すぐにツヴァイは笑顔になった。それは、優しい笑顔だ。
「そうだな……」
それだけ言って、ツヴァイの話は終わりだった。
すると、教授が声を出す。
「せっかくなら、次はいないかな? ここでなら、普段言えないようなこともいえると思うけど? 特に、カルーナとか、何かないのかな?」
「え?」
言葉を振られたカルーナは、目を丸くする。
自分が振られると、思っていなかったかのような表情だ。
「……それなら。俺が話そう」
カルーナが色々と考えていると、ガルスが言葉を放った。
それが、助け船であることを、カルーナは理解する。
ただ、カルーナは考えていた。
ここで、全てを打ち明けるのもいいのかもしれないと。
アンナ達の話は、まだしばらく続くのだった。
周りの様子を伺ったアンナは、一つの感想を覚える。
「この周りにも、魔族がいないのか……」
「そうみたいだね……」
魔王という魔族の総大将が住むはずの城に、警備の魔族が一人もいないことは、違和感があった。
やはり、魔族側に何か大きな問題が起きているようだ。
「だが、僕達にとっては、むしろ好都合ともいえる。これから、魔王軍と戦うのだから、相手は少ない方がいい。そもそも、ここで魔族がいたら引き返すことも考えなければならないだろうからね」
「教授……」
「その通りだ。元々、魔族に何かあったからこそ来たのだ。ここまでは想定通りといえる」
「ガルス……」
仲間の言葉達に、アンナは考えを改める。
魔族側に何が起こったかなど、アンナが気にする必要はないのだ。
なぜなら、これからアンナ達は、魔王軍と戦うからである。
「わかった。皆、行こうか……」
「ああ、少し待ってくれ」
「え?」
そう思い、アンナが一歩踏み出そうとした時だった。
教授が、アンナを引き止めたのである。
「ど、どうしたんですか? 教授?」
「もしかしたら、これが最後かもしれないからね。僕の秘密を、君達に教えておきたいんだ」
「秘密? なんですか?」
どうやら、教授は、何か秘密を打ち明けておきたいらしい。
このタイミングで言うことなので、かなり重要なことなのだと、アンナは予測する。
「君達に、以前僕が何者なのかを問われた時、詳細を話さなかったね。あれを話しておこうと思ったんだ」
「ああ、そういえば、そうでしたね……」
「実は、僕はアストリオン王族の関係でね。ヴィクティスの兄……正確には、腹違いの兄ということになるんだ」
「え?」
教授の打ち明けたことに、アンナを含めた皆は驚いた。
まさか、教授が王族なのだと、思っていなかったからだ。
その様子に、教授は笑う。
「やはり、驚いたか。まあ、当然だろう……それで、僕は腹違いということもあって、結構冷遇されていたけど、なんとか王国軍で頑張っていたんだけど、トラシドはそれも気に入らなかったみたいでね。国外追放されてしまったんだ」
「きょ、教授も、大変だったんですね……」
「ああ、まあね。さて、僕の話はこれで終わりだ。聞いてくれて、ありがとう」
教授の話は、これで終わりのようだ。
すると、そこでネーレが手をあげる。
「ネーレ? どうしたの?」
「いや、俺も皆に伝えておきたいことがあったんだ」
「伝えておきたいこと?」
「ああ、教授のついでにな」
どうやら、ネーレも伝えておきたいことがあるようだ。
別に、断る理由も無いので、アンナ達は聞くことにする。
「実は、俺の父親って、元々は海賊なんだよ。だから、私って、海賊の娘なんだ」
「海賊……ええ!?」
ネーレの言葉に、アンナは驚く。
海賊というと、海を荒らして回る荒くれ者達である。
その娘とは、中々すごいことだった。
「あ、でも、人を襲ったりはしてないからな。宝とかを見つけているだけなんだ。まあ、違法なのは変わりないけど……」
「ネーレも、色々と大変なんだね……」
「まあ、大変という訳でもないと思うけど……」
アンナの言葉に、ネーレは笑う。
恐らく、本人の中では既に整理がついていることなのだろう。
「この流れに、俺も乗らせてもらおうか……」
「ツヴァイ?」
次に声をあげたのは、ツヴァイだった。
ツヴァイも、何か言いたいことがあるようだ。
「俺のことではないのだが、一つ気になっていてな……」
「ツヴァイのことではない? それじゃあ、ティリアとか?」
「え? 私ですか……?」
ツヴァイの話したいことが、自分のことではないらしい。
それを聞いて、アンナはティリアのことかと思った。なぜなら、ツヴァイが他人のことを話すなど、妹のことしかないと思ったからだ。
「いや、そうではない……」
「え? それじゃあ、一体……?」
しかし、そうではないようだ。
それなら、アンナには見当もつかないのだった。
「実は、プラチナスのことでな……」
「プラチナス?」
「ああ、タイラーン戦の前、少し話したのだが、奴はもしかしたら、エスラティオ女王と親しい関係かもしれん……」
「は?」
ツヴァイの言葉に、アンナ達は驚く。
それは、かなり衝撃的な発言だった。
女王であるレミレアと、立場的に捕虜であるプラチナスが懇意とは、かなりすごいことだろう。
「まだ、推測の域は出んが、なんとなくそう思えるのだ。それで、俺はどうすればいいのかと思ってな……」
「どうすればいいって言われても……」
その事実は、ツヴァイですら困惑することだったようだ。
ただ、どうすればいいのかなど、アンナにもわからない。
「……祝福すれば、いいんだと思います」
「ティリア?」
「人間と魔族が結ばれるなら、私達の両親と同じです。それなら、祝福すればいいだけだと思います」
「ティリア、お前……」
そこで、ティリアが言葉を放った。
その言葉に、ツヴァイは目を丸くする。
しかし、すぐにツヴァイは笑顔になった。それは、優しい笑顔だ。
「そうだな……」
それだけ言って、ツヴァイの話は終わりだった。
すると、教授が声を出す。
「せっかくなら、次はいないかな? ここでなら、普段言えないようなこともいえると思うけど? 特に、カルーナとか、何かないのかな?」
「え?」
言葉を振られたカルーナは、目を丸くする。
自分が振られると、思っていなかったかのような表情だ。
「……それなら。俺が話そう」
カルーナが色々と考えていると、ガルスが言葉を放った。
それが、助け船であることを、カルーナは理解する。
ただ、カルーナは考えていた。
ここで、全てを打ち明けるのもいいのかもしれないと。
アンナ達の話は、まだしばらく続くのだった。
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