赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~
第39話 鎧魔団の襲撃
アンナは、鎧魔将ツヴァイと対峙していた。
ツヴァイの横には、二人のリビングアーマーが控えていた。そちら側には、既に人はおらず、アンナの遥か後方で逃げているのみだった。
「ツヴァイ様、勇者なら私達にお任せください」
「必ずや、あの勇者を切り裂いてみせましょう」
リビングアーマーは、ツヴァイに対してそう言った。
「よかろう。やってみろ……」
「はっ!」
ツヴァイが許可したことで、二人がゆっくりとアンナに近寄ってきた。
アンナも聖剣を構えて、応戦の態勢をとった。
「とうっ!」
「いやあっ!」
リビングアーマー達が、アンナ目がけて飛び掛かってきた。
空中で大きく剣を振りかぶり、アンナを切り裂かんとしている。
「十字斬り!」
「ぬわあっ!」
アンナは、右のリビングアーマーを切り裂き、身を躱した。
切り裂かれたリビングアーマーは、叫びをあげながら、バラバラになった。やはり、中には誰も入っていなかった。
「聖なる衝撃波!」
「ぬぐうっ!」
続いてアンナは、聖剣を光の弾に変えて打ち放った。
光の弾は、リビングアーマーに着弾し爆発した。
「がああ……」
リビングアーマーは数秒ふらついた後、ゆっくりと倒れ、やがて動かなくなった。
「ほう、中々やるな……これでも、鎧魔団の中では手練れだったのだがな」
アンナと部下の戦いを見て、ツヴァイが言葉を放った。
部下が倒れたというのに、その口調はまったく変わっていなかった。
「やはり、剛魔将と竜魔将を破った実力はあるようだな……」
「……」
「答えぬか、それも当然か……竜魔将は実力で勝った訳ではないのだろう?」
「知っていたのか……」
「もちろん。だが、仮に知らずともそれくらいは予想できる。竜魔将の実力は、我ら魔将の中でもかなり高い。その竜魔将が、旅を始めたばかりの勇者に負けるなどありえん」
ツヴァイは荒々しい口調で、そう言い放った。竜魔将に起こったことに、まるで怒っているようだった。部下は気にせずとも、同格が貶められたことは我慢できないのだろうか。
「最も、竜魔将のことでお前を恨む通りはない。あれは、己の保身しか考えない男の犯した罪だ……」
「……さっきから、何が言いたい?」
「……そう、つまりは」
鎧魔将は、ゆっくりと態勢を変え構えた。
「お前は、俺には勝てないということだ……」
「……それは」
アンナも、聖剣を手に握りしめ構える。
「やってみなくちゃ、わからない!」
アンナとツヴァイの戦いが始まった。
◇
カルーナは町を走り回っていたが、足を止めることになった。なぜなら、目の前に鎧魔団を見つけたからである。
住民の避難は済んでいるようで、周りには人がいなかった。
「勇者の妹、カルーナか……」
白金の鎧のリビングアーマー、それはカルーナが今まで集めた情報と一致していた。
「鎧魔団副団長……プラチナス!」
「いかにも、私がプラチナスだ」
目の前にいる男は、鎧魔団で二番目に強い。
カルーナは、しっかり気を引き締めて構える。
「君は、魔法使いだったか……ならば、敢えて言おう。君は、私には絶対に勝てない……」
プラチナスは剣を構えながら、そう言い放った。
カルーナは、少し違和感を覚えた。なぜなら、プラチナスは自分を魔法使いと認識して、その言葉を放ったからだ。つまり、彼は魔法使いとの戦いに、絶対の自信があるということだ。カルーナは、警戒するべきだと感じた。
「さて、行こうか」
そう言って、プラチナスは大地を蹴った。
「紅蓮の火球!」
カルーナは、それに目がけて火球を放ち、後ろに下がった。
カルーナは、近距離で戦うことはできない。相手に近寄られないように戦う必要があるのだ。
「ふっ……やはり、魔法か」
プラチナスはそれを受けて、何故か笑っていた。
そして、ゆっくりと足を止めると、大きく言い放った。
「反射!」
すると、プラチナスの体は光輝いた。
「な、何……?」
カルーナの火球が、プラチナスに着弾した。しかし、火球は爆発することはなかった。
それどころか、火球はプラチナスの体に跳ね返り、カルーナ目がけて飛んできたのだ。
「嘘!?」
カルーナは咄嗟に身を躱したが、地面にぶつかった火球の爆発により吹き飛ばされ転げてしまった。
「い、一体何が……」
「言ったはずだ。私には絶対に勝てないと……」
プラチナスの体は元に戻っていた。
「魔法反射《リフレクト・》装甲《アーマー》、それが私の白金の鎧が持つ力なのだ」
「魔法反射《リフレクト・》装甲《アーマー》!? そ、そんな……」
プラチナスの体は、魔法を反射する性質のようだ。それは、魔法使いのカルーナにとって、絶望的な宣告であった。
魔法使いにとって、魔法とは最大にして唯一の武器であるといえる。それを封じられてしまったら、何もできなくなってしまう。
「そうだ。君の攻撃は、私にまったく通用しない。つまり、君が勝つことは不可能だということだ」
「くっ……!」
プラチナスの言葉が、カルーナの心に突き刺さった。彼の言ったことは、カルーナが内心思っていたことであったからだ。
自分の魔法が効かない相手は、竜魔将もそうだったが、あちらは炎魔法が効かなかっただけで他の方法はあった。何より、あの時はアンナも一緒だった。
しかし、今回は、魔法そのものが効かない相手と、一人で戦わなければならない。それがどれ程の苦境になるかは、容易に予想できた。
「……たった一回くらいで」
「む……」
だが、カルーナは立ち上がりながら、言葉を放った。それは、自分を奮い立たせるための言葉だった。
「たった一回くらいで、諦める訳にはいかない!」
「ほう……やはり、そう簡単に折れてはくれないか。流石は、勇者一行の一員だ」
プラチナスは、剣を大きく上げて構えた。
「相手にとって不足はない!」
「くっ……!」
「白金の衝撃!」
プラチナスの剣から、白金の闘気が放たれた。それは、地面を削りながら、どんどんとカルーナに近づいていく。
「うっ……!」
カルーナは、大きく後退しながら攻撃を躱した。
今カルーナにできることは、相手の攻撃を躱し、逃げることしかなかった。
「逃がしはしない!」
プラチナスも、カルーナを追いかけるように駆け出した。
「小さな紅蓮の火球!」
カルーナは小さな火球を放ち、プラチナスを牽制した。
「反射!」
当然、プラチナスは魔法を反射する。
プラチナスは一度足を止め、魔法を跳ね返した。
「くっ!」
カルーナは身を躱し、近くの酒場へ扉を突き破るように入っていった。
プラチナスもそれに追従し、酒場に入っていく。
「いくら逃げても無駄だ」
「……それはどうかな?」
「……何?」
「小さな紅蓮の火球!」
カルーナは、天井目がけて小さな火球を投げ放った。
「どこを狙っている!?」
プラチナスは驚いたが、すぐに理解する。
火球は、プラチナスの頭上で爆発し、その破片が降り注ぐ。
「ぬうっ!」
この事象を引き起こしたのは魔法であるが、破片そのものは魔法ではない。よって、プラチナスはこの攻撃は防げない。
酒場の主には申し訳なかったが、カルーナがプラチナスにダメージを与えられる方法は、これくらいしかなかった。
「……この程度!」
しかし、プラチナスが剣を一振りすると、破片は弾かれてしまった。
「……やっぱり、これくらいじゃだめか……」
カルーナも薄々勘づいていたことだが、固い鎧の体と闘気による防御を突き破る程の攻撃力は破片にはなかった。
しかし、それでも少しはダメージが与えられただろう。このような攻撃を重ねるくらいしか、カルーナが勝利する方法はないのだった。
カルーナとプラチナスの戦いは、まだ始まったばかりだった。
ツヴァイの横には、二人のリビングアーマーが控えていた。そちら側には、既に人はおらず、アンナの遥か後方で逃げているのみだった。
「ツヴァイ様、勇者なら私達にお任せください」
「必ずや、あの勇者を切り裂いてみせましょう」
リビングアーマーは、ツヴァイに対してそう言った。
「よかろう。やってみろ……」
「はっ!」
ツヴァイが許可したことで、二人がゆっくりとアンナに近寄ってきた。
アンナも聖剣を構えて、応戦の態勢をとった。
「とうっ!」
「いやあっ!」
リビングアーマー達が、アンナ目がけて飛び掛かってきた。
空中で大きく剣を振りかぶり、アンナを切り裂かんとしている。
「十字斬り!」
「ぬわあっ!」
アンナは、右のリビングアーマーを切り裂き、身を躱した。
切り裂かれたリビングアーマーは、叫びをあげながら、バラバラになった。やはり、中には誰も入っていなかった。
「聖なる衝撃波!」
「ぬぐうっ!」
続いてアンナは、聖剣を光の弾に変えて打ち放った。
光の弾は、リビングアーマーに着弾し爆発した。
「がああ……」
リビングアーマーは数秒ふらついた後、ゆっくりと倒れ、やがて動かなくなった。
「ほう、中々やるな……これでも、鎧魔団の中では手練れだったのだがな」
アンナと部下の戦いを見て、ツヴァイが言葉を放った。
部下が倒れたというのに、その口調はまったく変わっていなかった。
「やはり、剛魔将と竜魔将を破った実力はあるようだな……」
「……」
「答えぬか、それも当然か……竜魔将は実力で勝った訳ではないのだろう?」
「知っていたのか……」
「もちろん。だが、仮に知らずともそれくらいは予想できる。竜魔将の実力は、我ら魔将の中でもかなり高い。その竜魔将が、旅を始めたばかりの勇者に負けるなどありえん」
ツヴァイは荒々しい口調で、そう言い放った。竜魔将に起こったことに、まるで怒っているようだった。部下は気にせずとも、同格が貶められたことは我慢できないのだろうか。
「最も、竜魔将のことでお前を恨む通りはない。あれは、己の保身しか考えない男の犯した罪だ……」
「……さっきから、何が言いたい?」
「……そう、つまりは」
鎧魔将は、ゆっくりと態勢を変え構えた。
「お前は、俺には勝てないということだ……」
「……それは」
アンナも、聖剣を手に握りしめ構える。
「やってみなくちゃ、わからない!」
アンナとツヴァイの戦いが始まった。
◇
カルーナは町を走り回っていたが、足を止めることになった。なぜなら、目の前に鎧魔団を見つけたからである。
住民の避難は済んでいるようで、周りには人がいなかった。
「勇者の妹、カルーナか……」
白金の鎧のリビングアーマー、それはカルーナが今まで集めた情報と一致していた。
「鎧魔団副団長……プラチナス!」
「いかにも、私がプラチナスだ」
目の前にいる男は、鎧魔団で二番目に強い。
カルーナは、しっかり気を引き締めて構える。
「君は、魔法使いだったか……ならば、敢えて言おう。君は、私には絶対に勝てない……」
プラチナスは剣を構えながら、そう言い放った。
カルーナは、少し違和感を覚えた。なぜなら、プラチナスは自分を魔法使いと認識して、その言葉を放ったからだ。つまり、彼は魔法使いとの戦いに、絶対の自信があるということだ。カルーナは、警戒するべきだと感じた。
「さて、行こうか」
そう言って、プラチナスは大地を蹴った。
「紅蓮の火球!」
カルーナは、それに目がけて火球を放ち、後ろに下がった。
カルーナは、近距離で戦うことはできない。相手に近寄られないように戦う必要があるのだ。
「ふっ……やはり、魔法か」
プラチナスはそれを受けて、何故か笑っていた。
そして、ゆっくりと足を止めると、大きく言い放った。
「反射!」
すると、プラチナスの体は光輝いた。
「な、何……?」
カルーナの火球が、プラチナスに着弾した。しかし、火球は爆発することはなかった。
それどころか、火球はプラチナスの体に跳ね返り、カルーナ目がけて飛んできたのだ。
「嘘!?」
カルーナは咄嗟に身を躱したが、地面にぶつかった火球の爆発により吹き飛ばされ転げてしまった。
「い、一体何が……」
「言ったはずだ。私には絶対に勝てないと……」
プラチナスの体は元に戻っていた。
「魔法反射《リフレクト・》装甲《アーマー》、それが私の白金の鎧が持つ力なのだ」
「魔法反射《リフレクト・》装甲《アーマー》!? そ、そんな……」
プラチナスの体は、魔法を反射する性質のようだ。それは、魔法使いのカルーナにとって、絶望的な宣告であった。
魔法使いにとって、魔法とは最大にして唯一の武器であるといえる。それを封じられてしまったら、何もできなくなってしまう。
「そうだ。君の攻撃は、私にまったく通用しない。つまり、君が勝つことは不可能だということだ」
「くっ……!」
プラチナスの言葉が、カルーナの心に突き刺さった。彼の言ったことは、カルーナが内心思っていたことであったからだ。
自分の魔法が効かない相手は、竜魔将もそうだったが、あちらは炎魔法が効かなかっただけで他の方法はあった。何より、あの時はアンナも一緒だった。
しかし、今回は、魔法そのものが効かない相手と、一人で戦わなければならない。それがどれ程の苦境になるかは、容易に予想できた。
「……たった一回くらいで」
「む……」
だが、カルーナは立ち上がりながら、言葉を放った。それは、自分を奮い立たせるための言葉だった。
「たった一回くらいで、諦める訳にはいかない!」
「ほう……やはり、そう簡単に折れてはくれないか。流石は、勇者一行の一員だ」
プラチナスは、剣を大きく上げて構えた。
「相手にとって不足はない!」
「くっ……!」
「白金の衝撃!」
プラチナスの剣から、白金の闘気が放たれた。それは、地面を削りながら、どんどんとカルーナに近づいていく。
「うっ……!」
カルーナは、大きく後退しながら攻撃を躱した。
今カルーナにできることは、相手の攻撃を躱し、逃げることしかなかった。
「逃がしはしない!」
プラチナスも、カルーナを追いかけるように駆け出した。
「小さな紅蓮の火球!」
カルーナは小さな火球を放ち、プラチナスを牽制した。
「反射!」
当然、プラチナスは魔法を反射する。
プラチナスは一度足を止め、魔法を跳ね返した。
「くっ!」
カルーナは身を躱し、近くの酒場へ扉を突き破るように入っていった。
プラチナスもそれに追従し、酒場に入っていく。
「いくら逃げても無駄だ」
「……それはどうかな?」
「……何?」
「小さな紅蓮の火球!」
カルーナは、天井目がけて小さな火球を投げ放った。
「どこを狙っている!?」
プラチナスは驚いたが、すぐに理解する。
火球は、プラチナスの頭上で爆発し、その破片が降り注ぐ。
「ぬうっ!」
この事象を引き起こしたのは魔法であるが、破片そのものは魔法ではない。よって、プラチナスはこの攻撃は防げない。
酒場の主には申し訳なかったが、カルーナがプラチナスにダメージを与えられる方法は、これくらいしかなかった。
「……この程度!」
しかし、プラチナスが剣を一振りすると、破片は弾かれてしまった。
「……やっぱり、これくらいじゃだめか……」
カルーナも薄々勘づいていたことだが、固い鎧の体と闘気による防御を突き破る程の攻撃力は破片にはなかった。
しかし、それでも少しはダメージが与えられただろう。このような攻撃を重ねるくらいしか、カルーナが勝利する方法はないのだった。
カルーナとプラチナスの戦いは、まだ始まったばかりだった。
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