赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第83話 分身の弱点
アンナ達は、水魔将フロウと対峙している。
フロウの水の鏡によって、アンナ達は自分自身と同じ力を持つ分身と戦うことになっていた。
自分自身との戦いに翻弄されるカルーナやガルスだったが、アンナだけは違い、分身を圧倒したのだ。
「次は……お前だ」
アンナは、崩れ落ちた自分の分身に見向きもせず、フロウの本体を守っている分身に歩み寄る。
「……なんという成長速度だ」
「そりゃあ、どうも……」
「拙者の水の鏡を破ったのは、お前が初めてだ。しかし、いいのか? 仲間の元に行かなくて?」
近寄ってくるアンナに対して、フロウがそんなことを聞いてきた。
しかし、アンナはそんなことを気にしてはいない。
「私の仲間なら、なんとかするさ……それより、お前をなんとかしないといけないんだ」
「ほう……?」
「最後の分身が、どの道倒さなければならないからな……」
アンナは、カルーナやガルスを手伝うより、最後の分身を倒すことを優先することにした。
どちらかに加勢しても、最後の分身が加勢してくるのは明白だ。そのため、アンナは自ら向かっていくことにしたのだ。その方が、本体にも接近できるため、好都合だった。
「……仕方ないか。少しでも、消耗しているなら、拙者にも勝機があるだろう」
「弱気だな……」
分身のフロウは、アンナ相手に構えをとる。
アンナも聖剣を握りしめ、分身フロウに向かっていく。
「十字斬り!」
「むう!」
アンナは、まず牽制として、十字の斬撃を放った。
分身フロウは、後ろに本体がいることを考慮してか、動かない。
アンナの斬撃が、分身に当たり、そこから水が噴き出してくる。
「くっ……! なんという……力」
「やはり、そこからは動けないようだな……」
「本体を攻撃される訳には、いかないのでね……」
「なら、これで終わりだ……」
フロウの返答は、アンナの予想した通りのものだった。
そのため、アンナは大きく剣を振りかぶり、勝負を決めることにする。
「それはどうかな?」
「何?」
しかし、そこで分身フロウの口が大きく歪んだ。
アンナは、何かがくることを直感的に理解する。
「はっ!?」
その直後、アンナは気づく。先程、分身フロウの体から飛んだ水の形が変化していることに。
「喰らうがいい……水魔奥義!」
水は、三日月状に変化し、アンナに向かって来る。
「三日月の水撃!」
「くっ!」
アンナは、それを躱そうと体を動かしたが、無数の水は、周囲を全て網羅していた。
「聖なる光よ! 私を守れ!」
逃げ場のなくなったアンナは、聖剣を変化させ、自身の周囲に張り巡らせる。
聖なる光に、水の刃がぶつかっていく。
「ふふふ、まだ終わらん」
「くっ……!」
水の刃は、アンナにどんどんと向かってきていた。
聖なる光で、なんと防御はできるが、アンナは動くことができない。このままでは、いずれ防御が崩されてしまうだろう。
アンナは、必死に思考し、打開策を考えるのだった。
◇◇◇
カルーナとガルスは、引き続き、自身の分身と戦っていた。
「まさか、アンナの分身がやられるとはな……」
「……あんなことができるのは、アンナだけだ……」
分身ガルスが、ガルスに対して話しかけてくる。
二人は、同じガルスであるため、アンナのしたことに驚愕しているのだ。それと同時に、アンナのようにガルスができないことも理解していた。
「やっぱり、お姉ちゃんはすごい……」
「うん、敵ながら、そう思うよ……」
カルーナも分身と話している。
こちらは、アンナを褒めたたえるような内容になっていた。
やはり、分身カルーナも、カルーナを同じ思考のようだ。
「さて……」
「何?」
そこで、カルーナは動いた。
大きく体を動かし、ガルスの元へと行ったのだ。
「ガルスさん! 交代!」
「む!? わかった!」
カルーナの声にガルスが応え、二人の位置が入れ替わった。
分身カルーナが、その意図を見抜いたようで、口を開く。
「なるほど、確かに私では、ガルスさんには勝てないか……」
「……だが、それはお前も同じことだ」
それを受けて、分身ガルスも続いた。
カルーナの炎魔法は、ガルスには通用しない。
そのため、どちらのガルスにも、対抗手段がないのである。
「……それは、違うかな?」
しかし、カルーナは笑う。
そして、その手をガルスに向けて、魔法を放つ。
「紅蓮の不死鳥!」
炎の鳥が、分身ガルスに向かっていた。
分身ガルスは、身を動かすこともなく、それを受け止める。
「無駄だ……この俺に、炎は効かん……」
「……それは本当のガルスさんの話だよ?」
「俺は、本物と同じ力を持っているのだ……変わりはない」
分身ガルスは、カルーナの攻撃がまったく効かないと思っているようだ。
だが、カルーナの予想は違った。
「む……?」
そこで、分身ガルスの体に変化が起こる。
体から、煙のようなものが噴き出てきているのだ。
「これは……?」
「……ガルスさんの体は、熱に強い体。だけど、あなたの体はガウスさんと大きく違う点がある」
「何……?」
「あなたは、水によって作られた分身。つまり、あなたの体は熱によって温められ、蒸発した」
「ば、馬鹿な……」
分身ガルスの体が、どんどんと崩れていく。
その炎の温度に、水の体が耐えられなかったのだ。
分身ガルスは、カルーナに目を向けながら、ゆっくりと口を開く。
「み、見事だ……俺すら知らん、弱点を、突くとは……」
「……あなたなら、確実に私の攻撃を受けてくれる。そう思ったから。あなたを相手することにしたの。予想が外れていたら、どうにもできなかったけど……」
「その心意気が……お前を勝たせたのだろうな、誇るがいい……」
それだけ言って、分身ガルスは水蒸気に変わっていった。
「……なるほど、あれが私の狙いか……」
「……」
分身カルーナは、分身ガルスが水蒸気となったのを見て、感心しているようだ。
最早、彼女に勝ち目はほとんどない。
「終わらせよう……」
「終わらせるわけには……いかない!」
分身カルーナは、向かって来るガルスに対して、魔法を放つ。
「紅蓮の不死鳥!」
「ふん!」
分身カルーナの魔法を、ガルスは躱さなかった。
本物のガルスには、炎魔法は効かないのだ。
「くっ!」
「竜人拳!」
「がはっ!」
ガルスの拳が、分身カルーナの体を貫く。
その体から、水が噴き出していく。
ガルスの一撃は完全に入り、分身のカルーナは形を保っていられない。
「やっぱり……駄目か」
「お前と俺の相性が悪かったな」
「そうみたい……ね」
分身カルーナの体が崩れ、周囲の水へと流れていく。
「カルーナ、見事だったぞ」
「ありがとうございます。でも、それより、お姉ちゃんを……」
「ああ、行くぞ」
カルーナの機転によって、二人は自らの分身を倒すことができたのだった。
フロウの水の鏡によって、アンナ達は自分自身と同じ力を持つ分身と戦うことになっていた。
自分自身との戦いに翻弄されるカルーナやガルスだったが、アンナだけは違い、分身を圧倒したのだ。
「次は……お前だ」
アンナは、崩れ落ちた自分の分身に見向きもせず、フロウの本体を守っている分身に歩み寄る。
「……なんという成長速度だ」
「そりゃあ、どうも……」
「拙者の水の鏡を破ったのは、お前が初めてだ。しかし、いいのか? 仲間の元に行かなくて?」
近寄ってくるアンナに対して、フロウがそんなことを聞いてきた。
しかし、アンナはそんなことを気にしてはいない。
「私の仲間なら、なんとかするさ……それより、お前をなんとかしないといけないんだ」
「ほう……?」
「最後の分身が、どの道倒さなければならないからな……」
アンナは、カルーナやガルスを手伝うより、最後の分身を倒すことを優先することにした。
どちらかに加勢しても、最後の分身が加勢してくるのは明白だ。そのため、アンナは自ら向かっていくことにしたのだ。その方が、本体にも接近できるため、好都合だった。
「……仕方ないか。少しでも、消耗しているなら、拙者にも勝機があるだろう」
「弱気だな……」
分身のフロウは、アンナ相手に構えをとる。
アンナも聖剣を握りしめ、分身フロウに向かっていく。
「十字斬り!」
「むう!」
アンナは、まず牽制として、十字の斬撃を放った。
分身フロウは、後ろに本体がいることを考慮してか、動かない。
アンナの斬撃が、分身に当たり、そこから水が噴き出してくる。
「くっ……! なんという……力」
「やはり、そこからは動けないようだな……」
「本体を攻撃される訳には、いかないのでね……」
「なら、これで終わりだ……」
フロウの返答は、アンナの予想した通りのものだった。
そのため、アンナは大きく剣を振りかぶり、勝負を決めることにする。
「それはどうかな?」
「何?」
しかし、そこで分身フロウの口が大きく歪んだ。
アンナは、何かがくることを直感的に理解する。
「はっ!?」
その直後、アンナは気づく。先程、分身フロウの体から飛んだ水の形が変化していることに。
「喰らうがいい……水魔奥義!」
水は、三日月状に変化し、アンナに向かって来る。
「三日月の水撃!」
「くっ!」
アンナは、それを躱そうと体を動かしたが、無数の水は、周囲を全て網羅していた。
「聖なる光よ! 私を守れ!」
逃げ場のなくなったアンナは、聖剣を変化させ、自身の周囲に張り巡らせる。
聖なる光に、水の刃がぶつかっていく。
「ふふふ、まだ終わらん」
「くっ……!」
水の刃は、アンナにどんどんと向かってきていた。
聖なる光で、なんと防御はできるが、アンナは動くことができない。このままでは、いずれ防御が崩されてしまうだろう。
アンナは、必死に思考し、打開策を考えるのだった。
◇◇◇
カルーナとガルスは、引き続き、自身の分身と戦っていた。
「まさか、アンナの分身がやられるとはな……」
「……あんなことができるのは、アンナだけだ……」
分身ガルスが、ガルスに対して話しかけてくる。
二人は、同じガルスであるため、アンナのしたことに驚愕しているのだ。それと同時に、アンナのようにガルスができないことも理解していた。
「やっぱり、お姉ちゃんはすごい……」
「うん、敵ながら、そう思うよ……」
カルーナも分身と話している。
こちらは、アンナを褒めたたえるような内容になっていた。
やはり、分身カルーナも、カルーナを同じ思考のようだ。
「さて……」
「何?」
そこで、カルーナは動いた。
大きく体を動かし、ガルスの元へと行ったのだ。
「ガルスさん! 交代!」
「む!? わかった!」
カルーナの声にガルスが応え、二人の位置が入れ替わった。
分身カルーナが、その意図を見抜いたようで、口を開く。
「なるほど、確かに私では、ガルスさんには勝てないか……」
「……だが、それはお前も同じことだ」
それを受けて、分身ガルスも続いた。
カルーナの炎魔法は、ガルスには通用しない。
そのため、どちらのガルスにも、対抗手段がないのである。
「……それは、違うかな?」
しかし、カルーナは笑う。
そして、その手をガルスに向けて、魔法を放つ。
「紅蓮の不死鳥!」
炎の鳥が、分身ガルスに向かっていた。
分身ガルスは、身を動かすこともなく、それを受け止める。
「無駄だ……この俺に、炎は効かん……」
「……それは本当のガルスさんの話だよ?」
「俺は、本物と同じ力を持っているのだ……変わりはない」
分身ガルスは、カルーナの攻撃がまったく効かないと思っているようだ。
だが、カルーナの予想は違った。
「む……?」
そこで、分身ガルスの体に変化が起こる。
体から、煙のようなものが噴き出てきているのだ。
「これは……?」
「……ガルスさんの体は、熱に強い体。だけど、あなたの体はガウスさんと大きく違う点がある」
「何……?」
「あなたは、水によって作られた分身。つまり、あなたの体は熱によって温められ、蒸発した」
「ば、馬鹿な……」
分身ガルスの体が、どんどんと崩れていく。
その炎の温度に、水の体が耐えられなかったのだ。
分身ガルスは、カルーナに目を向けながら、ゆっくりと口を開く。
「み、見事だ……俺すら知らん、弱点を、突くとは……」
「……あなたなら、確実に私の攻撃を受けてくれる。そう思ったから。あなたを相手することにしたの。予想が外れていたら、どうにもできなかったけど……」
「その心意気が……お前を勝たせたのだろうな、誇るがいい……」
それだけ言って、分身ガルスは水蒸気に変わっていった。
「……なるほど、あれが私の狙いか……」
「……」
分身カルーナは、分身ガルスが水蒸気となったのを見て、感心しているようだ。
最早、彼女に勝ち目はほとんどない。
「終わらせよう……」
「終わらせるわけには……いかない!」
分身カルーナは、向かって来るガルスに対して、魔法を放つ。
「紅蓮の不死鳥!」
「ふん!」
分身カルーナの魔法を、ガルスは躱さなかった。
本物のガルスには、炎魔法は効かないのだ。
「くっ!」
「竜人拳!」
「がはっ!」
ガルスの拳が、分身カルーナの体を貫く。
その体から、水が噴き出していく。
ガルスの一撃は完全に入り、分身のカルーナは形を保っていられない。
「やっぱり……駄目か」
「お前と俺の相性が悪かったな」
「そうみたい……ね」
分身カルーナの体が崩れ、周囲の水へと流れていく。
「カルーナ、見事だったぞ」
「ありがとうございます。でも、それより、お姉ちゃんを……」
「ああ、行くぞ」
カルーナの機転によって、二人は自らの分身を倒すことができたのだった。
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