赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第40話 鎧魔将の力
アンナとツヴァイは、引き続き対峙していた。
ツヴァイの持つ武器は、槍である。その間合いはアンナが得意とする剣よりも広く、迂闊に飛び込むのは危険だった。
「聖なる光よ、伸びろ!」
そのため、アンナは聖剣を伸ばした。これなら、槍の間合いの外から攻撃できる。躱されたとしても、そこから一気に距離を詰めて、攻撃すればよいだけだ。
「ほう……」
ツヴァイは、声をあげつつもその場から動くことはなかった。
「ふん!」
ツヴァイは持っている槍を回転させ始めた。
聖剣は、その回転に巻き込まれて、はじけ飛んでいった。
「くっ……!」
「そんな生ぬるい攻撃で、俺を倒せると思うなよ」
「だったら!」
アンナは、右手に聖なる光を集め始めた。
「聖なる衝撃波!」
そして、聖なる光を相手に向かって打ち出した。
「ふっ! 単調な攻撃だな」
ツヴァイは、ゆっくりと身を躱し、光の弾の軌道から外れた。
光の弾は、空を突き抜け、飛んでいった。それを認識したツヴァイは、アンナに向かって言葉を放った。
「強力な攻撃のようだが、当たらなければ意味はないぞ」
「まだだ!」
「何!?」
アンナが手を引くと、光の弾が翻り、再びツヴァイに向かっていった。
アンナの方を見ていたツヴァイに、光の弾が着弾する。
「ぬうう……!」
寸前でツヴァイは防御しており、攻撃は防がれたようだ。しかし、ツヴァイの鎧に僅かにひびが入っており、バランスを崩していた。
「はあああ!」
アンナは地面を蹴り、飛び出した。ツヴァイが怯んでいる内に、一気に攻撃を仕掛けるためだ。
「ふふっ……」
「えっ!」
しかし、ツヴァイは不敵に笑っていた。
そして、よろけた体勢のまま、アンナに向かって槍を突いた。
「それくらい!」
アンナは、槍を躱し一気に懐に入り込む。
「十字斬り!」
さらに、そこに必殺の一撃を叩きこんだ。
その時、ツヴァイの鎧が光輝いた。
「鎧の障壁!」
「何!?」
ツヴァイの周りに闘気による層ができあがった。斬撃は、その層によって防御され、傷一つつけることができなかった。
「見誤ったな! ふん!」
「ぐああっ!」
無防備となったアンナに、ツヴァイは体全体でぶつかってきた。
その鎧の固さが、そのまま攻撃力になり、アンナは叫びをあげながら、後方に吹き飛んぶことになった。
「くっ!」
なんとかバランスを整えながら、追撃に備えるため、相手の様子を見る。
「ぬうん!」
「うっ!」
ツヴァイは距離を詰めながら、その拳を振るってきた。アンナは咄嗟に腕を交差させ、その攻撃を防御した。
「聖なる光よ! 伸びろ!」
アンナは、聖剣を地面に向けて伸ばした。聖剣はどんどんと伸びていき、アンナの体は空中にへと移動していった。
「とっ!」
そして、そのまま近くの店の屋根に着地した。
「む! そこまで逃げたか……」
ツヴァイも、流石にそこまで追撃することはできず、その場で立ち止まった。
「はあ、はあ……」
手に握る聖剣は、元の長さに戻っていった。アンナは疲労に息を切らしつつも、ツヴァイを見つめる。
恐らく、聖なる衝撃波を受けたのは、こちらを油断させるためだったのだろう。いつでも防御できるということを、こちらに知らないために、敢えて受けたのだ。
さらに、槍での攻撃もアンナが大技を使える隙をわざと与えるためのもの。全ては、アンナを油断させるための作戦だ。
「くそっ!」
まんまと作戦に嵌ってしまったアンナは、悔しさから声をあげていた。
「下りてこないか? ならば、こうするとしようか」
アンナがそんなことを考えていると、ツヴァイはそう言いながら、槍を店の方に向けた。
「さて、どうなるか……槍の衝撃波!」
槍の先から、闘気が放たれる。闘気は店に当たり、その衝撃によって、店のあちこちにひびが入る。
「くっ……!」
アンナは、これから起こることを察知し、大きく飛び出した。ツヴァイのいる方に行くと当然攻撃されるため、反対側の通りの方に向かった。
「うああっ!」
アンナが踏み込んだとの同時に、その足元が崩れていく。
「聖なる光よ! 伸びろ!」
なんとか飛び出したアンナは、地面に聖剣を向けて叫んだ。
聖剣が地面に突き刺さり、ゆっくりと元の長さに戻っていく。それと同時に、アンナも着地することができた。
「はあ、はあ、なんて奴だ……」
アンナは、驚愕していた。まさか店ごと攻撃されるとは思っていなかった。対応できなければ、地面に叩きつけられていただろう。
そう思いながら、様子を伺ってみると、瓦礫の向こう側からツヴァイがゆっくりと歩いてきていた。
「ふふ、聖剣とは、厄介な代物だな……」
「ツヴァイ……!」
「そして、実力も中々だ。並みの力では、俺の鎧にひびを入れることすら叶わん。予想以上の力に、少々驚いたぞ?」
称賛されたアンナだが、まったく嬉しくなかった。ツヴァイは余裕そうな態度であり、自分の優位を知って、あのような言葉を放っている。つまり、これはアンナを馬鹿にしているということだ。そう思うと、むしろイラついてきた。
「さっきから心にもないことを……」
「ほう、案外素直に褒めたつもりだが、お前にはそう聞こえたか?」
アンナは立ち上がりながら、聖剣を構えた。
「ふっ、何をしても無駄だ。お前の技は、俺に通用しない。、お前に有効打などない」
「どうかな? やってみなくちゃわからない……聖なる衝撃波!」
アンナは、光の弾をツヴァイ目がけて投げつけた。
「そちらの技なら通じるとでも思ったか……? 考えが甘いぞ! 鎧の障壁!」
ツヴァイは、それに対して闘気の層を作り出した。
「ぬうっ!」
光の弾はツヴァイに着弾し、その体を少し後退させた。しかし、その防御を破ることはできず、アンナの手元へと戻っていく。
「ふっ! やはり無駄――」
「聖なる光よ! 剣になれ!」
アンナは光の弾ともに駆け出していた。ツヴァイに接近し、聖なる光を聖剣に戻しつつ、攻撃の態勢に入った。
「十字斬り!」
「ぐうっ……!」
アンナの二連撃によって、ツヴァイの体の闘気は突き破られた。ツヴァイの体は、大きく後退ししていく。
そして、その攻撃によって、鎧に十字の傷ができあがっていた。
「ぬうっ……」
「無駄じゃなかったようだね……」
「ふん! この程度の傷で調子に乗るとは、浅はかな奴だ……こんなものは大したことではない……」
「リビングアーマーは、その鎧が体そのもの。つまり、今のお前は体が削れたも同然だ。それで大したことない訳がないはずだ」
アンナは言われっ放しは癪だったので、ツヴァイに言い返すことにした。すると、ツヴァイからは意外な反応が返ってきた。
「ぐっ、それは……そうだが……」
「何……?」
ツヴァイの反応は妙だった。今までの傾向から、言い返してくると感じていたアンナにとって、その歯切れの悪さは違和感だった。
そして、その違和感に気づいた時、アンナの中にはさらなる疑念が生まれていった。
よく考えてみれば、鎧が肉体そのものであるツヴァイは、己の体に対する傷に無関心なのではないだろうか。
痛みを感じない体だとしても、歴戦の戦士なら、もう少し気にするべきことのように思えた。
「まさか……」
そこで、アンナは一つの疑問を投げかけた。
「お前は、リビングアーマーではないのか?」
「……何を言う?」
「思えば、お前がリビングアーマーであるという確証など、どこにもない……もしかしたら、その鎧の中には別の種族が入っているんじゃないか?」
「……答える必要は……ない!」
ツヴァイは、大きく叫びながら槍を構えた。
「……」
アンナは心に疑念を残しつつ、それに続くのだった。
ツヴァイの持つ武器は、槍である。その間合いはアンナが得意とする剣よりも広く、迂闊に飛び込むのは危険だった。
「聖なる光よ、伸びろ!」
そのため、アンナは聖剣を伸ばした。これなら、槍の間合いの外から攻撃できる。躱されたとしても、そこから一気に距離を詰めて、攻撃すればよいだけだ。
「ほう……」
ツヴァイは、声をあげつつもその場から動くことはなかった。
「ふん!」
ツヴァイは持っている槍を回転させ始めた。
聖剣は、その回転に巻き込まれて、はじけ飛んでいった。
「くっ……!」
「そんな生ぬるい攻撃で、俺を倒せると思うなよ」
「だったら!」
アンナは、右手に聖なる光を集め始めた。
「聖なる衝撃波!」
そして、聖なる光を相手に向かって打ち出した。
「ふっ! 単調な攻撃だな」
ツヴァイは、ゆっくりと身を躱し、光の弾の軌道から外れた。
光の弾は、空を突き抜け、飛んでいった。それを認識したツヴァイは、アンナに向かって言葉を放った。
「強力な攻撃のようだが、当たらなければ意味はないぞ」
「まだだ!」
「何!?」
アンナが手を引くと、光の弾が翻り、再びツヴァイに向かっていった。
アンナの方を見ていたツヴァイに、光の弾が着弾する。
「ぬうう……!」
寸前でツヴァイは防御しており、攻撃は防がれたようだ。しかし、ツヴァイの鎧に僅かにひびが入っており、バランスを崩していた。
「はあああ!」
アンナは地面を蹴り、飛び出した。ツヴァイが怯んでいる内に、一気に攻撃を仕掛けるためだ。
「ふふっ……」
「えっ!」
しかし、ツヴァイは不敵に笑っていた。
そして、よろけた体勢のまま、アンナに向かって槍を突いた。
「それくらい!」
アンナは、槍を躱し一気に懐に入り込む。
「十字斬り!」
さらに、そこに必殺の一撃を叩きこんだ。
その時、ツヴァイの鎧が光輝いた。
「鎧の障壁!」
「何!?」
ツヴァイの周りに闘気による層ができあがった。斬撃は、その層によって防御され、傷一つつけることができなかった。
「見誤ったな! ふん!」
「ぐああっ!」
無防備となったアンナに、ツヴァイは体全体でぶつかってきた。
その鎧の固さが、そのまま攻撃力になり、アンナは叫びをあげながら、後方に吹き飛んぶことになった。
「くっ!」
なんとかバランスを整えながら、追撃に備えるため、相手の様子を見る。
「ぬうん!」
「うっ!」
ツヴァイは距離を詰めながら、その拳を振るってきた。アンナは咄嗟に腕を交差させ、その攻撃を防御した。
「聖なる光よ! 伸びろ!」
アンナは、聖剣を地面に向けて伸ばした。聖剣はどんどんと伸びていき、アンナの体は空中にへと移動していった。
「とっ!」
そして、そのまま近くの店の屋根に着地した。
「む! そこまで逃げたか……」
ツヴァイも、流石にそこまで追撃することはできず、その場で立ち止まった。
「はあ、はあ……」
手に握る聖剣は、元の長さに戻っていった。アンナは疲労に息を切らしつつも、ツヴァイを見つめる。
恐らく、聖なる衝撃波を受けたのは、こちらを油断させるためだったのだろう。いつでも防御できるということを、こちらに知らないために、敢えて受けたのだ。
さらに、槍での攻撃もアンナが大技を使える隙をわざと与えるためのもの。全ては、アンナを油断させるための作戦だ。
「くそっ!」
まんまと作戦に嵌ってしまったアンナは、悔しさから声をあげていた。
「下りてこないか? ならば、こうするとしようか」
アンナがそんなことを考えていると、ツヴァイはそう言いながら、槍を店の方に向けた。
「さて、どうなるか……槍の衝撃波!」
槍の先から、闘気が放たれる。闘気は店に当たり、その衝撃によって、店のあちこちにひびが入る。
「くっ……!」
アンナは、これから起こることを察知し、大きく飛び出した。ツヴァイのいる方に行くと当然攻撃されるため、反対側の通りの方に向かった。
「うああっ!」
アンナが踏み込んだとの同時に、その足元が崩れていく。
「聖なる光よ! 伸びろ!」
なんとか飛び出したアンナは、地面に聖剣を向けて叫んだ。
聖剣が地面に突き刺さり、ゆっくりと元の長さに戻っていく。それと同時に、アンナも着地することができた。
「はあ、はあ、なんて奴だ……」
アンナは、驚愕していた。まさか店ごと攻撃されるとは思っていなかった。対応できなければ、地面に叩きつけられていただろう。
そう思いながら、様子を伺ってみると、瓦礫の向こう側からツヴァイがゆっくりと歩いてきていた。
「ふふ、聖剣とは、厄介な代物だな……」
「ツヴァイ……!」
「そして、実力も中々だ。並みの力では、俺の鎧にひびを入れることすら叶わん。予想以上の力に、少々驚いたぞ?」
称賛されたアンナだが、まったく嬉しくなかった。ツヴァイは余裕そうな態度であり、自分の優位を知って、あのような言葉を放っている。つまり、これはアンナを馬鹿にしているということだ。そう思うと、むしろイラついてきた。
「さっきから心にもないことを……」
「ほう、案外素直に褒めたつもりだが、お前にはそう聞こえたか?」
アンナは立ち上がりながら、聖剣を構えた。
「ふっ、何をしても無駄だ。お前の技は、俺に通用しない。、お前に有効打などない」
「どうかな? やってみなくちゃわからない……聖なる衝撃波!」
アンナは、光の弾をツヴァイ目がけて投げつけた。
「そちらの技なら通じるとでも思ったか……? 考えが甘いぞ! 鎧の障壁!」
ツヴァイは、それに対して闘気の層を作り出した。
「ぬうっ!」
光の弾はツヴァイに着弾し、その体を少し後退させた。しかし、その防御を破ることはできず、アンナの手元へと戻っていく。
「ふっ! やはり無駄――」
「聖なる光よ! 剣になれ!」
アンナは光の弾ともに駆け出していた。ツヴァイに接近し、聖なる光を聖剣に戻しつつ、攻撃の態勢に入った。
「十字斬り!」
「ぐうっ……!」
アンナの二連撃によって、ツヴァイの体の闘気は突き破られた。ツヴァイの体は、大きく後退ししていく。
そして、その攻撃によって、鎧に十字の傷ができあがっていた。
「ぬうっ……」
「無駄じゃなかったようだね……」
「ふん! この程度の傷で調子に乗るとは、浅はかな奴だ……こんなものは大したことではない……」
「リビングアーマーは、その鎧が体そのもの。つまり、今のお前は体が削れたも同然だ。それで大したことない訳がないはずだ」
アンナは言われっ放しは癪だったので、ツヴァイに言い返すことにした。すると、ツヴァイからは意外な反応が返ってきた。
「ぐっ、それは……そうだが……」
「何……?」
ツヴァイの反応は妙だった。今までの傾向から、言い返してくると感じていたアンナにとって、その歯切れの悪さは違和感だった。
そして、その違和感に気づいた時、アンナの中にはさらなる疑念が生まれていった。
よく考えてみれば、鎧が肉体そのものであるツヴァイは、己の体に対する傷に無関心なのではないだろうか。
痛みを感じない体だとしても、歴戦の戦士なら、もう少し気にするべきことのように思えた。
「まさか……」
そこで、アンナは一つの疑問を投げかけた。
「お前は、リビングアーマーではないのか?」
「……何を言う?」
「思えば、お前がリビングアーマーであるという確証など、どこにもない……もしかしたら、その鎧の中には別の種族が入っているんじゃないか?」
「……答える必要は……ない!」
ツヴァイは、大きく叫びながら槍を構えた。
「……」
アンナは心に疑念を残しつつ、それに続くのだった。
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