赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第113話 魔の大陸

 アンナ達は、海魔将タイラーンの呪いによって起こった嵐で、魔の大陸に辿り着いている。
 魔の大陸は、魔界に繋がる魔族達の拠点である。
 そのため、アンナ達は戦いの準備を進めていたのだ。

「こ、これは……?」

 しかし、船の甲板から見る景色に、アンナ達は驚いていた。
 そこに待ち構えていると予測されていた、魔族達がいないのだ。

「ガルス、ここは魔の大陸で、間違えないんだよね?」
「……ああ、そうだ。ここが、魔の大陸であることは、間違いない」

 アンナの問い掛けに、ガルスもそう答えた。
 やはり、ここは魔の大陸で間違いないようだ。
 それなら、何故ここに魔族がいないのか、アンナ達にはわからなかった。

「とにかく、奥に進んでみようか……このままでは帰れないし、本当に魔族がいないか、確かめておきたいし……」
「ああ、それがいいかもしれん。ただ、周囲の警戒は怠るな。もしかしたら、罠があるかもしれんからな……」

 アンナ達は、とりあえず前に進んでみることにする。
 現在、海は未だに嵐に包まれており、帰ることができない。故に、魔族の同行は掴んでおきたいのである。

「それじゃあ、進んで行こう。ボーデンさんや船員の皆さんは、ここに残っていてもらえますか?」
「ああ、いいだろう。船の守りは任せておけ」

 アンナは、ボーデン達に船にいてもらうことにした。何かあった時、船を守ってもらうためだ。

「それなら、これを渡しておこう」
「これは?」
魔法通信機マジック・コネクターさ。これがあれば、遠距離でも会話できる」
「何?」

 そこで、教授が懐から取り出したものを、ボーデンに渡した。
 それは、遠く離れていても会話ができるものであるようだ。

「先程、アストリオン王国軍に渡していたものに通信したが、通じなくてね。恐らく、嵐のせいで遮断されているんだろう。もしかしたら、通信が入るかもしれないから、持っておいてくれ」
「ああ、それはいいが……お前らは、大丈夫なのか?」
「大丈夫、もう一つ持っているからね。僕達に連絡したい時は、こちらに通信を入れてくれ」
「なるほどな……」

 教授が渡したものにより、アンナ達とボーデン達の間で連絡がとれるようになった。
 これで、何かあっても大丈夫だ。

「よし、それじゃあ、皆、行こう!」

 アンナの一声で、勇者一行は魔の大陸に降り立つのだった。





 アンナ達は、魔の大陸に降り立ち、奥へと進んで行った。
 道中、特に魔族と会うこともなく、アンナ達の疑問は加速していく。

「本当に、魔族がいないのか……」
「うん、どうやら、そうみたいだね。でも、一体どうしてなんだろう?」
「……なんだか、これも不気味ですね」

 アンナ達がそんなことを話していると、建物が見えてきた。
 それは、城のようなものである。

「ガルス? あれは?」
「あれは闇魔城。闇魔将ドレイクがいるはずの場所だ」
「闇魔将か……でも、本当にいるのかな?」
「それはわからんな。周りに魔族がいないことから、あそこにも誰もいないかもしれん」

 どうやら、その城は闇魔将ドレイクがいるはずの場所なようだ。
 ただ、ガルスの言う通り、そこにいるとは限らない。現状が普通ではないので、そこも普通ではないはずだ。

「……とりあえず、闇魔城に入ってみよう。ドレイクがいた時は、戦うことになるけど、現状がどうなっているのか、知っておきたい」

 アンナの言葉で、一同は闇魔城に進んで行くのだった。





 アンナ達は、闇魔城の中を進んでいた。
 ここでも、特に魔族と会うことはない。
 そのまま進んで行き、アンナ達は闇魔城の奥まで辿り着いていた。
 そこには、大きな黒い渦のようなものがある。

「こ、これは……」
「これこそが、魔界に繋がるゲートだ」
「これが……」

 どうやら、それこそが魔界への道であるようだ。

「ここを通れば、魔界に辿り着くということだね……」

 アンナはゲートの前に立ち、様子を伺う。
 そこからは向こう側を見ることはできず、黒い道が続いているだけだ。

「……皆、聞いて欲しい」

 アンナは、そこで皆に振り返り、ゆっくりと口を開いた。
 今感じていることを、話すためだ。
 それは、これからの戦いのことである。

「今から、魔界に突入したいと思う」
「お姉ちゃん!?」

 アンナの発言に対して、他の皆は驚いた。
 それは、かなり衝撃的な発言だからだ。
 そんな仲間の反応を受けながら、アンナは言葉を続ける。

「海魔団が滅び、残っているのは、闇魔将ドレイクとその部下達、操魔将、影魔将、そして、魔王……その残りを、この隙に叩きたい」
「で、でも、もしかしたら、闇魔将ドレイクやその部下が、待ち構えているかもしれないよ?」
「……その可能性は、低いと思う。仮に、闇魔将ドレイクが魔王の元に戻っていたとしても、ここに誰も残さないなんてことはあるはずがない……だから、魔族側に何かがあったと考えられる」

 アンナは、魔族の不在は、魔王軍側に何かがあったからだと考えていた。
 その場合、今の魔王軍には大きな隙があるといえる。そのため、今一気に攻め込むことこそが、いいと思ったのだ。

「……なるほど、確かにそれなら、いいのかもしれないね……」

 アンナの言葉は、カルーナ達も納得できた。
 そのため、魔界への突入が決まったのだ。

「教授、ボーデンさん達に連絡を入れてもらえますか?」
「ああ、任せてくれ」

 アンナ達は、教授の連絡が終わるまで、しばらく待つのだった。

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