赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第101話 獣王の弱点

 アンナ以外の勇者一行は、獣王と対峙している。
 無敵に見えた獣王だったが、カルーナ達に勝機が見え始めていた。
 カルーナが放った消滅呪文フレアによって、獣王の左腕を消滅させたのだ。

「まさか、この俺の回復能力が機能しないとは、驚いたぞ」

 片腕を失った獣王だったが、何故か笑っていた。
 しかし、それでもカルーナ達に有効手段ができたことは変わらない。

「でも、どうして消滅呪文フレアが……」

 そんな中、カルーナは疑問を感じていた。
 自身で放った魔法だが、消滅呪文フレアが獣王の肉体を復活させなくなった理由がわからないのだ。
 それがわかれば、消滅呪文フレア以外の有効手段が見つかるかもしれないと思ったからである。

「恐らく、消滅呪文フレアの性質にあるのだろう」
「性質……」

 カルーナの疑問に対して答えたのは、ガルスだった。
 ティリアの治療が終わり、彼はカルーナの隣に並ぶ。

消滅呪文フレアは、消滅させる魔法だ。それは、獣王の再生する力をも消滅させてしまったのだろう」
「闘気まで……?」
「だが、今は理由などどうでもいいことだ。お前の消滅呪文フレアが奴に有効だとわかっただけで充分だ」
「そうでしたね……」

 カルーナは、自身の疑問を気にしないことにする。
 ガルスの言う通り、今は有効だとわかった消滅呪文フレアで攻めるしかないのだ。

「カルーナ、すぐに撃てるか?」
「それが、そうでもないんです……」
「なるほど、気軽に使える訳でもないようだな」

 消滅呪文フレアは、かなりの魔力を集中させなければならない魔法だった。
 そのため、すぐに撃てず、何度も撃つことができないものである。

「ならば、俺が時間を稼ごう」

 そう言って、ガルスは獣王へと向かっていく。

「ほう?」

 そんなガルスを、獣王は片手迎え撃つ。

竜人拳リザード・ナックル!」
「ふん!」

 ガルスの拳を獣王が受け止める。
 だが、それで片手は封じられた。

「はあっ!」

 ガルスは、もう片方の手を振るう。
 これで、獣王も防御できないはずだった。

「グルル!」
「がっ!?」

 だが、獣王はその頭を振るうことで、ガルスの拳を防いでくる。
 その固い頭で、ガルスの拳は弾かれてしまう。

「ふん!」
「があっ!?」

 その隙に、ガルスは獣王によって投げ飛ばされてしまった。
 片腕でも、獣王の強さは健在だ。

雷の槍サンダー・ランス!」
「くっ!?」

 そんな獣王の体を、後ろからツヴァイの槍が貫く。
 ガルスが攻撃している中、ツヴァイは密かに近寄っていたのだ。

「これで、どうだ!?」
「ふん! この程度か!?」
「ぬわっ!?」

 獣王は、その体を大きく旋回させる。
 その衝撃で槍は抜け、ツヴァイは吹き飛ばされてしまった。

「おおおっ!」
「む?」

 獣王を次に攻撃したのは、ネーレだ。
 ネーレは鉄線を獣王の体に巻き付かせ、締め付ける。
 彼女も、二人が戦っている間に、罠を仕掛けていたのだ。

「ふん!」
「なっ!?」

 しかし、ネーレの力では獣王には敵わず、その鉄線は引き千切られてしまった。

「喰らうがいい!」
「があっ!」

 自由になった獣王の拳が振るわれ、ネーレが大きく吹き飛ぶ。
 獣王はそれを見ることもなく、カルーナの方に目を向ける。

「さて、まずは厄介なお前から片付けさせてもらう」
「くっ!」
「この俺の左腕を奪ったことに敬意を表し、一撃で叩き潰してやろう」

 獣王が、カルーナに向かってきた。
 だが、カルーナは魔力の集中を続ける。

麻痺呪文パラライズ!」
「何!?」

 そこで、獣王の動きが停止した。
 それは、ティリアの放った魔法の効果である。
 カルーナは、それを予測して動かなかったのだ。

「聖女か。まさか、ここまでの攻撃ができるとはな」
「私も、成長していますので」
「なるほど。だが、まだまだだ」

 しかし、その拘束も長くは続かなかった。
 ゆっくりと、獣王の体が動き始める。

「カルーナさん……もう、駄目そうです。後は……」
「ティリアさん……わかりました、下がってください」

 カルーナは、手に集中させた魔力を解き放つ。

消滅呪文フレア!」
「ふん!」

 カルーナの放った魔法を、獣王は躱す。
 ティリアの拘束が、完全に解けってしまっていたのだ。
 その様子を見て、獣王が笑う。

「残念だったな。ぎりぎりだったぞ」
「くっ!」
「だが、これで終わりだ」

 獣王が、ゆっくりとカルーナとティリアに近づいてくる。

「そうはさせない!」

 そこで、一つの声が響く。
 その声の主は、獣王の頭上から現れる。

「何!?」
消滅呪文フレア!」

 その男から放たれた魔法が、獣王に降り注ぐ。
 獣王は、瞬時に回避したが、その左足の先が消滅していた。
 声の主は、カルーナとティリアの前に立つ。

「無事かい? カルーナ、ティリア」
「あなたは……教授!?」

 その人物は、教授。
 カルーナに消滅呪文フレアを授けた、教えを授ける者である。

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