赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~

木山楽斗

第47話 鎧魔城突入

 アンナとカルーナ、ティリアの三人は、鎧魔城に向かっていた。
 王都から出て、しばらく歩いて行くと、古びた城が見えてきた。情報によると、そこが鎧魔団の拠点である鎧魔城らしい。
 しかし、拠点であるというのに、周囲に見張りの姿はなく、無防備な状態であった。

「ここが鎧魔城……」
「お姉ちゃん、もう突入するの?」
「うん、多分、中にはあの二人以外、誰もいないだろうし……」

 アンナはそう言って、城の扉を開けて中に入って行った。カルーナとティリアも、それに続く。
 鎧魔城の中は、普通の城と変わらないが、かなり古びていた。

「なんだか、嫌な雰囲気の場所だね……」
「うん、けど本当に誰もいないよ」
「鎧魔団の方々は、本当にいなくなったんですね……」

 城の中にも、団員はおらず辺りは静まり返っていた。

「ツヴァイや、プラチナスは一体どこにいるんだろう……?」

 アンナ達は警戒しながら、城内を歩き始めたが、ツヴァイやプラチナスの姿は見当たらなかった。その代わりに、上へと続く階段を発見した。

「上か……」
「行くしかないよね」
「そうだね、二人とも、行こう」

 そう言って、アンナ達は上の階へと進んで行った。しばらく道なりに進んで行くと、ある部屋の前までたどり着いた。

「玉座か、なるほど……」
「お姉ちゃん、なんとなくだけど……」
「うん、ここにいる気がする」
「そ、そうなんですか……」

 アンナは、扉に手をかけると、一気に開け放った。

「……来たか」

 扉を開けた先、玉座にはツヴァイが座っており、その隣にはプラチナスが控えていた。

「ツヴァイ!」
「待っていたぞ、最早、俺はお前を倒すことでしか、魔王軍にいられん」

 ツヴァイは立ち上がり、槍を構えた。アンナもそれに合わせて聖剣を構えた。

「プラチナス!」
「はっ!」

 プラチナスがツヴァイに命じられて、アンナ達の元に飛び掛かかりながら、筒のようなものを取り出した。

「あれは、魔法の筒マジック・ポット!?」
「カルーナ、それって!」
「魔法を閉じ込めておける筒だよ!」
「何か仕掛けてくるのか!」

 魔法の筒マジック・ポットが光輝き、数秒その場にいる全員の視界が奪われた。
 そして、次に目を開けた時、カルーナとプラチナスがいなくなり、ティリアがツヴァイの方に移動していた。

「なっ……!」
「成功したか……」
「何が起こったんですか……?」

 アンナとティリアは、目を丸くして驚き、ツヴァイは不敵に笑っていた。

「あれは、この鎧魔城でしか使えない転移の魔法だ。これで、俺達は有利に戦える。何より、ティリアが手に入った」
「カルーナをどこにやったんだ!?」
「あの魔法使いなら、別の部屋でプラチナスが相手している……すぐに終わるだろう。最も、お前もすぐに後を追うことになるがな……」
「くっ!」

 アンナとツヴァイはお互いに構えながら、相手の様子を伺うのだった。




「ここはっ!?」

 カルーナが目を開けると、そこは知らない部屋だった。
 目の前には、プラチナスがおり、カルーナの質問の答えを話し始めた。

「場所を移動させてもらった。君の相手をするよう、ツヴァイ様に言われているのでね」
「くっ! 自分達に有利な対戦相手を選んだって訳ね……」
「なんとでも言うがいい、君はここで終わるのだ!」

 プラチナスが剣を構える。その態勢は、カルーナが何度も見たものだった。

白金の衝撃プラチナ・ブラスト!」

 プラチナスの剣から、白金の闘気が放たれた。

「くっ!」

 カルーナは攻撃を躱し、魔法を放った。

小さなリトル紅蓮の火球ファイアー・ボール!」
「私に魔法は通用しない! 反射リフレクト!」

 プラチナスの体が光輝き、カルーナの魔法を反射した。カルーナは、さらにそれから逃れるように走る。

「君には、散々苦しめられたが、この鎧魔城では、作戦などできるはずはない! よって、君に勝目はないだろう!」
「そんなの、やってみなくちゃわからない!」

 カルーナは身を躱しながら、考えていた。自分が思いついた作戦が、成功するかどうかを。

白金の衝撃プラチナ・ブラスト!」

 プラチナスは、さらに闘気を放ち、カルーナを攻撃してきた。
 カルーナは身を転がしながら躱して、もう一度魔法を使う。

小さなリトル紅蓮の火球ファイアー・ボール!」
「む? また魔法? 反射リフレクト!」

 プラチナスは、当然魔法を反射し、カルーナはまたも自分の攻撃を躱すことになった。

「何を考えている……?」
「一つ……わかったことがある」
「何……?」

 プラチナスの質問に、カルーナは不敵な笑みで答えていた。

「あなたは反射リフレクトを使っている時、またはその前後数秒、動くことができない」
「むっ……! 気づいていたのか……」
「つまり、あなたの最大の隙は、反射リフレクトを使う前後にあるということ」

 カルーナは、数回の反射リフレクトによって、そのことを見抜いていた。

「だが、それがわかったところで、なんの意味もない……いくら君でも、その隙をつくことはできない」
「……くっ!」

 確かに、プラチナスの言う通り、その隙をつくのは難しかった。魔法を連続で撃っても、反射を継続されるだろう。つまり、プラチナスが反射を解いた瞬間に魔法を当てなければならない。

「確かに、難しいかもしれない。だけど……」
「何……?」
「やってみせる!」

 カルーナは、右手に魔力を集中させ投げつける。

小さなリトル紅蓮の火球ファイアー・ボール!」
「無駄だ! 反射リフレクト!」

 プラチナスの体で、火球が跳ね返る。その瞬間、カルーナはプラチナスの元へと駆け出していた。

「何を!?」
「はあああああああ!」

 カルーナは、再び魔力を集中させる。それを見たプラチナスは、反射リフレクトを解かず、魔法に備えた。
 しかし、カルーナは魔法を放たなかった。代わりに、左手の杖を叩きつけた。

「なんだ!?」

 だが、そんな攻撃は、プラチナスに効くはずもなかった。カルーナは殴った後、すぐに後退していた。

「そんな攻撃が、私に効くとでも思ったのか? いや、君のことだ。何かしらの意図があったのか?」
「仮にあったとして、私がそれを言う訳ない」

 カルーナは、杖を確認していた。杖は、熱くなっていた。
 そのことから、カルーナは確信した。今、プラチナスの体は熱を帯びているのだと。反射リフレクトは成功しているが、火球の熱だけは、その鎧に伝わっていたのだ。
 近づいた時にも、その熱は感じていたが、これで確信することができた。

「まあいい、喰らえ! 白金の衝撃プラチナ・ブラスト!」

 プラチナスは、再び闘気による攻撃を行った。
 カルーナは、それを躱しながら、さらにプラチナスの体を熱しにかかる。

小さなリトル紅蓮の火球ファイアー・ボール!」
反射リフレクト!」

 プラチナスは、カルーナが何かを考えているとわかっているようだが、それでも反射リフレクトを行っていた。何があっても、攻撃を受けるようなことはしないので、それは当然だろう。

小さなリトル紅蓮の火球ファイアー・ボール!」

 カルーナは反射された火球を躱しながら、再び魔法を放った。

「くっ! 反射リフレクト!」

 意図のわからない攻撃に、プラチナスは戸惑っているようだ。そもそも、リビングアーマーは自分の体に傷や変化があっても、それを感じ取ることができない。プラチナスは、自分が熱されていることに気づいてないのだ。

「何をしているのだ!?」
「さあね!」

 次にカルーナは、杖を構えた。この杖には、魔力を込めることで魔法が使える、魔石が埋め込まれていた。そして、カルーナは魔石に魔力を込めて、その魔法を使う。

氷結呪文アイス!」

 杖から冷気が放たれて、プラチナスに向かっていく。

反射リフレクト!」

 プラチナスは、当然反射リフレクトの態勢に入った。冷気はプラチナスの体に跳ね返っていくが、そこで違う変化が起こった。

「ぬうっ!?」

 プラチナスの体に、ひびが入っていた。

「なっ……何が!?」

 自分の体に起こった変化に、プラチナスは動揺していた。

「よしっ……!」

 カルーナは、自分の作戦が成功してたことで笑みを浮かべるのだった。

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