赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第89話 地下の修行場

 アンナ達は、レミレアの勧めで、教授と呼ばれし男の元へ来ていた。
 教授から強さの本質は、愛であることを教わったアンナ達に、新たなる提案が持ち掛けられる。
 それは、アンナにとって期待していたことだった。

「この家の地下には、僕が作った修行場がある……そこで、君達を強くする」
「しゅ、修行場……」

 アンナ達の前には、地下へと続く階段がある。
 そこには、教授が作った修行場があるようだ。

「この修行場で、君達それぞれに課題を与える。そうすれば、君達はさらに強くなれるだろう」
「それぞれに?」
「ああ、最も、ガルスやツヴァイに関しては、特に言うことはないけどね」

 教授の言葉に、ガルスとツヴァイが反応する。

「俺とガルスに言うことがないとは?」
「君達二人は、既に完成しているはずだ。今更僕が口を挟む必要はないだろう」
「なるほどな、ならば、俺とツヴァイは勝手にトレーニングしておこう」

 教授の見立てによると、ガルスとツヴァイは完成しているらしい。
 つまり、修行をするのは残りのメンバーということになる。

「まず、アンナ、君は聖闘気を極めなければならない」
「聖闘気……」

 聖闘気とは、アンナの持つ聖なる光と闘気を組み合わせたものだ。
 アンナは、それを動きながら作ることが難しいのである。最近は、少しなら作れるようなったが、それでも完璧ではないのだった。

「わかりました。それで、どうやって……?」
「それは、中に入ればわかるよ」
「中に?」

 教授は詳しい説明をせず、他の者に目を向ける。

「次にティリア……それとネーレもか」
「は、はい」
「俺達か」

 次はティリアとネーレが、何をするのかを言うようだ。
 ネーレをつけ足したため、元はティリアのために考えていたものなのかもしれない。

「君達は戦闘能力を鍛えた方がいい。そのためのメニューがある」
「は、はい、わかりました」
「よし、よくわからないが、やってやるぜ」

 次に、教授はカルーナに目を向けた。
 残っているのは、カルーナだけなので、当然だろう。

「カルーナ、君には新たなる魔法を授けよう」
「あ、新たなる魔法……ですか?」
「そう、それは究極の魔法、消滅呪文フレアをね……」
消滅呪文フレア……!?」

 カルーナには、新たなる魔法を授けてくれるようだ。
 その呪文の名前は、消滅呪文フレアというらしい。

「さて、それでは全員、入ってくれ。修行を始めよう」

 教授の言葉で、アンナ達は地下へと足を進めていくのだった。





 アンナ達は、地下へ入った後、それぞれの部屋にわけられた。
 その部屋は、何もない部屋だ。
 アンナは、教授にそこで待つように言われたのである。

「さて、アンナ」
「え!?」

 アンナが部屋の中で待っていると、目の前に教授が現れた。
 しかし、どこか透明であり、普通の状態ではなさそうだ。

「ああ、これは魔法で作った分身のようなものさ。気にしないでくれ」

 教授曰く、これは魔法で作ったものらしい。
 恐らく、それぞれの元へ現れているのだろう。

「それで教授、私の訓点は……?」
「ふむ、まず、聖闘気を練ってもらえるかな?」
「あ、はい」

 教授に言われ、アンナは聖闘気と練り始める。
 動かないままなら、それ程難しくない。そのため、すぐに聖闘気を練ることができた。

「……これで、いいでしょうか?」
「いや、駄目だね」

 しかし、教授はそう言って、アンナを否定する。

「だ、駄目というと……?」
「遅いね……もっと早く練らないと駄目だ」」
「もっと早く?」

 教授曰く、アンナの聖闘気を練るスピードは遅いらしい。
 アンナの中では、かなり早くなったと思っていたのだが、これでは駄目なようだ。

「でも教授、どうすればいいんですか?」

 だが、そう言われても、アンナにはどうしようもできない。
 今まで自身で突き詰めたのが、このスピードなのだ。

「ふむ、そうだね……聖闘気を練る時、どんな感覚で練っているんだい?」
「えっと、集中して、かき混ぜるような感じです」
「うーん、それでは駄目だね。もっと、リラックスするんだ」
「リラックス?」

 教授は、アンナに対して、そう言ってくる。
 だが、それはアンナには理解できないことだった。

「そんなこと、できるんでしょうか?」
「ああ、できるはずだ。まず、体の力を抜いてみてくれ」
「は、はい」

 疑問を感じたアンナだったが、とりあえず言われた通りにする。

「そう、リラックスして……」

 アンナは、体の力を抜いていく。
 すると、体に流れる闘気と聖なる光の流れがわかる。

「おっと、リラックスして」

 しかし、アンナはそれを掴もうとして、集中してしまった。
 そのことで、教授からさらなる言葉がかけられる。

「リラックスを保つんだ、目先のものに捉われてはならないよ」
「は、はい……」

 アンナは教授の言われた通り、リラックスを続ける。
 今度は、闘気なども気にしない。
 しばらく、沈黙が続く。

「ふむ……」

 そして、アンナは理解する。自身の体に流れる闘気と聖なる光が、混ざり合っていくことを。

「わかるかい?」
「はい……」

 そんなアンナに、教授が声をかける。

「それが本当の聖闘気を出す方法さ。そうすることで、すぐに聖闘気を出せるようになるだろう」
「は、はい……」
「それが安定するようになったら……そうだな、ある程度体を動かしたりしてみるんだ」
「わ、わかりました」

 アンナは、教授の指示に従うことにした。
 この方法ならば、聖闘気が掴めると思ったのだ。

「さて、それで、疲れたりしたら休んだらいい。向かいの部屋には、ベッドや食べ物が置いてある。自由にしてくれていい」
「そうなんですか? ありがとうございます」

 こうして、アンナの修行が始まるのだった。

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